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先日の『きょうの健康』のテーマは、レビー小体型認知症でした。日本国内の約500万人の認知症患者の10%、推定50万人の患者がいるレビー小体型認知症の仕組み、症状、治療法などについて、認知症の診断と治療が専門の神経内科医の長濱康弘先生(かわさき記念病院副院長)が解説していました。
長濱先生は、医師を対象にしたレビー小体型認知症の診断と治療についての本の執筆者の1人です。
レビー小体型認知症の診断と治療 ~臨床医のためのオールカラー実践ガイド~
小阪憲司
レビー小体型認知症とは?
レビー小体型認知症は、異常なタンパク質(レビー小体)が脳の神経細胞を壊してしまう病気です。
きょうの健康より
アルツハイマー病の患者には女性が多いのに対して、レビー小体型認知症は男性の患者のほうがやや多いとのことです。特に、75歳以上に発症しやすいそうです。
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レビー小体型認知症の初期症状
1.幻視
レビー小体型認知症の初期症状として最も特徴的なのが幻視です。幻視は、脳の視覚連合野がレビー小体に壊されて起こり、実際にはないものが見える症状のことだそうです。
きょうの健康より
2. 認知 (判断力や記憶力) の変動
認知の変動もレビー小体型認知症の特徴的な初期症状です。ぼんやりとしているときとはっきりしているときの違いが大きくなるそうです。認知の変動は、1日の中で起こる場合や、数日単位で起こる場合があるとのことです。
3. パーキンソン症状
パーキンソン症状は、レビー小体が原因の脳の運動障害です。小刻みにたどたどしく歩いたり、よく転びそうになったりします。長濱先生によるとレビー小体が大脳皮質に現れるとレビー小体型認知症で、脳幹に現れるとパーキンソン病だそうです。
きょうの健康より
パーキンソン病は、脳幹の神経細胞が壊されてドーパミンという神経伝達物質の量が減少して、脳からの指令が手や足に伝わりにくくなります。つまり、体の動きが鈍くなるわけです。レビー小体型認知症の初期は、認知や意識の障害が主に起こりますが、レビー小体型認知症が進行するとパーキンソン症状が起こる患者もいると長濱先生は説明していました。
4. 睡眠中の大声と手足の激しい動き
レビー小体型認知症になると眠っている間に大声を出したり、手足を激しく動かしたりすることがあるそうです。健康な人はレム睡眠で夢を見ている間は、脳は活動していても筋肉は緩んでいるので脳の命令は体に届きません。けれども、レビー小体型認知症の場合は、筋肉が緩まないので夢に合わせて体が動いてしまうと長濱先生は説明していました。また、寝起きで夢の続きを話し始めることもあるとのことです。
5. うつ症状
レビー小体型認知症のうつ症状も、うつ病と同様に前頭葉の機能障害が原因だと言われているそうです。けれども、うつ病の薬を飲むと病気が悪化する場合があるとのことです。うつ症状があって、幻視や認知の変動がある場合は、うつ病と判断するのではなく、レビー小体型認知症を疑うことを長濱先生は勧めていました。
長濱先生によると、1から5の症状が2つ以上当てはまると、レビー小体型認知症の可能性があるとのことです。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー病に比べて物忘れが少ないので、幻視などを何回か周りの人たちから指摘されることによって、自分の異変に気がつく人もいるそうです。
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レビー小体型認知症の専門医の探し方
レピー小体型認知症を専門とする医師や医療機関は少ないそうです。けれども、レビー小体型認知症は、医師の診断やさじ加減で、症状の進行が変わるので適切な診断をできる医師を受診することが大切とのことです。
レビー小体型認知症だと思ったら、認知症疾患医療センターや認知症サポート医を受診してください。もしこのような医療機関が見つけられない場合は、市町村にある地域包括支援センター、認知症の人と家族の会、一部の市町村にあるレビー小体型認知症サポートネットワークへ連絡すると専門医が見つかるかもしれないそうです。
きょうの健康より
レビー小体型認知症の検査方法
レビー小体型認知症の検査には、問診(家族を交えて日常の状態を知る)や心理テスト、パーキンソン症状(手足の動き方や歩き方)のチェック、寝た状態と立った状態での血圧測定(自律神経の症状である起立性低血圧が起こっているかを知るため)があるそうです。これらの検査で病気が確定しなければ、SPECT、ドバミン・トランスポーター・イメージング、心筋シンチグラフィなどの画像検査をするとのことです。
きょうの健康より
幻視、認知の変動、パーキンソン症状のうち2つ以上の症状があれば、レビー小体型認知症と診断されると長濱先生が説明していました。症状が1つの場合は、疑いありとの診断になるそうです。
きょうの健康より
最も多く使われる画像検査はSPECTとのことです。この画像検査では、脳の血流分布を調べます。画像の赤い部分の血流が多く、レビー小体型認知症の場合は、後頭葉の血流が少なくなっているのがわかります。
きょうの健康より
ドパミン・トランスポーター・イメージングではドーパミンの分泌を診断します。アルツハイマー病の場合はドパミンが正常に分泌されていますが、レビー小体型認知症の場合はドパミンの量が少なくなっているので信号が低下するそうです。
きょうの健康より
レビー小体型認知症の対処法
◆抗認知症薬による治療
レビー小体型認知症の治療にはアルツハイマー病と同じくドネペジル、リパスチグミン、ガランタミンなどで神経伝達物質のアサチルコリンの分解を抑えて症状を改善し、進行を遅らせるとのことです。幻視や認知障害は、多くの人がこれらの薬によって改善するそうです。レビー小体型認知症が悪化すると薬の効果が弱くなるので、初期段階から治療するのが大切だと長濱先生は説明していました。
幻視への対策
幻視は暗い場所で起こりやすいので、部屋を明るくしておくと良いそうです。また、室内のデザインをシンプルにすることで見間違いを防ぐこともできるとのことです。さらに、患者が見間違えてしまうものに近づいたり、触ったりしてみせて、幻であることを気がつかせる方法があると長濱先生が解説していました。
パーキンソン症状へ投薬治療
パーキンソン症状の治療には、パーキンソン病の薬が使用されるとのことです。パーキンそう症状が強いと、体を自由に動かすことができなくなり車椅子や寝たきりに進行しやすいので、この治療は重要だそうです。
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まとめ
認知症=アルツハイマー病と考えている人は多いと思います。レビー小体型認知症とアルツハイマー病では、症状も治療の方法も異なります。ですから、どちらの認知症についても適切な知識を持っておくと、自分や自分の身近な人が認知症になってしまったときに初期の段階で適切な対処ができそうですね。