先日の『きょうの健康』のテーマは、痛風の治療方法でした。痛風と高尿酸血症の診断と治療を専門としている谷口敦夫先生(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター教授)が、高尿酸血症から慢性の痛風へ進行する過程や痛風の症状別の治療法について詳しく解説していました。
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高尿酸血症と尿酸値
尿酸とは?
尿酸は、細胞の材料となったり、エネルギーの源となったりするプリン体が肝臓で分解されたものです。体内のプリン体が増加したり、尿酸の排せつ量が減少したりすると血液の中の尿酸値が高くなるとのことです。
きょうの健康より
高尿酸血症とは?
高尿酸血症は、血液の中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態です。
きょうの健康より
尿酸値がこの値を超えると、関節の中で尿酸の結晶が作られます。これらの結晶は、関節に溜まって軟骨や滑膜に付着します。そして、これらの結晶が軟骨や滑膜からはがれ落ちると、白血球が異物とみなして炎症物質を出しながら攻撃します。このときに感じる激しい痛みと腫れが痛風発作だそうです。
尿酸値が高くなればなるほど、痛風発作や合併症を発症する危険性が上がると谷口先生は説明していました。
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痛風を治療しないとどうなるのか?
痛風を治療しないで放置しておくと、足がパンパンに腫れてしまい歩くのが困難になるなど生活に支障がでます。
きょうの健康より
番組では、痛風を10年間治療しなかった人のかかとの写真が紹介されました。
きょうの健康より
画像の中に見える白い塊が尿酸の結晶です。かかとに針を刺すと尿酸の結晶が溢れ出てきたそうです。
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痛風の進行過程
番組では、痛風の進行過程が紹介されていました。
きょうの健康より
高尿酸血症と痛風発作の前兆
尿酸値が高い人、高尿酸血症の人は、痛風予備軍です。尿酸値が高い期間が長いほど関節に尿酸の結晶が溜まるとのことです。高尿酸血症には、痛みはありませんが、痛風発作が起こる前にはむずむず感、違和感、不快感などの前触れがあると谷口先生は説明していました。
痛風発作
痛風発作は、夜中や明け方に発症することが多いそうです。激しい痛みは2、3日続き、長くとも2週間で痛みが引くとのことです。
痛風の痛みが起こる場所として一番多いのが、足の親指の付け根です。この他には、足の甲、ひざ、足組、アキレス腱などに痛みを感じることがあるそうです。
きょうの健康より
間欠期
痛風の間欠期は、痛風発作が起こったり、起こらなかったりします。発作が起こっていない時には痛みなどの症状はないとのことです。痛風が進行すると発作の間隔が少しずつ短くなっていくと谷口先生が解説していました。
慢性期
痛風の慢性期になると、腫れや痛みが慢性的に続き関節が変形してしまうそうです。番組では、足の親指の腫れが長く続き、付け根の関節の形が変わってしまった画像が紹介されました。
きょうの健康より
慢性期には、痛風結節や合併症が発症することがあるそうです。
合併症
尿酸の結晶は関節だけではなく、腎臓に溜まってしまうと腎障害や尿路結石を発症するとのことです。また、痛風とメタボリックシンドローム(高血圧、肥満、脂質異常症、糖尿病)は合併する危険性が高いです。メタボリックシンドロームで動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞などの生死に関わる病気になる可能性があると谷口先生が説明していました。
きょうの健康より
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痛風の検査と治療法
番組では、徐々に尿酸値が高くなっている肥満気味のAさんと、お酒好きでビールを飲みすぎた翌朝に痛風発作が起こったBさんを例に痛風の検査と治療法を紹介していました。
尿酸値が高めの人の検査と治療(Aさん)
検査方法
痛風発作は起こっていないけれども、健康診断などで尿酸値が高いという診断を受けた人は、高尿酸血症を調べるために血液検査で尿酸値を調べ、尿検査で尿の中の尿酸濃度を調べるそうです。
また、血液検査では血糖、脂質、腎機能、肝機能などの数値も合併症の有無を調べるためには大切です。そして、合併症の診断のために、必要があれば心電図検査や内臓の超音波検査をするとのことです。
治療方法
尿酸値の高い人は、場合によっては尿酸を下げる薬での治療を勧められることもありますが、基本的には生活指導によって尿酸値を下げていくそうです。食事療法では。過剰にエネルギーを摂取しないようにすること、プリン体を多く含む食べ物や甘いものの摂取を制限するとのことです。
尿酸値を下げるには、食事に気をつけることが大切です。制限のある中で食事を作るのは大変ですよね。そのようなときには、痛風や高尿酸血症の人のためのレシピ本がとても便利です。
NHKきょうの健康 痛風・高尿酸血症の食事術【ポケット版】 (すぐに役立つ健康レシピ)
藤森 新
食事療法以外には、飲酒を制限すること、週3回ほどの軽い運動(肥満の改善のため)で尿酸値を下げると谷口先生が説明していました。
痛風発作が起きた場合の検査と治療(Bさん)
検査方法
痛風発作が起きてしまった場合は、血液検査と尿検査に加えて、X線検査で本当に痛風かどうかを確認するそうです。これは、痛風と似た病気に偽痛風や変形性関節症があるからとのことです。
そして、尿酸クリアランス検査では、尿酸が増える原因が、肝臓で尿酸が多く作られすぎているからなのか、腎臓の機能が落ちていて尿酸がきちんと排泄されていないのかを調べるそうです。
治療方法
谷口先生によると、痛風の痛みがある間は発作を抑える薬を使って治療をするとのことです。通常は「非ステロイド抗炎症薬」を使用しますが、腎障害などの合併症がある場合は「副腎皮質ステロイド剤」を使用するそうです。また、痛風発作の前兆があるときは「コルヒチン」という飲み薬を服用して、痛風発作の発症を防ぐという説明がありました。
発作の痛みがなくなった後は、尿酸値を下げる薬を使用します。尿酸値が急に下がると、尿酸の結晶が軟骨や滑膜から剥がれやすくなって発作の原因になるので、薬は少量から始めて3ヶ月から6ヶ月かけて徐々に尿酸値を下げるそうです。
尿酸値を下げる薬は長く使用を続けないと、尿酸が増えてしまうので使用を続けることが大切だと谷口先生が解説していました。
尿酸値が6.0mg/dL以下になると尿酸の結晶が関節から消え始めます。薬を飲み続けることで、最終的にはすべての結晶がなくなるとのことです。
(画像の緑色の部分が尿酸の結晶です。)きょうの健康より
谷口先生は、痛風は薬を正しく使うことで完治させることができる病気だと断言していました。
谷口先生は、痛風と高尿酸血症の専門家として二つの病気の最新の治療法などについて、一般の人にも理解できるように説明した本を執筆しています。
図解 痛風・高尿酸血症を治す!最新治療と正しい知識
谷口 敦夫
まとめ
痛風を治すためには、根気よく食事に気をつけたり、飲酒を制限したりしながら、薬を長期間使用しなくてはいけないのですね。30代から50代の男性が特に痛風発作を起こしやすいそうなので、健康診断を受けた際には、血液検査の尿酸値に注意してみてください。