オキシトシン~ハグやボディタッチで認知症・高血圧・ストレス改善~ガッテンより

先日の『ガッテン』では、「痛み&認知症に効く!『癒やしホルモン』の驚きパワー」と題し、「オキシトシン」というホルモンについて特集していました。オキシトシンはどうすれば出るのか、医療や日常生活でオキシトシンを活用している事例、そしてより多くのオキシトシンを出すにはどうすればいいのかといった事柄がわかりやすく伝えられていました。ストレスの多い現代社会に暮らす私たちみんなが知っておいて損はない、ためになる内容でした。

 

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ボディタッチで人はどうなるか

フランスのパリで、

男性が女性からどれだけ電話番号を聞きだせるか?

という実験を行ったそうです。普通に会話してもなかなか成功しないのに、1秒ほど腕に触れただけで、成功率が2倍になったのだそうです。
体に触れられた人は、脳から病気やストレスを軽くする物質「オキシトシン」が大量に分泌されたのがその原因だとされています。

さらに、ボディタッチをすると何が起こるか調べるために、カップルに5分間ハグをしてもらい、ハグをする前後で唾液にどのような変化があるかを分析していました。カップルには女性同士も含まれます。
結果は、男性ホルモンや女性ホルモンの量に変化は見られませんでしたが、オキシトシンは大幅に増加し、平均で25%の増加、そして女性同士では84%もアップしていました。なお画像中の「あるホルモン」とはオキシトシンのことです。

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ガッテンより

オキシトシンの活用~先進国スウェーデンの場合

日本ではまだなじみのないオキシトシンですが、北欧のスウェーデンでは知らない人がいないほどオキシトシンについての知識が浸透しています。「ハッピーホルモン」として認識され、ハグをすれば分泌されることも常識のように知れ渡っているようで、カップルや親子でボディタッチを大切にしているようです。
スウェーデンの小学校や保育園では「タッチケア」と呼ばれる、肌に触れるケアが指導されているほどで、子どもたちがお互いの背中などをなでています。このことで子どもたちの問題行動が減っているそうです。スウェーデンではオキシトシンの力にいち早く注目し、それを医療に応用する取り組みが盛んに行われているといいます。
世界最先端の医療が行われているというカロリンスカ大学病院では、さまざまな病気の患者に対してタッチケア(触れるケア)を行っています。特に体に慢性の痛みを持つ患者には効果があるそうです。
5年前から肩と腕に痛みを持つという女性に、肩を中心にただ触れているだけ。しかしその女性患者は、

「前は手がレンガを持っているような感覚の痛みがあったが、治療を1週間続けることで痛みが軽減し、体が大変楽になった」

と証言します。
オキシトシン研究の世界的権威だというシャスティン・ウヴネース・モーバリエ博士は、

「オキシトシンは体内でさまざまな効果をもたらすので、タッチケアは子どもから高齢者まで使われ、病院ではがんや痛みのある患者への治療としても使われている」

と語ります。

 

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オキシトシンの活用~日本のケース

今、日本でもオキシトシンの力が利用されています。
看護師だった女性Nさんは、8年前からリウマチによる痛みに苦しんでいます。痛みのために仕事を辞め、一人で暮らしているそうです。Nさんの痛みは、

「24時間、7年間、痛くないときはない。朝まで眠れないし、握力がもうなく握りこむことができないので、コップを持つこともできない」

と語るほどです。

痛み止めの薬も試したものの効果はなく、他にもいろいろ試したが効くものはなかったとのことです。
しかし、知り合いの看護師に頼んで、背中を10分間ゆっくりさするというタッチケアをしてもらったところ、驚くほど痛みが軽減されました。施術中は寝てしまいそうな心地よさを感じ、施術後も普段の焼けるような手の痛みがきれいになくなるなど、とても楽になると感想を述べていました。歩き方もスムーズで、痛くて仕方なかった首も回せるようになったとNさんは喜びを表現していました。

 

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タッチケアとオキシトシンの効果

タッチケア自体は病気を治すものではないものの、病気からくるさまざまな症状の改善ができると期待されています。
東日本大震災や熊本地震後の避難所でもタッチケアが行われたそうです。タッチケアには不安やストレスを抑える効果があるからです。オキシトシンには他にも、

睡眠薬
降圧薬
鎮痛薬
抗不安薬
ホレ薬

・・・などと同等の効果が期待できるといいます。

血圧への効果

オキシトシンは血圧も下げる効果があるそうです。高血圧の人に、背中のマッサージ10分間を週3回施したところ、数値が平均で10も下がったという研究結果がたくさんあるそうです。

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ガッテンより

認知症への効果

さらにオキシトシンは認知症にも効果があるとのことで注目を集めているといいます
認知症のOさんは乱暴な言動で家族を拒絶し、自分の世界に閉じこもって徘徊を繰り返すという、認知症に典型的な行動をとっていました。Oさんの娘さんは、
「(Oさんには)困った行動が多く、途方に暮れた。きつかった」
と語ります。そんなときタッチケアを紹介され、半信半疑で試してみたところ、Oさんから「気持ちよくなった、ありがとう」と、何年も聞いたのなかった感謝の言葉が出るようになったと言います。
タッチケアを毎日10分、1週間続けたところ、乱暴な言動がすっかり減り、徘徊までなくなったという劇的な変化が訪れたのです。Oさん自身、
「言葉に言い表せないほど本当にうれしい。涙が出る」
と語るほど、タッチケアが病気と生活の質を大きく変えてしまったのです。

 

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「触れる」と体によい変化が現れるメカニズム

私たちが痛みやストレスなどにさらされていると、脳の中の「扁桃体」で不安や恐怖を感じます。これが慢性の痛みや認知症などさまざまな症状の悪化に深く関わっているといいます。
同じく脳内の「前頭前野」は、扁桃体の興奮を鎮める働きがあります。ただし、ストレスや痛みがずっと続くと、扁桃体は興奮しっぱなしとなり、

痛みの増大
血圧の上昇
不眠

といったことが起こってくるそうです。このような状態のときに体に触れられるとオキシトシンが分泌し、扁桃体に直接働きかけて興奮を鎮めてくれるそうです。

東京医療学院大学の佐久間康夫学長は、オキシトシンについて、

「効果がすごく、これから非常に期待ができる。オキシトシンにより、物理療法やマッサージが科学的に説明できる段階になってきた」

と語ります。また、なぜ触るとオキシトシンが出るのかという問いには、

「触覚が脳に伝わり、視床下部からオキシトシンが出る。温度ではなく触覚なので、面積が広く当たったときに安心感が出る」

と解説します。
そして、オキシトシンは触られる側だけではなく触る側にも出るそうです。ただし、電車内で見知らぬ人と触れ合うといったことでは出ず、安心・信頼できる人と触れ合うことによって出るとのことです。
佐久間学長は、

「オキシトシンは使い切ったらなくなるといったものではないので、なるべく頻繁に接触したほうがよい。ただし、接触が機械的になってはならず、気持ちのこもったものでなければならない」

と付け加えました。

さらに、触れることで安心するのは人間だけではないそうです。チンパンジーやニホンザルも、けんかなどで興奮したあとはハグをするという行動が見られました。
これについて佐久間学長は、

「コミュニティーや群れを維持するために、オキシトシンは進化してきた。仲間と寄り添うことが生き残りに最も重要な手段だ」

と解説します。動物にとって「触れる」というのは特別なことで、身を寄せ合うことで生き残ってきたということです。

 

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一人暮らしの人がオキシトシンを出すには

愛する人の声を聞く

アメリカ・ウィスコンシン大学のレズリー・セルツァー博士は、オキシトシンに関する実験の一環で、7~12歳の女の子61人に大勢の前でスピーチをさせました。この大変ストレスがかかる行為のあとにお母さんと電話すると、オキシトシンが大量に出て、ストレス(唾液中のコルチゾール)の値が大幅に下がったというのです。

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ガッテンより

実際に母親に抱きしめられるよりは値が低かったものの、自分が信じられる、好きな人の声を聞くだけで、抱きしめられるのに近い量のオキシトシンが出ることがわかったのです!

抱き枕と声で

より効率的にオキシトシンを出す方法を考えているというのが、大阪大学教授でATR石黒浩特別研究室室長の石黒浩氏です。ロボット研究の世界的権威である石黒教授は、人の代わりになれる高度なロボットを作ることを目標としています。

この石黒教授が今、一人暮らしの人の心を癒すロボットの開発を行っているそうです。
「人と人が触れ合うときに何が大事かをつきとめ、ロボットを通して安心感を感じることができれば、もちろんホルモンにも影響が出る」
と石黒教授は語ります。実験と検証を繰り返した結果できたのは、なんと、抱き枕でした。ただ、普通の抱き枕と違うのは、抱き枕の頭の部分に電話を入れることができるようになっているのです。

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ガッテンより

「声だけだと存在感を感じられないが、人間のような抱き心地に「声」が加わると、とたんにその人の存在を感じる」
と、石黒教授は抱き枕の狙いを解説します。

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石黒教授が開発した抱き枕は、「Hugvie(ハグビー)」という名前で商品化されています。公式サイトはこちらです。
http://hugvie.jp/
ピンク、イエロー、グレーの3色があり、レギュラーサイズは10,000円、子どもサイズは8.000円です。
気になった方は購入を検討されてはいかがでしょうか。

一人暮らしの高齢女性のMさんとSさんに、孫との電話のときに抱き枕を使ってもらう実験をしていました。「身近にいる感じがする」、「ほっとする」という感想のとおり、オキシトシン濃度(pg/ml)もMさんは9.2から17.5へ、Sさんは8.8から15.7へと上昇していました。

 

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家庭でできるタッチケアのやり方

①いすの背やテーブルにもたれて楽な姿勢をとる
②両方の手のひらを背中にぴったりつけ、背中全体をなでる
※ポイントは1秒間に5cm程度のゆっくりとした動き

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ガッテンより

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詳しい背中のなで方は、番組ホームページでも紹介されているので、参考にされてはいかがでしょうか。
ガッテンホームページ

まとめ

癒しのホルモンであるオキシトシンは、触れ合うだけで分泌され、しかも痛みや認知症、高血圧などにも効果が発揮される、大きな力を秘めた物質だということがわかりました。具体的なタッチケアの方法も紹介されていましたし、身近で安心できる人との触れ合いは、これからはより積極的に行いたいものですね!


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