骨とビタミンD~骨粗しょう症予防と最新「自家歯牙移植」療法~あさイチより

あなたは「骨」を意識して生活していますか?

骨は全身の様々な機能に影響を与えていることが、近年の研究からわかってきています。骨が丈夫だと肌がきれいになったり、骨から分泌されるホルモンが中性脂肪を減らしたりなど、美容や健康に良い影響がたくさんあるのです。

しかし、日本人の骨は必ずしも健康とは言えない現状です。

通常、骨密度は20歳頃にピークとなり、女性だと閉経をきっかけに低下していくのですが、最近は若いうちから骨粗しょう症になる人が増えているそうです。

今回は、骨を健康に保つための情報を紹介していた『あさイチ!』を中心に、骨に関する最新情報を紹介していきます。

 

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日常動作で骨折

Mさん(36歳)は、長男を出産した8年前に背骨を骨折したそうです。
たった6冊ほどの本を持ち上げただけで、背骨が圧迫骨折してしまったというのです。

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検査をするとMさんの骨密度は同年代平均の77%ほどしかなく、医師からは骨粗しょう症と診断されました。

本人によると「本を持ち上げた瞬間、背骨に電気がバリバリと走る感じがした」そうで、半年間寝たきりの生活を余儀なくされました。起き上がるだけで背中に激痛が走り、授乳や子供を抱っこすることができなくなってしまいました。

Mさんは「出産が一番痛い、と言われるが、背骨が折れたあとのほうが痛かった。暮らしがままならず、子どもを抱き上げることもできないので、辛くて毎晩泣いていた」と話していました。

Mさんはなぜ、この若さで骨粗しょう症になってしまったでしょうか?

妊娠・出産の際は誰でも一時的に骨が弱くなりますが、出産後には自然に元に戻っていきます。しかしMさんの場合は、主治医によると「ビタミンDが不足していたため想像以上に骨が衰えていた」のだそうです。

これはMさんに特有のケースではありません。
近年、若い女性のビタミンD不足による骨粗しょう症リスクの上昇が問題になっています。骨粗しょう症は他の疾患と違って骨折を起こすまで自覚症状を伴わないので、患者本人が気づきにくいという特徴があります。このため、把握されている患者数よりも実際の患者数は多いと考えられています。

島根大学の金沢一平氏によると、骨粗しょう症のリスクを上げる要因には以下のようなものがあります。

・ 遺伝的要因
・ 痩せ型の体型
・ 運動不足
・ 過剰なダイエット
・ アルコールの過剰摂取、喫煙
・ 生活習慣病
・ ビタミンD不足

アルコールは1日3合までが目安とされています。骨粗しょう症につながるメカニズムはわかっていないそうですが、過剰に飲酒している人はリスクが高いことはわかっているそうです。

ビタミンDと骨の関係

現在、骨粗しょう症のリスクを上げる要因の一つである「ビタミンD不足」が深刻化しています。
下図は年代別のビタミンD摂取状況を示したグラフです。青色が濃いほどビタミンDが不足していることを意味します。

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ビタミンDの1日の推奨量は600〜800IUとされていますが、すべての年代で8割以上の人が不足しており、若い人ほど不足しています。

ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きや、カルシウムが骨に吸着する際に必要になるなど、骨にとってとても重要な物質です。「骨=カルシウム」というイメージもありますが、カルシウムだけを摂ってもビタミンDだけを摂っても不十分なのです。

近畿大学医学部学部長の伊木雅之氏が、全国1200人の女性のビタミンDと骨密度の関係を15年に渡って調査しました。

血中のビタミンD濃度によって全体を4つのグループに分けたところ、ビタミンDの濃度が低い群ほど骨折の割合が増加していました。血中ビタミンD濃度が最高の群と最低の群の骨折率の差は、約6倍もあったそうです。

伊木氏は「今まではビタミンDも大切、と言っていたが、これからはビタミンDが大切と言わなければならない」と、ビタミンDの重要性を強調していました。

ビタミンDは皮膚にある脂質の一種に紫外線が当たったときに反応してつくられるので、日傘や強い日焼け止めでそれを遮ってしまうと、体内に不足しがちになります。

本を持ち上げただけで骨折してしまったMさんは、骨折した数年前から徹底した日焼け対策を行っていたそうです。Mさんは医師からビタミンDを補う薬を処方され、日焼け止めも極力使わないようにしたところ、骨密度は平均レベルまで戻ったそうです。

 

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mametisikiビタミンDについて

ビタミンDは、小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進し、血中カルシウム濃度を適正に保つことで、骨を健康に保つ働きがあります。
油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」なので、脂質と共に摂取すると吸収が良くなります。(脂溶性ビタミンは他にA、E、Kなど。水溶性ビタミンはB群、C等。)

不足すると、子供ではくる病、大人では骨軟化症などになるリスクが高まります。
(くる病とは、乳幼児の手首等の関節が二重関節になったりする関節異常の病気です。近年はビタミンD不足の影響で増加傾向にあるそうです。)

逆に過剰摂取をすると、骨から血中へのカルシウムの動員が増えてカルシウムやリンの濃度が過剰となり、腎臓や筋肉へのカルシウムの沈着や軟組織の石灰化が生じるそうです。

先述の通り単位を「IU」で表現される場合もありますが、近年では「μg(マイクログラム)」で表記されることが増えているそうです。「1μg=0.001mg=40IU」なので、サプリ等を購入し成分表を見る際などに参考にしてみてください。

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日光の悪影響について

ビタミンD生成に必要な紫外線ですが、陽に当たることは皮膚がんリスク上昇などの悪影響も知られており、陽に当たるべきかどうかは専門家の間でも議論になっているそうです。

国立環境研究所の中嶋英彰氏は、十分なビタミンDを得るためにはどのくらい日光を浴びればいいかを研究した結果、「皮膚がんなどのリスクが生じる時間の約3分の1の時間で十分な量のビタミンDが生成できる」ことを突き止めました。
さらに、全国10箇所で紫外線の量を詳しく調査し、適切な日光浴の時間を月ごとに割り出しました。
たとえば、もっとも紫外線量が多い8月上旬の正午頃なら…

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札幌や関東なら5分、沖縄なら4分浴びればよいということです。
12月中旬なら…

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札幌300分、関東65分、沖縄30分という結果が出ました。

中嶋氏は「日本は広いので、場所や季節によって適切な時間は変わる。冬は積極的に日光からビタミンDを生成してもらいたい」と話していました。
一般的な窓ガラスでもほぼ紫外線を通さないため、ビタミンDを生成する目的で日光浴をするには屋外で浴びる必要があります。

ただし、美容という観点では「ビタミンD生成に必要な日光浴の時間でもシミ・そばかすはできやすくなる」という研究も、「影響ない」という研究もあるといいます。
日光を当てる箇所は手の平でもどこでもよいので、日焼けが気になる方はなるべく「焼けてもいいかな」という場所にするとよいかもしれません。

食事

1日に必要な量のビタミンDを食品から摂るには、以下のような食品・量を摂る必要があります。

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冬場の北海道などでは、日光浴のみで十分なビタミンDを生成することは難しいので、これらの食品からビタミンDを摂取するようにしましょう。

 

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骨が及ぼす全身への影響

番組に登場した北海道大学大学院の佐藤真理准教授は、骨について以下のように話していました。

「骨は、体をつくるただの骨組みではなく、もっと深い役割を持っている。全身の免疫や臓器を制御するなどの働きで、健康を守っている中心人物。」

佐藤氏が注目し研究しているのは、骨の90%以上を占める「骨細胞」です。

これまではその働きが詳しくわかっていませんでしたが、佐藤氏は骨細胞だけが働かなくなる薬をマウスに与えてその後どうなるかを観察したところ、若いマウスがたった3週間で、歩くのもおぼつかなくなりました。筋力低下や極端な栄養失調が起こり、免疫力も大幅に低下するなど“老化”が一気に進んだのです。

佐藤氏によると「急に老けてしまった印象を持った」といい、投薬をやめて骨細胞が元に戻ると、機能が回復したそうです。
この結果から佐藤氏は、骨細胞が全身の機能に影響を与えていると考えています。
さらに最新の研究から、骨は以下のような器官にも影響を及ぼしていることがわかりつつあります。

骨の新陳代謝が良くなると、記憶力や認知機能に良い影響があるかもしれないという報告が出ています。

すい臓

すい臓から出るインスリンには骨を丈夫にする働きもありますが、骨から出るホルモンもすい臓に作用して、インスリンの出方をいい方向へ持っていくことがわかっています。

骨から出るのは「オステオカルシン」という物質で、血管から運ばれてホルモンとして作用します。筋肉を丈夫にしたり脂肪肝を抑制したりなどの働きが、実験レベルですが次々と報告されているそうです。

下の画像は、オステオカルシンを加えたマウスの脂肪細胞です。

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中にある丸い塊が中性脂肪なのですが、時間を進めると分解されていきます。

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20時間でほぼ消滅したそうです。

現時点で私たちがオステオカルシンを増やすためにできることは、ビタミンDの摂取と運動で骨がつくように促すことです。
骨に刺激を与えるには、骨に重力をかける縦の動きが必要ですので、階段の昇り降りや踏み台昇降運動、かかとの上げ下ろし、なわとびなどが有効です。

男性の方が骨粗しょう症は少ないですが、骨折をすると女性よりも死亡率が高い傾向があるそうですから、男性も骨を丈夫にする意識を持ちましょう。

 

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歯の最新治療

歯も骨の一部で、人間にとってとても重要な存在です。
治療方法も日々進化しており、そのひとつが番組で紹介されていました。

ある20代の男性は、高校生の時にスノーボードが前歯に激突して前歯2本を失ってしまいました。
こういう場合、既存の治療法としてはネジで埋める「インプラント」や、なくなった両横の歯を支えにする「ブリッジ」、そして「入れ歯」などの選択肢が用意されています。

どれも見た目は自然になりますが、噛み心地は戻りません。

しかし、最新治療である「自家歯牙移植」では、噛み心地まで回復させることができます。

その名の通り、保存しておいた自分の歯を前歯に差し込み、加工する治療法です。

広島大学の通称「歯の銀行」には、親不知や矯正の際に抜かれた1000本以上の歯が全国200以上の提携歯科医院から運ばれてきて、冷凍保存されているそうです。その後、患者が歯を失った時に、冷凍保存しておいた歯を持ち主に戻して移植するという仕組みです。

前歯を失った男性は、中学生の時に矯正で抜歯をし「歯の銀行」に保存していたため、この治療を受けることができました。

歯の根っこにある歯根膜は、食べ物を噛んだ時に衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。

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歯根膜には噛んだ刺激を脳に伝える役割もあるので、冷凍保存をした自分の歯なら、噛み心地まで回復させることができるのです。

この仕組みを立ち上げた神奈川歯科大学の河田俊嗣氏によれば、他人の歯を移植すると必ず拒絶反応を起こすそうですから、噛み心地まで回復させるには今のところ自家歯牙移植が唯一の方法であるようです。
(ちなみに、抜けた乳歯には歯根がないので移植には使えません。また、矯正治療のため抜歯した歯を家で保存していたとしても移植には使えません。歯根膜は乾燥に弱い細胞なので、抜いて1分以内に専用の液につけないと死んでしまうのだそうです。)

価格は、輸送や抜歯、20年間の保存料金などを含めて16万円ほどだそうで、治療まで含めると20〜30万円ほどになります。
冷凍保存をせずに奥の歯を抜いて前歯に移植する一般的な治療は保険が効きますが、現時点では冷凍保存をすると保険が効きません。

ただし、河田氏によると「自分の歯であるにも関わらず攻撃してしまうことが10〜20%ある」そうですから、移植の効果とリスクを勘案して、保存するか否かを考えるようにしてください。

 

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まとめ

飽食の時代の中で、骨粗しょう症やくる病などの病気が若年層で増えていることは意外に知られていません。
胎児への影響もありますから、特に妊娠を控えている女性は日光浴やビタミンD摂取に注意するようにしましょう。


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