画期的なダイエット方法として注目を集めている「糖質制限ダイエット」。
お米やパン、甘いものを控えるだけで痩せられると話題のダイエット方法です。
お菓子やお酒などにも「糖質ゼロ」を謳った製品が多く発売されており、最近ではご飯をまるごと野菜に変えられるお弁当屋さんまで登場しているそうです。
一方、医師や専門家からは「糖質制限は危険」という意見もたくさん出てきています。
実際に糖質制限ダイエットを経験した人の中には、めまいや筋力低下などを実感した人も少なくないといいます。
そこで今回は、糖質を制限する際に身体の中で何が起きているかを解説していたNHK『ガッテン』をまとめておき、糖質制限ダイエットに対する理解を深めるきっかけにしたいと思います。
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「糖質制限」の世界的な流れ
番組が2210人を対象に行なったアンケートでは、半数を超える1179人が「糖質制限ダイエットを試みたことがある」という回答をしたそうです。そのうち減量に成功した人は764人にものぼり、成功率で言えば7割以上がダイエットに成功したことになります。
このように効果が出やすいこともあってか、日本では、糖質を制限することが一般的になってきています。
世界に目を向けてみても糖質制限の重要性は広く認知されつつあるようです。
国民の肥満率が24.9%というイギリスでは砂糖税が導入され、アメリカのカリフォルニア州バークレー市では住民投票によって清涼飲料水への課税が決まりました。
この運動を推進した人によれば、「住民の意識が変わり、砂糖は有害なものとして批判的な目で見られるようになってきている」といいます。
他にも、フランス、フィンランド、ハンガリーなどでも、清涼飲料水への課税が行われているそうです。
どうして糖質を制限すると痩せるのか
糖質制限がダイエットにつながるのは、私たちの体内に存在している「ミトコンドリア」が関係しています。
ミトコンドリアはひとつの細胞内に数百から数千もの数が存在しています。
もとは別の生き物として地球上に存在していましたが、約20億年前、ミトコンドリア系の祖先であるバクテリアが偶然、原始生命の細胞内に入り込みました。
原始生命は「糖」だけが唯一のエネルギー源だったのですが、ミトコンドリアが入りこんだことによって「脂肪」も細胞のエネルギーとして取り込むことができるようになりました。糖を摂取できないときには、体内にためておいた脂肪をエネルギーとして使えるように進化したのです。
糖質を制限することで脂肪を消費できる(=痩せることができる)ヒミツは、このミトコンドリアの働きにあったのです。
糖質制限ダイエットに成功した人の話
番組に登場した主婦のNさんは、結婚前と比べて23キロも太っていました。
しかし糖質制限ダイエットを始めてからたった1年で9キロも痩せたそうで、その状態を1年半ほどキープしているといいます。
Nさんはもともと白米が大好きでしたが、茶碗を小さくして量を半分にし、さらに白米から雑穀米に変更しました。おかずは好きなものをたっぷり食べられるので、取材時はお味噌汁を含めて5品も召し上がっていました。
Nさんによれば、糖質制限ダイエットには「あまりストレスを感じない」そうです。「やせるだけでなく、健康体を取り戻せる」と、そのメリットを語っていました。
番組では他にも糖質制限ダイエットを成功させた人の事例が紹介されており、「半年で8キロ痩せた」という39歳女性や、「他のダイエットでは痩せられなかったのに4ヶ月で18キロ痩せた」という48最女性、「血糖値も体重も結果が出たので続けられる」という57歳男性などの声がありました。
一方で、糖質制限ダイエットを行うことによって身体に不調が現れた人の声も取り上げられていました。
「ダイエット中にふらふらしだして、ドクターストップがかかった」
「足腰の筋力が落ち、立ち上がるのすらつらい状態になった」
「身体が鉛のように重くなり、朝ベッドから起き上がれないほどに」
「めまいや体力の低下を感じ、耳が聞こえにくくなった」
どうしてこのようなことが起きてしまうのでしょうか?
ここからは、糖質制限ダイエットの危険性について説明していきます。
実際に行われた人体実験
1944年、アメリカのミネソタ州で、兵士がどのくらいの栄養状態で戦えるかを検証するための実験が行われました。1日2回の食事で、上り坂に設定した運動器具でウォーキングするなどの運動を取り入れた生活を6ヶ月間継続すると、健康状態や体型がどのように変化していくかを細かく記録する実験です。
アンセル・キーズ博士というアメリカを代表する生理学者によるもので、実験に参加したのは志願した健康な若者36人でした。
6ヶ月後にはさぞかし健康になっているかとおもいきや、被験者たちの心臓は小さくなってしまいました。
ガッテン!より
黒い部分が肺で、その前にある白い部分が心臓です。
体型も、ガリガリに痩せ細ってしまいました。
ガッテン!より
おそろしい結果を出した人体実験でしたが、誤った方法で糖質制限ダイエットを行うと、この人体実験と同様の結果を招いてしまうそうです。
詳しく見ていきましょう。
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糖の摂取をゼロにする危険性
会社員のKさん(50代男性)は、2年ほど前に糖質制限ダイエットに挑戦しました。
体重と血糖値を下げる目的で開始し、炭水化物をほぼゼロにしたそうです。
始めて1ヶ月で3キロも落ち、血糖値を示す値も簡単に低下しました。
「これまでのダイエットでは落ちなかったのに、これはいいな」と思ったKさんでしたが、1ヶ月経った辺りから頭がボーっとする感覚に襲われはじめ、身体全体が疲れやすくなってしまったそうです。
さらに筋力も低下し、階段の登り降りがつらく、ふらつきを感じるようになってしまいました。血液検査でも筋肉量を示す数値が2割近くも落ちていたそうです。
「少し身の危険を感じた」というKさんは、そこで糖質制限ダイエットをやめました。
Kさんの糖質制限ダイエットは、何が間違っていたのでしょうか?
日本人の平均摂取カロリーは1日2000キロカロリーです。
これをどんなものから摂っているかの内訳が、以下の画像です。
ガッテン!より
60%を糖からとっているのですね。
先述のアメリカの実験では、被験者たちの摂取カロリーは45%カットされていたそうです。つまり、糖を完全にカットしてしまうと、あの実験よりもカロリー摂取を抑えることになってしまうのです。
北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟医師はKさんのケースを見て、「(糖質をカットしたぶん)タンパク質、脂質は増やさないといけない」と指摘しました。
「エネルギーが足りないと燃やしようがないので、自分の筋肉を削ってエネルギーにする。そのためにガリガリ痩せてしまう」のだそうです。
さらに、「糖質はゼロにするのではなく、ふだんの3分の1〜半分程度におさえるのがよい」そうです。
糖質の摂取量をゼロにしてしまうと身体にトラブルが起こる懸念があるため、ゆるやかに糖質を減らす食べ方を推奨しているそうです。
糖質を減らした分は、脂質やタンパク質(肉・魚・大豆など)を増やして、お腹いっぱいまで食べることもポイントです。
空腹感を我慢するのがいいというのがこれまでの常識でしたが、実は、たんぱく質や脂質をしっかり食べると満腹中枢を刺激する物質が分泌されるため、満腹まで食べているのに食べ過ぎになることはないということが明らかになっているそうです。
一方で糖質は、食後に空腹感を刺激する物質が分泌されやすいため、結果として糖質をどんどん食べてしまいがちになってしまうそうです。
第三のエネルギー「ケトン体」
エネルギーや糖質が不足してくると、身体は第3のエネルギーとして「ケトン体」を使うようになります。
体内で糖が少なくなると脂肪がエネルギー源になりますが、脳には関門のようなものがあるため、脂肪を脳のエネルギーとして使うことはできない仕組みになっています。
そんな時に脂肪から生み出されるのがケトン体です。ケトン体は、関門を通って脳のエネルギー源になることができるため、“第3のエネルギー”と呼ばれているそうです。
しかし、このケトン体が、糖の極端な摂取制限の危険性を高めているかもしれないというのです。
というのも、「ケトン体が血管に対して障害を与える」という論文が発表されているのです。
長期間ケトン体が出たときの安全性がまだはっきりとしていない点からも、極端な糖質制限は推奨されていません。
お酒を飲む際の留意点
糖質制限ダイエットを実施する際は、お酒に含まれている糖質にも留意する必要があります。
蒸留酒、ウイスキー、焼酎には糖質が含まれておらず、ビールなどに代表される醸造酒には糖質が含まれています。
ダイエット中は糖質が含まれていないお酒か、糖質をカットした発泡酒などを飲むとよいでしょう。
もちろん、肝臓が壊れてしまったら健康的には元も子もないので、飲み過ぎには注意しましょう。
果糖の危険性
糖の中でも、清涼飲料水に含まれている「果糖」が危険視されています。
果糖には以下の特徴があります。
・普通の砂糖よりも甘い
・血糖値が上がりにくい
・内臓脂肪がつきやすい
・老化を早める
とても甘いのでジュースなどに用いられているのですが、人体を老化させる働きがあるというのです。
番組では、人間の筋肉に見立てた牛のコラーゲンに果糖を加え、人間の体温に近い37℃の空間に保管する実験を行っていました。
保管をはじめて2週間後に取り出してみると、コラーゲンの色が変わってしまっていました。
ガッテン!より
同じように骨で実験してみても、変色してしまいます。
ガッテン!より
変色するだけでなく、もろく折れやすくなってしまっているそうです。
果糖は、ブドウ糖よりも10倍多く老化物質を作り出す性質があるため、このような実験結果になるのだそうです。
気になる方は、製品の成分表示欄を見てみてください。
その表示によって、製品に含まれる糖のうち果糖の割合はどのくらいかがわかるようになっています。
「ブドウ糖果糖液糖」…果糖が50%未満
「果糖ブドウ糖液糖」…果糖が50〜90%未満
「高果糖液糖」…果糖が90%以上
まとめ
おさらいになりますが、糖質制限ダイエットを行う際は全体のカロリーを減らしすぎないように注意しましょう。
肉・魚・大豆などを摂る際には、「肉+大豆」「炭水化物+魚」といったように1食の中で2種類を組み合わせるようにすると量を確保しやすいそうです。
また、炭水化物を少なくすると食物繊維が不足しがちになるそうなので、野菜もたっぷり食べるようにしましょう。
糖質は、3食バランスよく減らすようにした方が身体に優しいそうです。
今回紹介された知識を活用すれば健康的に糖質制限ダイエットをすることができますが、糖尿病や腎臓病、脂質異常症などの方は、主治医に相談してから行うようにしてください。