あなたは「温活(おんかつ)」という言葉を聞いたことがありますか?
近ごろ女性の間で人気が高まっている健康法のことで、運動や入浴によって身体を温め、基礎代謝をあげることで身体の機能を高める健康法だそうです。
温活をすると冷え性対策になったりダイエットになったりするため、女性に人気なのです。
愛知県にある修文大学の伊藤要子教授によれば、身体を温めることで「ヒートショックプロテインが増える」そうで、寿命が伸びる効果も期待できるといいます。
今回は、温活の仕組みや効果から、それへの懐疑的な見方までを含めて紹介していたフジテレビ『バイキング』をまとめておきたいと思います。
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温活とは
温活とは、健康な身体づくりに必要な、身体を温める行動・習慣のことです。
人間は体温が低いとさまざまな機能が低下するそうで、たとえば代謝に深いかかわりを持つ酵素は37度のときに最もよく働くといいます。ところが体温が低いと十分に働かず、「疲れやすい」「朝起きられない」「肩がこる」などの不調が出てくるそうです。
最近は妊娠しづらい女性が増えていることも問題になっていますが、それも基礎体温の低さにひとつの原因があるとされています。
その意味でも、基礎体温を上げる「温活」はやる価値のある健康法なのです。
伊藤教授によれば、温活をすると体内で増加する「ヒートショックプロテイン(HSP)」が、さまざまな健康効果をもたらしてくれるそうです。
ヒートショックプロテインはタンパク質の一種で、お風呂で体を温めるなどの適度なストレスが与えられたときに身体の中で合成される物質です。私たちの身体を構成している筋肉などは多くがタンパク質でできていますが、ヒートショックプロテインはそのタンパク質を守る役割を果たしているのだそうです。たとえば病気などで傷害を受けたタンパク質を修復して、元気な身体に戻してくれる働きもあるといいます。
しかも、ヒートショックプロテインは特定の部位にだけ働くのではなく身体全体のタンパク質の障害を修復してくれるため、その増加はさまざまな恩恵をもたらしてくれるのです。
たとえば…
バイキングより
身体を温めると白血球が増え、ヒートショックプロテインが免疫のシステムを増強してくれるので、風邪などの感染症にかかりにくくなります。
また、約60兆個の細胞から出来ている人間の身体は、日常的なストレスなどでつねに障害を受けているのですが、細胞内の損傷したタンパク質をヒートショックプロテインが修復することで細胞が活性化するため、ひいては長寿にもつながるというわけです。
このように優れた効果を発揮する健康法ですので、女性だけでなく男性にもオススメです。
体温の約60%は骨格筋を使った熱でできているため、筋肉を使わない仕事が増えた近年では男性の低体温も増えているといいます。
該当する男性は特に、温活を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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“温活”は効果なし?懐疑的な見方
このような効果を主張する伊藤教授に対して、おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎医師は「温活の健康効果は、現時点では何の根拠もない」と断じていました。
たとえば、冷え性の人が靴下を履くのは逆効果だといいます。
人間は恒温動物ですから自然と体温を調整するようにできています。しかし靴下を履いてしまうことで、身体は足先が温まっていると誤認してしまい、結果的には足先が冷たいままになってしまうといいます。
しかも、その靴下の上にさらにあたたかくなるものを重ね履きなどしてしまうと汗をかいてしまい、何も履かないときよりもむしろ冷えてしまうといいます。
よって、足が冷たくて寝られないという人は、靴下を履くのではなくレッグウォーマーや湯たんぽの方がいいと、大竹医師は主張していました。
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温活は長寿につながるか?
伊藤教授は温活が長寿につながると主張していましたが、大竹医師は「低体温の人のほうが長生き」というデータを提示して反論しました。
アメリカのボルチモアで男性700人を65歳から25年間追跡調査した研究から、体温の低い人ほど長生きするという事実が明らかになったのです。
大竹医師によれば「他にも低体温のほうが長生きするという論文はいくらでもあるが、高体温のほうが長生きするという論文はひとつもない」といいます。
低体温の状態はいわば“エコカー”のようなもので、低燃費で生きていくことが出来るということになるのだそうです。
「だから低体温のほうが長寿につながることは間違いない」と主張する大竹医師に対し、伊藤教授は「年齢を重ねると自然と体温が下がる。人間はただ長生きするだけでなく、“元気に長生きする”ことが重要。その意味では、これから健康に長生きすることが大切な若者と、(研究対象だった65歳以上の)高齢者のデータを混ぜて考えるのはおかしい」と反論しました。
歳とともにヒートショックプロテインは減っていくため、温活をして、日々を元気に過ごしていくことが大切ということです。そのため、お年寄りにも温活は必要とのことでした。
ちなみに、高体温のハエの方が長生きであるという研究結果もあるそうです。
遺伝的にヒートショックプロテインを増やすと長生きし、ヒートショックプロテインをつくる遺伝子をなくした個体を作ると、ストレスを受けて短命になるという結果が出ているのです。
しかし、これに対しても大竹医師は反論します。
低体温のネズミの方が長生き
なんと、「低体温のネズミの方が長生きをする」という実験結果がでているというのです。
恒温動物は基本的に体温が一定なので簡単に体温を上げたり下げたりできず、検証も難しいのですが、体温を調節するところをいじることで体温を変えることができるネズミをつくることができたのだそうです。
その結果、低体温のネズミの方がメスで20%、オスで約12%も寿命が伸びたのです。
伊藤教授はこの結果に対し、「低体温のネズミが実際の世界に生きたとして、エサをとりに行かなければならないし、敵と戦わなければならない。そのときにはたくさんのエネルギーが必要になる。しかし低体温だと、たとえば追いかけられた時に体が動かなかったりするだろう」と指摘しました。
つまり、元気で生きるためにはやはり、温活が必要なのです。
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温活で免疫力を上げる
「免疫力」とひとことで言っても、様々な要素が複雑に絡まり合うことで免疫は成り立っているため、それを数値化するのは難しいといいます。
それでも、免疫力を見るための目安として、入浴の前後のNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性率を見る実験が行われました。
実験の結果、身体が温まった入浴後にはNK細胞の活性率が上昇したそうです。
NK細胞というのは自然免疫で、ばい菌などを食い殺す働きがある重要な細胞です。
また、温活はがん治療で使われることもあります
がん細胞を殺すリンパ球は、身体を暖めるとがん細胞を食い殺す働きが増すため、温活に近い方法ががん治療でも採られているのだそうです。
ただし、大竹医師は「(がん患者ではない)正常な方がそれをすることで健康につながるとは言いきれない」と指摘していました。
現時点ではあくまでがん細胞を退治するのに有効であることが証明されているだけ、ということは知っておくべきであるようです。
温活に対するポジティブな見方と懐疑的な見方が出揃ったところで、伊藤教授は「温活をすることで元気になる」ことをあらためて強調していました。
低体温の人は普通の人よりも体温が低いので、代謝がわるくなり、細胞等に障害が起こりやすくなります。それが「疲れやすい…」とか「朝起きられない…」などの感覚を引き起こすのです。
これを正常に戻すことができれば、当然“元気”になるのです。
先述の通り、ヒートショックプロテインは身体中のいろんなタンパク質を修復してくれるため、温活を継続していくことで少しずつ、身体全体が元気になっていくのだそうです。
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基礎体温を上げる方法
基礎体温を上げる方法として伊藤教授が推奨しているのが「ヒートショックプロテイン(HSP)入浴法」です。
これは、身体を適当な温め方で適切にストレスを与えて、体内のヒートショックプロテインを増やす入浴法です。
お湯の温度が40℃なら20分、41℃なら15分、42℃なら10分、湯船に浸かります。
体温が38度くらいになるまでお湯に浸かるのが目安です。お風呂にフタをしたり入浴剤を入れたりしてお湯を冷まさないようにするのがポイントです。汗が大量に出るため、水分補給も忘れないようにしましょう。
このように入浴すると…
バイキングより
入浴後には身体の芯まで温まっているのがわかりますね。
入浴後にもポイントがあります。
浴室で身体を“保温”するのです。
お風呂あがりに10〜15分ほど浴室で保温すると、湿度も気温も高い環境に身をおくため、体温の変化が少なくなるのです。伊藤教授によれば37℃くらいの体温をキープできるそうです。
ちょっと長いと感じるかもしれませんが、歯磨きや水分補給をすることで時間をつぶすといいでしょう。
さらに、寒い日はサウナスーツを着て保温すると良いそうです。
これを一週間続けると…
バイキングより
基礎体温が0.5〜1℃もアップしています。
長時間入浴には危険性も
ただし、長時間の入浴には命を落とすほどの危険もあることを知っておく必要はあります。
たとえば、お風呂でウトウトすることがありますが、あれは脳への血流が落ちているために起こる現象で、一説には「脳が失神する直前の状態に近い」という見解も存在するそうです。
また、お風呂で身体を温めると血液がドロドロになるため、水分補給を心がけることや、決してムリをしないことが大切になります。
お風呂場での事故は高齢者に多く、季節も冬に限定されているといいます。高齢の方は半身浴にしたり、熱いと思ったら浴槽から上がったりするなどの工夫をしましょう。
あくまで、湯船に浸かる時間を「合計で」20分にすれば、基礎体温を上げる効果があるそうですから、絶対に無理はしないようにしてください。
まとめ
温活の素晴らしい効果に加えて、懐疑的な見方まで知っておくことによって、温活を正しく生活の中に取り入れることが出来ると思います。
特に、入浴時の注意などはよく守りながら継続していって、健康で元気な身体を目指してください。