糖尿病の鍵は教育入院~チョイス@病気になったとき「糖尿病 早期発見・克服法」第1弾

糖尿病は、日本人の5人に1人が発症しているか予備軍と言われるほどメジャーな病気で、血液の中の糖分の量が一定以上に増えてしまうと糖尿病ということになります。

糖尿病はどんな病気?

男性Aさんの事例
Aさんは今から2年前に糖尿病と診断されました。当時、自覚症状は全くなかったのですが、奥さんが風呂上りのAさんの左足が腫れていることに気づき、受診したところ糖尿病と診断されたそうです。Aさんによると左足の甲から足首にかけて腫れていたそうです。

糖尿病は体のエネルギー源の一つであるブドウ糖が全身の細胞に十分取り込まれず、血液中に異常にあふれた状態になることで発症します。インスリンという、体の細胞に糖を取り込むために働くホルモンが関係しており、このインスリンの働きが悪くなるとブドウ糖が細胞に取り込まれなくなり、糖尿病となってしまいます。
20141116155055

Aさんの場合もインスリンが効きづらいために細胞が糖を取り込めなくなり、血液中に糖が増えて糖尿病になりました。
ちなみに、Aさんのような糖尿病を2型糖尿病といいます。
Aさんは父親が糖尿病だったこともあり、注意はしていたそうですが、発症してしまい大変ショックを受けたとおっしゃってました。

Aさんにとって、糖尿病診断の前後で大きく変わったのは食事と運動です。
奥さんは食事療法をするために毎回食材の量を正確に測って食事を作ります。カロリー、糖質、脂質の量を決められた範囲内に収めるためです。
20141116160151

また、毎日散歩をして運動療法も欠かしません。
Aさんは運動療法と食事療法を続けることで体重を10キロ減らしたそうですが、実はAさんは10年前に一度糖尿病の診断を受けたのに治療を放置していた過去があり、それが原因で症状は悪化してしまったそうです。

どういうことかというと、、、

糖尿病によって血液内に増えた糖は、血管を傷つけてしまいます。
20141116164530

高血糖の状態が長く続くと血管へのダメージは細い血管から現れ始め、腎臓など細い血管が密集している臓器の働きが悪くなってくるのです。
20141116164537
なんと、人工透析を受けている人の5人に2人は糖尿病を患っておられるそうです。番組では、糖尿病を発症して5年~10年で腎臓の働きが悪くなる可能性が極めて高くなると言ってました。

Aさんは2年前の診断以降も症状は悪化しているようで、現在では腎臓の働きが悪くなっているそうです。腎臓が悪くなると水分を排出できないために足がむくんできます。

10年前に糖尿病と診断されて以降、途中で勝手に治療を中断したこともあり、高血糖の状態が続いて血管へのダメージが蓄積していったのです。

ダメージは腎臓以外にも出始めていました。
ある日、散歩の途中で左目の視界に墨汁を垂らしたような黒い部分が出現したそうです。これはいけないとすぐに病院に行ったところ、目の奥の毛細血管が破れ、出血していることが判明。すぐに手術をして難を逃れました。

Aさんは言います。
『糖尿病は怖い病気。これ以上悪くならないように家族と協力して現状維持をしていきたい。』

早めに治療することはもちろん、継続して付き合っていく覚悟も必要です。

別の男性B(39歳)さんの場合
Bさんは35歳で糖尿病になったそうです。最初は吐き気を伴う風邪の症状だったそうです。体がだるく、単なる風邪と思っていたところ、糖尿病の診断が下されたのです。
この時の血糖値は正常範囲を大きく超えた415mgという数値でした。ちなみに正常値は110mg以下です。
20141116160842
Bさんはこの時、『もう終わった。これからどうなるのか?』という絶望感にさいなまれたといいます。
このBさんは1型糖尿病でした。
1型糖尿病はインスリンを作るすい臓に異変が起こることでインスリンが分泌されずに引き起こされる糖尿病のことを言います。
20141116161201

Bさんは足りなくなったインスリンを補うために食事のたびにインスリンを注射して補っています。
20141116161418

この注射も簡単なものではなく、食事に含まれる糖分を計算して、自分でインスリンの量を算出しなければいけません。
20141116161712
上記の場合、Bさんは14単位分のインスリンを注射するそうです。

Bさんはこうした食事の量と注射したインスリンの量を毎回記録しているそうです。食事の内容と量、インスリンの量を把握することで、血糖値のコントロールを少しでも失敗しないようにとの配慮からです。ただ、医師いわく、毎回同じ時刻に同じ食事を食べ、インスリンの量を同じにしても、コントロールはできないと言われているそうで、日々試行錯誤の繰り返しのような感じでした。

富山県立中央病院内科部長 臼田里香医師の話
『1型と2型では別の病気と考えた方が良い。』
『1型はインスリンが出なくなる病気。2型は生活習慣からきており、遺伝要素がある場合もある。』
『糖尿病の9割以上が2型糖尿病。』

1型糖尿病 2型糖尿病
原因 インスリンが出ない インスリンが出にくい・効きにくい
治療 インスリン注射 食事療法
運動療法
薬物療法
発症要因 突然・原因不明 運動不足・食べ過ぎ
肥満・ストレス

『糖尿病は治らない。基本的に血糖コントロールをして上手に付き合っていくスタンス。』
『2型の場合はもともと生活習慣からきており、症状もないのでルーズになりがち。勝手に治療を中断する人が結構多い。』
『食事療法は自分を治療するスキル。スキルアップするには早いほど良い。』

糖尿病の診断

20141116163529
糖尿病の診断は、上記の表のうち、上の3つ、すなわち
・早朝空腹時血糖値
・食後2時間血糖値
・随時血糖値
のうちのどれか一つが基準値以上であり、かつHbA1cが6.5%以上だった場合に糖尿病と診断されます。
健康診断や人間ドッグでは空腹時血糖値を調べますが、あれだけでは不十分ということですね。

糖尿病が引き起こす主な病気
20141116170735
糖尿病は血管を傷つけるためにあらゆる病気を引き起こします。

糖尿病の合併症が発症する目安は以下のようになるそうです。
20141116171237
実は、予備軍という、糖尿病発症前の人であっても、動脈硬化のリスクは常にはらんでいるそうです。

予備軍というのは、いわゆる境界型と呼ばれるもので、数値でいうと以下のようになります。
20141116171352
動脈硬化になりやすい体質ができてしまっているということだそうです。

男性Cさんの事例
Cさんは3年前に糖尿病と診断されました。
そこで、Cさんは富山県立中央病院の糖尿病教育入院に参加し、糖尿病の悪化を防ぐことに成功しているそうです(血糖値274⇒144)。
Cさんが参加した糖尿病教育入院とは、病院に10日間入院して、食事のカロリーや糖分、脂質量を把握し、さらに実際のメニューまで作成したり、糖尿病との付き合い方を学んだりするものです。食事管理の方法を病院に入院して学ぶことで、自宅での食事療法をスムーズに進めることができます。

また、病院の方によると一番の効果は、教育入院している間、運動もしてないのに食事だけで血糖値が下がってくる、つまり数値の変化を実感できるところにあるそうです。確かに、何か特別なことをするわけではなく日頃の生活をちょっと注意するだけで数値は変化するということが実感できれば、心理的なハードルも低く感じるのではないでしょうか?

この教育入院にはもう一つ大きな柱があります。それは血糖値の見える化といって、退院後に自分の血糖値を調べることができるように練習するのだそうです。自分で測ることができれば、高血糖の状態になることを防ぐことにつながるそうです。
20141116193841

教育入院プログラム
食事管理、体重管理、血糖値測定、合併症学習、薬物治療、運動指導など

結果、富山県立中央病院で教育入院した患者さんの実に6割が、退院後に血糖値を下げることに成功しているそうです。
Cさんは血糖値もHbA1cの値も改善し、3年経った今もその状態をキープしているそうです。食事療法というと何か窮屈な感じがしますが、しっかりと食事管理を行えば、それが自然に身に付き、生活の流れとして定着するそうです。

もう一つ、Cさんの糖尿病の悪化を食い止めているものがあるそうです。
それはインスリン注射。インスリン注射は1型糖尿病の患者さんのみがするものと思われがちですが、2型にも有効ということです。
糖尿病ということでインスリンを分泌する膵臓は疲弊しています。糖尿病の薬によってインスリンの分泌は促されてはいますが、無理をして分泌している状態なのですい臓にとってはあまり良いことではありません。
20141116200006

そこで、すい臓を休めるためにインスリン分泌を促す薬をやめ、注射で外部から直接補充してやることですい臓を休めることができるそうです。
20141116200208

Cさんは3か月にわたってインスリン注射を受け、結果、HbA1cの値は10.6%⇒6.7%に大きく改善することができたのです。
現在、Cさんは食事療法と運動療法、あとは2種類の薬を服用しているそうですが、薬もいつかは卒業したいと頑張っておられます。

なお、このインスリン注射は、月あたり約1万円(3割負担の場合)。誰でも効果があるわけではなく、長期間、高血糖状態が続いて薬を服用してきた人の場合は効果が期待できない場合もあるそうです。最悪なのは血糖値が下がらないのに薬を飲み続けている場合だそうで、血糖値が下がってないならそれは薬が効いてないということで放置しているのと同じだそうです。そういう状態を長く続けているとインスリン注射してもすい臓は復活しにくいですし、血管の傷みも早くなる可能性があります。

いずれにしても、糖尿病は放置しておいたら悪化してしまいますから、気になる人は早く検査することが大切です。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。