先日の『きょうの健康』は、「血管老化の正体」がテーマでした。番組では、血管の老化現象である動脈硬化の種類や原因などについて、心臓病の治療と診断を専門とする山科章先生(東京医科大学主任教授、循環器内科医)が解説していました。
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血管が硬いと体に悪影響を及ぼす理由
動脈には心臓から押し出された血液が1分間に5リットル流されます。血液を押し出すために、心臓は1分間に70回ほど収縮しますが、その収縮のたびに動脈には強い衝撃が加わります。動脈が柔らかいと衝撃は血管で吸収されますが、動脈が硬いと強い衝撃が腎臓、心臓、脳などの臓器に伝わってしまい体に悪影響を及ぼすそうです。
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動脈硬化があるのに静脈硬化がない理由
全身から心臓へ戻る血液が流れている静脈の血圧は、ほぼゼロだそうです。静脈には弁があり、血液は一定の方向に流れます。
きょうの健康より
静脈の中の血液は筋肉に押されて少しずつ進んでいくので、静脈は動脈のように硬くなることはないと山科先生は説明していました。
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2種類の動脈硬化の仕組み
動脈は、外側から血管を守る外膜、血管を伸縮させる中膜(平滑筋と2種類の繊維)、血管の内側を守る内膜(内皮下組織や内皮細胞)で構成されています。
きょうの健康より
動脈硬化には、内膜が押し上げられて血管が狭くなるアテローム動脈硬化と動脈が硬くなる石灰化があるそうです。
アテローム動脈硬化
番組では、軽度の動脈硬化と重度の動脈硬化(心筋梗塞で死亡した人)の画像を比べていました。
きょうの健康より
軽度の動脈硬化の血管は比較的滑らかですが、重度の場合は、たくさんのでこぼこがあります。
これらの血管の内側のでこぼこは、LDL(悪玉)コレルテロールが原因です。
血管の中にLDLコレステロールが大量にあると、それらが内皮細胞の下に入り込んでしまいます。そして、それらのコレステロールを白血球が食べると炎症物質を出しながら死んでしまい、その死骸が内膜を押し上げて血管を狭くすると山科先生が説明していました。
きょうの健康より
この血管の動脈硬化は軽度なので、まだ体に十分な血液が流れているとのことです。けれども、この血管がさらに狭くなると体に十分な血液が流れなくなります。例えば、冠動脈が狭くなりすぎると胸が苦しくなる狭心症を引き起こします。また、足の血管が狭くなりすぎると歩いたときに足がだるくなったり、太ももがいたくなったりする閉塞性動脈硬化症を引き起こすそうです。
動脈硬化が心筋梗塞や脳梗塞の原因になる理由
動脈硬化の進んだ血管は傷つきやすいので、血栓ができやすいそうです。
きょうの健康より
血栓が血管を詰まらせてしまうと心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。
石灰化(血管が硬くなる)
山科先生によると、動脈が硬くなるのは、カルシウムが動脈の中膜(平滑筋や繊維)に着いて固まってしまうからだそうです。
番組で紹介された心臓と大動脈の画像に白いシミのようなものがいくつかあります。これが血管に付着したカルシウムで、この状態のことを石灰化というとのことです。
きょうの健康より
石灰化が進むと、下の画像のように動脈のほとんどが白くなってしまうこともあるそうです。
きょうの健康より
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動脈硬化とその他の病気や喫煙の関係
動脈硬化になる可能性が高いのは、脂質異常症、内膜脂肪型の肥満、高血圧、糖尿病の症状がある人だそうです。最近では、骨粗しょう症と睡眠時無呼吸症候群も動脈硬化の原因になるということが分かったとのことです。
また、番組では喫煙も動脈硬化を進行させると説明していました。山科先生によるとタバコの成分が交感神経を刺激して血圧を上げるそうです。喫煙前後の血圧を比べてみると、喫煙後に血圧が高くなっていることがグラフからわかります。
きょうの健康より
さらに、糖尿病や腎臓病を患っていない喫煙者と非喫煙者では、喫煙者のほうが10年後に心筋梗塞で死亡する可能性が高くなるという調査結果が紹介されました。
きょうの健康より
心筋梗塞が発症する可能性は、死亡率の3倍と考えると良いそうです。
動脈硬化についてさらに詳しく知りたい方には、動脈硬化の仕組みや予防法、コレステロールとの関係について、たくさんのイラストを使って分かりやすく説明している本がお勧めです。
血管を強くするおいしいレシピつき 図解でわかる動脈硬化・コレステロール (徹底対策シリーズ)
白井 厚治
まとめ
動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞など死と直結する病気の原因になるのですね。動脈硬化を防ぐためには、お酒は飲まないよりも飲んだほうが良いという山科先生の言葉は意外でした。適量は1日あたり、ビールは中瓶1本、日本酒は1合、ワインはグラス2杯だそうです。もちろん、お酒を飲みすぎると逆効果なので飲み過ぎには気をつけたいですね。