感染性胃腸炎~ノロ、カンピロバクター徹底対策~チョイスより

近年爆発的な流行を見せるノロウイルス
感染すると激しい嘔吐と下痢に襲われ、悪化すると脱水症状を引き起こすこともあります。
ノロウイルスのようにウイルスや細菌が体内に入ることで起こる病気を「感染性胃腸炎」といいます。なかには手足の麻痺や呼吸困難などの合併症を引き起こす病原体もあるといいますから、注意が必要です。
今回は、感染性胃腸炎に関する知識や対策法を具体的に紹介していた『チョイス』をまとめておきたいと思います。

 

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ノロウイルスによる感染性胃腸炎

下のグラフは、ノロウイルスによる食中毒患者数を示したものです。

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チョイス『感染性胃腸炎』より

多い年には25000人を超えています。
このグラフはあくまで届け出があったものだけを示しているため、実際はもっと多くの人がノロウイルスに苦しんでいると考えられます。

Sさん(49歳男性)は7年前に感染性胃腸炎にかかってしまいました。
出張先で昼食を食べた3時間後に、今までに経験したことがないような吐き気や下痢に襲われたそうです。本人によると「時間の経過とともに悪化し、立っているのもつらい状態になった。10〜15分くらいですぐにトイレに駆け込み、ずっとトイレの中でもがいている状態だった」といいます。
下痢と嘔吐を一晩中繰り返したSさんが翌日やっとの思いで病院へ行くと、医師からは「ウイルス性のものがお腹の中にいる。出すしかない」と言われたそうです。
ノロウイルスが原因の感染性胃腸炎でした。3日で体重が6キロも減少し、「カバンひとつも重く感じて、歩くのもやっと」だったそうです。

感染性胃腸炎について、東邦大学医療センター大森病院の中嶋均氏は「(一番怖いのは)正常な代謝ができなくなり、食べるとすぐに出てしまうこと」と話していました。脱水が急激に進んで急性腎不全のような状態に陥ることもあるそうで、中嶋氏は一時的に人工透析を施したこともあったそうです。

ノロウイルスに感染したときの主な症状には、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などがあります。部分的には風邪に似ていますが、ノロウイルスに感染しても鼻水や咳が出ることはありません。
発症してから回復までには3日プラスマイナス1日ほどが必要です。
注意が必要なのは高齢者で、嘔吐したもので窒息死してしまったり、誤嚥(誤って食べ物などを肺の方に入れてしまうこと)によって肺炎を併発したりすることもあるそうです。

病院では、病原体を明らかにするために便の中を調べ(結果が出るまでは15分ほど)、点滴を受けるなどの治療を受けてから、お腹の調子を整える整腸剤を処方されるそうです。
ただし、現時点ではノロウイルスを直接退治する薬というのは残念ながら存在しないそうです。

 

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ノロウイルス感染の原因

Sさんはなぜノロウイルスに感染してしまったのでしょうか。
胃腸炎を発症した頃、Sさんは家族で寿司を食べに行き、奥さんと息子さんが食あたりになってしまったそうです。そのときSさんは息子さんが嘔吐してしまったものを素手で処理してしまったそうです。
ノロウイルスは生の魚介類などについています。数十個のウイルスでも胃腸炎を引き起こすほど感染力が強く、人から人へ感染するケースも多いので、Sさんは吐瀉物を素手で処理してしまったことが原因で感染してしまったと考えられます。

ノロウイルスの感染力の強さは、Sさんの周辺でさらなる被害を出しました。
Sさんは発症後2〜3日を実家で過ごしていたのですが、Sさんが治った後にご両親が胃腸炎を発症してしまい、その後1週間も症状に苦しんだそうです。

中嶋氏によると「ノロウイルスは急性胃腸炎の病原体の中では一番手強い」そうです。患者の手にウイルスが残っているとドアノブや手すりなどにもウイルスが付着してしまいます。そこでずっと感染力を保つわけではありませんが、触った直後だと感染する可能性があるそうです。

ノロウイルスはどこから来る?

ほとんどの二枚貝にはノロウイルスがいるそうです。
貝は海水を吸い込んで栄養分を吸い取り、水を排出することを繰り返しているので、その際にウイルスを体内で濾過して残してしまうのです。
加熱用のものはしっかりと火を通すなど、衛生管理などをきちんとすることが重要です。調理後に貝と他の食品を接触させないようにして、使った調理器具を熱湯で消毒することも忘れないようにしましょう。

胃腸炎の症状が治まっても、その後1ヶ月は便からウイルスが出ているという報告もあります。
毎年のように新しいウイルスの株が出てきており、1回かかったらもうかからないというわけではありませんので、油断しないようにしましょう。

 

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ノロウイルスの感染予防法

大東文化大学教授の中島一敏氏によると、予防の基本は丁寧な手洗いだそうです。

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チョイス『感染性胃腸炎』より

赤い部分は洗い残しが多い部分です。手首や指先に洗い残しが多いことがわかります。
以下に示す正しい手洗いのポイントをおさえて、洗い残しをなくしましょう。

1、 石けんをよく泡立てる
2、 指の間と付け根をよく洗う
3、 指先は反対の手のひらをつかって、手を丸めて円を描くように洗う
4、 使い捨てできるペーパータオルで手を拭く

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チョイス『感染性胃腸炎』より

親指と手首は揉み込むように洗います。

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チョイス『感染性胃腸炎』より

以上を踏まえても、かかった時間は約30秒でした。
2次感染はウイルスのついた手で食べ物などを触れて、それを口にすることで起こるので、意識しなくても正しい手洗いができるように普段から心がけましょう。

普段、アルコール消毒だけで済ませている人もいるかもしれませんが、それではいけません。アルコールはインフルエンザウイルスなどには効果がありますが、ノロウイルスにダメージを与えることはできないのです。
なので、やはり手洗いということになります。洗うときは固形石鹸よりも液体石鹸の方が爪の間まで洗いやすいので良いそうです。
ポイントとしてペーパータオルが挙げられているのも、二次感染を防ぐ目的です。
家族が感染してしまったときだけでも使うようにすると感染のリスクが下げられますし、タオルしかない場合でも感染者とタオルを分けることによってリスクを下げることができます。

トイレ掃除のポイント

ノロウイルスに感染している人がトイレを使ったあとは、通常の掃除だけではいけません。
ドアノブや壁など、触れた場所を市販の塩素系消毒剤で消毒しましょう。下の画像に示されるような具合で、掃除をする場所によって消毒剤の濃度を変えます。

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チョイス『感染性胃腸炎』より

希釈液をつくるときには500mlのペットボトルを使うと便利だそうです。
キャップの容量は約5mlなので、たとえば「5%程度の漂白剤」をつくるならキャップ半分弱(2ml)を500mlの水に入れれば簡単につくることができます。

消毒をする前には使い切りのマスクや手袋を必ず着用してください。ノロウイルスは乾燥すると空気中を漂って口に入ってしまうかもしれないので、糞便や吐瀉物は乾燥しないうちに素早く処理することを心がけましょう。

 

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細菌による感染

ウイルスと細菌の違いをご存知ですか?ウイルスと細菌ではサイズが異なり、ウイルスのほうが小さいため感染しやすいそうです。また、ウイルスは自分だけでは増殖できず、細菌は細胞質もあるので単体で増殖できるという違いもあります。
ノロウイルスはその名の通り「ウイルス」ですが、「細菌」に感染することで胃腸炎を発症することもあります。

Kさん(24歳女性)は1年前の冬にお腹に異変を感じました。
「1週間くらい風邪気味で、治りかけの頃にまた熱が上がったのでインフルエンザかなと思った」というKさんは病院へ行き、処方された解熱剤の効果で熱は下がりましたが、お腹の調子は良くならなかったそうです。「1時間に何十回もトイレに行った。緑色で粘液みたいな便が出てきて、普通の下痢とは違った。次第に血便も出てきてお腹も痛くなった。病院へ行くために歩いている間にもお腹が痛くなってきてしまうので大変だった」と話していました。
Kさんは病院で検査を受け、1週間後に「カンピロバクターが出た」と知らされました。

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チョイス『感染性胃腸炎』より

カンピロバクターは哺乳類や鳥類が持っている細菌の一種です。思い返してみるとKさんは、症状が出始めた頃に生レバーを食べたそうです。

カンピロバクターに感染して重症化すると、手足の麻痺や呼吸困難が起こることもあります。「ギラン・バレー症候群」という筋肉が麻痺する神経症状になると、しびれが下肢から徐々に上半身に上がっていき、ひどくなると呼吸ができなくなってしまうそうです。これは細菌に対する抗体が神経にダメージを与えることで発症する病気で、早く病院へ行かないと後遺症が出て、仕事に復帰できなくなることもあるそうです。
ここまで進むのは頻度としては多くはないそうですが、いざというときのために、こういうこともあると覚えておくべきでしょう。

中嶋氏によると「発症したときの便の色に特徴はないが、血便になる人は多い」そうですが、ノロウイルスと症状が似ているため、検査しないと見分けることが難しいそうです。ノロウイルスかどうかは病院での検査ですぐわかるので、ウイルス感染でないことがわかると細菌感染を疑うことになります。そして、細菌性の胃腸炎ではカンピロバクターが病原体となっていることが一番多いそうです。

感染予防には、食肉等の衛生管理や十分な加熱が重要です。

感染してしまったときの治療には抗生物質を用います。(抗生物質を用いた治療は回復を遅らせるという意見もあるそうですが、一般的にはそのような治療が行われると中嶋氏は話していました。)
Kさんは点滴をうち、抗生物質を飲んでからは体調が良くなり、約1週間で回復したそうです。

 

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ロタウイルスによる胃腸炎も

「嘔吐、下痢、発熱」など、ノロウイルスに似た症状を引き起こすロタウイルスというウイルスがあります。
ロタウイルスはノロウイルスより大きめのウイルスで、9割以上の人は2歳までに一度は感染すると言われているそうですが、最近は子どもを介して大人が感染することも増えているそうです。
子どもよりは軽症であることが多いですが、急性胃腸炎の14,5%はロタウイルスによる感染性胃腸炎だそうですから、お子さんのいる方は特にご注意ください。

まとめ

健康な人でもいつどこで感染するかわからないのが感染性胃腸炎の怖いところです。
予防のためには日頃から正しい手洗いを習慣化しておくのが一番です。
今回紹介されていたことをしっかりと実行して、感染のリスクを下げていきましょう。


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