ある日突然襲ってきて、命を奪うこともある「脳梗塞」。
脳の血管が詰まり、その周囲の脳細胞が壊死することで発症する病気です。
寝たきりの原因の第一位でもあるこの病気を予防するには、40代からの過ごし方が重要になるといいます。特に女性は、更年期における体の変化が脳梗塞と大きく関わっているそうです。
今回は、脳梗塞の予防法について紹介していた『あさイチ!』を中心に、情報をまとめていきたいと思います。
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40代で脳梗塞に
Sさん(48歳女性)は今年、脳梗塞を発症しました。
ある朝、いつものように子供の弁当を作ろうと冷蔵庫を開けましたが、メニューを決めることが出来なかったそうです。Sさんによると「いろいろと考えるけど、そこから思考が先に進まなくて、グルグル回っている感じ」だったそうです。
何か変だな、とは思いながらもパートへ出かけたSさんでしたが、午前中に電話の応対をしている際に、ろれつが回らなくなってしまいました。「頭には言葉が浮かぶけど言葉が出てこない。口が突っ張る感じがした」といい、昼休みになると口元の違和感が強くなってきたため、会社を早退して病院へ向かいました。
MRI検査を受けると、脳梗塞であることが発覚しました。即入院することになり、薬の治療によって命をとりとめたそうです。
Sさんが40代にして脳梗塞になった原因は、更年期に入ると現れやすい体の“ある変化”だったそうです。
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更年期と脳梗塞の関係
下図は脳梗塞の患者数を示したグラフです。
あさイチより
女性では更年期に当たる40,50代から徐々に増えはじめるのです。
Sさんは5年ほど前から更年期の症状を感じ始めていました。「やる気が起きなくて、家事も出来づらい状態。常に疲れている、疲れが抜けないという感じがあった」といい、健康診断では高血圧の症状が確認されていました。以前は115程度だったものが、144に急上昇したそうです。
その後も毎年、高血圧の状態が続いていました。
あさイチより
そして今年は170まで上がっていたそうで、精密検査を受けるよう警告まで受けていたそうです。
しかし、その検査の10日後に脳梗塞を発症してしまったのです。
更年期に高血圧になる原因は、女性ホルモンの減少にあります。
女性ホルモンの「エストロゲン」は血管を守る働きがあるのですが、更年期になるとその分泌量が減少していきます。すると血管のしなやかさが失われる「動脈硬化」の状態になります。これが進行すると全身に血流を送るためにはより強い血流の勢いが必要になるので、血圧が上がるのです。
動脈硬化と高血圧の状態が続くと血管の壁が傷つきやすくなり、そこにコレステロールなどの成分がたまることでプラークという膨らみができます。
あさイチより
プラークが破れるとそこに血栓ができ、血栓が剥がれて血流に乗り、脳まで行って血管をつまらせると、脳梗塞が起きるのです。
Sさんは、高血圧に関する警告をたびたび受けていたにも関わらず対策しなかったことを後悔していました。このことについて、国立循環器病研究センターの山本晴子氏は「女性は若い頃に低血圧だった人が多いので、自分は低血圧と信じている人が多い」と指摘し、注意を促していました。
下図は女性の高血圧患者数を示したグラフです。
あさイチより
更年期に急激に上がっているのがわかります。これを特に「更年期高血圧」と呼びます。妊娠・出産をした時に一時的に血圧が上がったり尿蛋白が出たりした人は、更年期になると高血圧になりやすいそうです。
もちろん、男性も高血圧に注意する必要があります。
男性は女性ホルモンに守られていないので、高血圧になる人が30代から多くなっています。早い人は20代から数値が上がり始めるそうです。
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高血圧対策のポイント
まずは自分の血圧を知ることが大切です。
高血圧の目安は、上が135〜、下が85〜(病院では上140〜、下90〜)とされています。
朝一番であまり活動していない時に測るのが基本で、日中なら5分くらいじっとしてから測ると安定した血圧ということになるそうです。
血圧の正しい測り方
現在では、医療機関でプロに血圧を測ってもらうよりも自宅で自ら測る数値のほうが信頼性が高いことがわかっているそうです。
以下のようなポイントをおさえて、正しい血圧を測る習慣をつけましょう。
・ 暑すぎず寒すぎない室温の中で計測する
・ 腕を少し上げ、腕帯の位置を心臓の高さにして計測する
・ 測定前に飲酒・喫煙・カフェインの摂取はしない
・ 人と話しながら計測しない
・ 2回測定し、平均をとる(4回以上はダメ)
・ 長期間継続して測り続ける
参考:日経スタイル
血圧は高くなっていても、自覚症状がありません。
治療には薬が用いられるのですが、よく効くそうです。ただ、一旦飲み始めたら、極端に痩せたりしっかりと減塩食にしたりなどしない限りは長期に飲み続ける必要があります。
心臓に原因がある脳梗塞も
Mさん(73歳女性)は67歳のときに脳梗塞になりました。それまで大きな病気にかかったことがなく、血圧は正常で成人病もしておらず、喫煙や飲酒もしないというMさんは、医師からも「何であなたが脳梗塞になったかわからない」と言われたそうです。
異変は買い物から帰宅する途中に起きました。左手に持っていた軽い買い物袋を、なぜか落としてしまったのです。右手で拾い、ふたたび左手で持とうとしましたが左手にだけまったく力が入らず、掴めなかったそうです。
これは異常だと感じたMさんは急いで家に帰り、自ら救急車を呼びました。
検査の結果、Mさんは脳梗塞であると診断され、原因が心臓にあることがわかりました。
心臓には4つの部屋があり、通常は一定のリズムで動いています。ところが何らかの理由で左心房の収縮が不規則になると、そこだけ細かく震える「心房細動」という不整脈が発生します。
あさイチより
これが続くと左心房の中の血液が淀み、固まりやすくなります。その結果生じた血栓が脳に運ばれると、血管をつまらせて脳梗塞になることがあるのです。
Mさんは現在でも不整脈はあるそうですが、薬で血栓ができないようにしているそうです。「いつまた再発するかという不安はある」と話していました。
もし、以下に当てはまるものがあるという場合は、あなたも不整脈になっているかもしれません。
・ 階段や坂を登るのがきつい
・ 動悸がある
いつものペースで歩いているのに動悸があると、心房細動などがある可能性があるそうです。
動悸を感じたときには、脈をとるようにしましょう。
手首を反らせて、親指側の手首の下あたりに指三本揃えて置き、15秒間の脈をとります。その数に4を掛ければ1分間の脈拍数ということになります。
脈拍数の正常値
心拍数の正常値としては、よく「1分あたり60〜100回」と紹介されていますが、ある調査では90/分以上で脳卒中や心筋梗塞などによる死亡リスクが高くなる、というデータが出ているそうです。
さらに低すぎても不具合が出るようで、日本人間ドック学会では以下のように基準を設けています。
・ 正常…45〜85(1分あたり)
・ 要経過観察・生活改善…40〜44、86〜100
・ 要医療…〜39、101〜
さらに、不整脈が気になる人はずっと指を置いてみて、脈拍のリズムが一定かどうかを確かめるようにしましょう。
若い人でもリスクが高くなることがある
お酒の飲み過ぎは脳梗塞のリスクを高めます。
因果関係はよくわかっていないそうですが、酸化ストレスが増えることや、いびきをかく時に睡眠時無呼吸になっていることなどが影響していると考えられているそうです。
飲酒量の目安は以下のようになっていますから、飲み過ぎには注意しましょう。
あさイチより
生活の中でできる工夫
脳梗塞のリスクを下げるため、山本氏が生活の中で行っている工夫が紹介されていました。
たとえば移動中は、常に早歩きを心がけます。山本氏によると「普通に歩くよりも運動強度が高まっていい。ちょっと息が上がるくらいの運動を10分以上続けるのがいいという研究結果が出ている」といいます。
あさイチより
ある程度の強度を行えば、それ以上やっても脳梗塞のリスクは下がらないので、以下のような運動を行う程度で良いそうです。
あさイチより
運動を行えば血圧も下がりますし、肥満の解消にもつながるなど、いい事ずくめです。
食事面では野菜を1品足すなどして、どんなに忙しくても食物繊維を多めに摂るように心がけているそうです。これは、食物繊維は脳梗塞の予防にいいという研究結果が出ているためです。
水分もしっかりと摂るようにしていました。血液がドロドロになると脳梗塞につながることもあるそうです。1日1〜1.5リットルの水分が必要ですが、食事のたびに300ccずつ飲むようにすれば3食で900ccになるので、あまり苦にはなりません。
脳梗塞の治療法
脳梗塞はとても早いスピードで進行していきます。
あさイチより
枠で囲んだ部分が、脳細胞が死んでしまった部分です。
どんどん範囲が広がっていくので、脳梗塞は時間との戦いになります。
発症から4時間半以内なら、「t-PA」というものを点滴で投与すれば、脳に詰まった血栓を溶かすことができます。
しかし、発症から4時間半を超えている場合や、最近手術や大きなケガをしたという場合、過去に脳で出血したことがある場合や脳梗塞の範囲が広すぎる場合などには、この治療法を採ることができないそうです。
最新の治療方法も登場しています。
番組では、脳梗塞の患者が救急外来に搬送される様子を取材していました。患者の男性は自分の名前が言えず、右半身が麻痺した状態で運ばれてきていました。
下図は搬送直後の男性のMRI画像です。
あさイチより
脳の右側の血管の血流がなくなっているために脳梗塞の症状が出ているのですが、最新治療の「血管内治療」によって1週間後には歩けるようになりました。
これはカテーテルを血管に入れて、血栓を直接取り出す治療法です。足の付根から脳までカテーテルを伸ばし、血栓のある場所まで到達したら、金属でできたステントという網目状の器具を広げ、それで血栓を引っ掛けて取り出します。
下の画像に写っているのが、男性から取り出した血栓の実物です。
あさイチより
この手術による回収率は約80%だそうです。
成功すると、下図のように血流が回復します。
あさイチより
この治療法は、発症から8時間以内なら有効とされています。
血管内治療の第一人者である吉村紳一医師によると「2015年に有効性が証明されてから、世界的にこの治療をもっとやろうという動きになっている」といいます。
しかし現段階ではまだ、どの病院でも受けられるまでには普及していません。
この治療を受けられる最寄りの病院を知りたい場合は、日本脳神経血管内治療学会のホームページ(http://jsnet.website/)で調べることができます。
脳梗塞に気づくために
以下のような症状が出た場合は、脳梗塞を疑うべきです。
・ 視野が半分欠ける
・ ろれつが回らない
・ ふらついてうまく歩けない
また、脳梗塞について大切なことは、その頭文字をとって「FAST」という風にまとめて呼ばれています。詳細は以下のようになっています。
・ FACE…口を横に広げた形(「い」と言うときの形)にすると片側だけが下がってくるような場合は、脳梗塞を疑う。
・ ARM…両手を肩の高さまで上げても片側だけ下がってしまったり同じ高さに上げられなかったりする場合は、脳梗塞を疑う。
・ SPEECH…ろれつが回らない、うまく話せない場合は脳梗塞を疑う。
・ TIME…脳梗塞が疑われる場合は、とにかくすぐに救急車を呼ぶ。また、発症した時間を記録して病院で伝える。
前述の通り脳梗塞は時間との勝負なので、すぐに救急車を呼ぶことが重要になります。また、異常が出てから何時間経っているかによって受けられる治療方法が変わるので、時間を記録しておいて救急救命士や医師に伝えることが重要になるのです。
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まとめ
脳梗塞は“怖い病気”として有名であるからこそ、脳梗塞の兆候が出ても「まだ若い自分がなるわけがない」「健康だから脳梗塞になるわけがない」と考えてしまうケースも多いのかもしれません。
今回の特集で紹介されていた通り、脳梗塞は年齢や病歴を問わず誰でもなる可能性があるので、異常が出たら必ず脳梗塞を疑い、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。