高齢者の薬の注意事項~副作用と認知症~きょうの健康より

先日の『きょうの健康』は、高齢者が使うと強い副作用が出る恐れがあるので使用を控えたほうがよい薬について特集をしていました。日本老年医学会が発行した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015をもとに、この本の代表研究者の東京大学大学院教授の秋下雅弘先生が、病気別に高齢者が使用に慎重になるべき薬について説明しました。

このガイドラインは、75歳以上の高齢者と75歳未満でも要介護やフレイル(要介護の一歩手前、認知機能の低下など心身が弱くなっている人)を対象にしているそうです。

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秋下先生は、高齢者の病気の専門家として薬の使用期間についての本の編集に携わっています。

高齢者のための薬の使い方―ストップとスタート
秋下 雅弘

不眠症の薬(睡眠薬)

主な睡眠薬には、ベンゾジアンゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬があります。この中で高齢者が使用に気をつけるべきなのは、ベンゾジアンゼピン系の睡眠薬だそうです。理由は、副作用でふらつき・転倒の恐れがあるので、飲んだ後や夜中にトイレに行くときに転倒して骨折をする可能性があります。また、この薬の副作用には、認知機能(物事の判断、記憶力)の低下もあるとのことです。そして、この薬を長期で使用すると少しですが認知症発症のリスクも上がるそうです。ですから、この薬を1ヶ月以上使用している人は、医師に薬の減量について相談することを秋下先生は勧めていました。

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きょうの健康

不安が強い人へ処方される、ベンゾジアンゼピン系抗不安薬にも同じ副作用があるので、高齢者が使用する場合は慎重にならなくてはいけないそうです。

 

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うつ病の薬

主なうつ病の薬には、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、NaSSAがあります。この中で高齢者が使用に気をつけたほうがよいのは三環系抗うつ薬だそうです。この薬の副作用は、便秘、口の渇き、認知機能の低下、眠気、めまいだそうです。
薬の副作用以外にも、高齢者のうつ病には薬が効きにくいということを理解しておく必要があると秋下先生は説明していました。また、仕事をやめる、家庭での孤独などもうつ病に影響するので、生活面での精神的なサポートもうつ病の治療には必要とのことです。

 

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認知症に似た副作用を起こす薬

高齢者の病気の代表的なものの1つに認知症がありますが、抗コリン作用のある薬を使用することによって認知症に似た症状が出ることがあるので注意が必要です。
抗コリン作用とは、神経の情報伝達に必要な物質アセチルコリンの働きを抑えることを言うそうです。アセチルコリンの働きが抑制されると認知機能が低下するので、認知症に似た症状が出ると秋元先生は説明していました。

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きょうの健康より

抗コリン作用があるので、高齢者が使用に慎重にならなくてはいけない薬には、

ベンゾジアンゼピン系睡眠薬・抗不安薬
三環系抗うつ薬
パーキンソン病の薬の一部
排尿障害の薬であるオキシブチニン
アレルギー薬であるヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)
胃薬のヒスタミンH2受容体拮抗薬

があります。これらの薬は、認知症に似た副作用があるだけではなく、長期で使用すると認知症発症のリスクも高めるので注意が必要だとのことです。

 

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循環器の病気(脳梗塞、心筋梗塞)の薬

脳梗塞や心筋梗塞を予防する薬で高齢者が使用に慎重にならなくてはいけないのは、抗血栓薬の抗血小板薬(アスピリンなど)と抗凝固薬(ワルファリンなど)です。脳梗塞や心筋梗塞は、血栓が血管をつまらせる病気なので、これらの薬には血栓をできにくくする作用があります。そのため、出血をしやすくなるので副作用として消化管出血や脳出血が起こる可能性があるそうです。そのため、秋下先生は、これらの薬の併用は1年以内にすることを勧めていました。そして、これらの薬は脳梗塞や心筋梗塞の予防には欠かせないので、1剤は継続しなくてはいけないとのことです。

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きょうの健康より

高血圧の薬

一般成人や75歳未満の高齢者の高血圧患者の場合は、血圧を収縮期が140mmHg未満、拡張期が90mmhg未満になるように治療をするそうです。そして、75歳以上の場合は、収縮期が150mmHg未満、拡張期が90mmhg未満になるように治療をするとのことです。高齢者が高血圧の薬を使用する際には、少量からの使用で徐々に血圧を下げていくことが大切です。それは、薬が効きすぎると副作用による立ちくらみや転倒の恐れがあるからだそうです。75歳以上で軽症の高血圧の場合やフレイル(介護の一歩手前)の場合には、薬を使用するかどうかは患者によって判断しなくてはいけないとのことです。

高血圧の第一選択薬である、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬は高齢者が使用しても副作用の心配はないそうです。けれども、立ちくらみや転倒のおそれがある非選択的α1遮断薬、腎機能低下や立ちくらみ・転倒のおそれがあるループ利尿薬、ぜんそくなど呼吸器系の病気を悪化させるおそれのある非選択的β遮断薬を高齢者が使用する場合は慎重になる必要があるそうです。

 

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糖尿病の薬

低血糖

糖尿病の薬で高齢者の使用に慎重になるべき薬は、スルホニル尿素薬、自己注射のインスリン製剤、SGLT2阻害薬(併用の場合)です。これらの薬には、低血糖症を起こすリスクがあるそうです。低血糖は、血糖値が下がりすぎてしまうことで起こります。低血糖の初期症状には冷や汗、手の震え、動悸、生あくびがありますが、高齢者はこのような症状を自覚しにくいです。それで、思考力の低下や意識低下が起こって初めて低血糖に気がつくことが多いそうです。また、動脈硬化が進んでいる場合は、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高くなるとのことです。

低血糖以外の副作用

糖尿病の薬には、高齢者が使用すると低血糖以外の副作用が強く出るものもあります。血液が酸性になるために胃腸症状、筋肉痛、過呼吸などの副作用が起こるビグアナイド薬、骨粗しょう症や心不全を悪化させるチアゾリジン薬、脱水、尿路・性器感染症の副作用のあるSGLT2阻害薬です。SGLT2阻害薬は最も新しい糖尿病の治療薬なので、新たな副作用が起こる可能性にも注意が必要だと秋下先生から説明がありました。

 

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まとめ

高齢者が使用に慎重になるべき薬の種類が多いので、自分や周りの高齢者が処方されている薬を本当に使っていて良いのか心配になってしまいますよね。秋下先生は、高齢者が使用を控えたほうがよい薬も病気の治療に必要があって処方されているので、自己判断で使用を止めないように注意を呼びかけていました。
また、薬のことをよく知って、医師や薬剤師に相談することが大切だと話していたので、自分や家族が使用している薬に対して受け身にならず、正しい知識を得て医師と対話できるようにしたいですね。セカンドオピニオンを持つことも重要かもしれません。


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