「味がしない!」味覚障害の原因は亜鉛不足?原因と治療法~チョイス@病気になったときより

食事は生きる楽しみの一つです。それがある日突然、できなくなることがあります。

「味覚障害」は食べ物の味がわからなくなったり、嫌な味がしたりするようになる病気です。2003年のデータでは24万人が味覚障害で病院を受診しており、その数は20数年間で倍にまで膨れ上がっています。

味覚障害になると食事が楽しめなくなるだけでなく、どうしても塩分や糖分を多く摂ってしまいがちなので、高血圧や糖尿病などの二次的な健康被害を生むことにもつながります。
今回は、味覚障害について紹介していた『チョイス@病気になったとき』を中心に、情報をまとめていきたいと思います。

 

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いきなり味を感じなくなる

Kさん(83歳)は2年半前、和菓子を食べている時に異変を感じました。

「何も味がしない。和菓子を食べている感触もなかった」そうで、その後の食事でいわしの塩焼きや巻きずしなどを食べてみても、まったく味がしなかったそうです。

それ以降は仕方なくカレーパンなどの強い香りの食べ物ばかりを食べるようにしましたが、次第に食べる量が減っていき、やがて何も食べられない状態になってしまったそうで、1ヶ月で体重が7キロも落ちてしまったそうです。

Kさんは当時を振り返って「何も味のない食べ物はこんなにも食べられないものか」と話していました。

そんな中、ある日の夜にふと目覚めて台所へ行った時に、Kさんはなんとなく塩や砂糖などの調味料を舐めてみたそうです。それでも全く味を感じなかったので「これは錯覚じゃなくて病気だ」と確信し、耳鼻咽喉科を受診したそうです。

そして、「味覚障害」と診断されました。

舌の表面を拡大して見ると、小さなぶつぶつがあります。

チョイス@病気になったときより

この中に味蕾(みらい)という味を感じるセンサーがあります。

味を感知するとその情報が脳へと伝わって味を認識するのですが、その情報伝達に問題が生じると「味覚障害」になります。

兵庫医科大学の任智美医師によると、「味を感じるのは舌だが、亜鉛が欠乏すると味覚障害が生じる」といいます。Kさんは血圧を下げる薬(降圧薬)の副作用で体内の亜鉛が欠乏し、味覚障害を発症していました。

降圧薬を多くの種類飲むほど発症しやすいそうですが、降圧薬の他にも100〜200種類の薬で味覚障害につながることが確認されています。これらの薬を飲むと亜鉛を摂取しても体内でうまく吸収できなくなるのだそうです。

チョイス@病気になったときより

Kさんは「亜鉛製剤」を処方され、1日2回飲み続けました。さらに、自分で血圧を測る習慣をつけたところ、降圧薬を飲まなくても血圧が安定していたことがわかり、降圧薬をやめることもできました。

その結果、味覚障害は2ヶ月ほどでなくなり、これまで通り食事を楽しめるようになったそうです。

 

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味覚障害について

「味覚」というのは基本五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)を認識する能力をいうのですが、それらのうち一つでも感じられなくなると「味覚障害」となります。

下図は、ある病院の味覚障害患者数を年齢層別に示したグラフです。

チョイス@病気になったときより

緑が男性、ピンクが女性なのですが、女性の方がやや多いことがわかります。男女比はだいたい3:2となっており、年齢が上がるにつれて患者数が増えていきます。

味覚障害の原因

味蕾の新陳代謝を促している「亜鉛」が欠乏すると古い味蕾ばかりになってしまい、味を感じられなくなる味覚障害となります。

味蕾は加齢によって減少していくのですが、味覚障害にまで至るのは亜鉛欠乏によることが多いそうです。(ただ、薬の副作用で亜鉛が欠乏した人全員に障害が起きるわけではありません。)

注意点としては、味覚障害になるのが嫌だからといって、降圧薬などの薬を自己判断で服用をやめてはいけないということです。必要上、薬をやめられない人には酢酸亜鉛水和物の亜鉛製剤が処方されるケースが多いそうで、加えて漢方薬を使うこともあるそうです。

治るまで半年〜1年ほどはかかるそうですが、早期で治療を始めることができれば治りも早く、改善率も高まるそうです。

ダイエットや偏食などが原因になることもあるそうです。
下図に示すような亜鉛が多く含まれる食品の摂取量が減るためです。

チョイス@病気になったときより

これらの食品をビタミンCや動物性のタンパク質と一緒に摂ると、亜鉛を効率よく吸収することができるそうです。

亜鉛の体内での働き

亜鉛は人間にとって不可欠なミネラルで、体内で様々な役割を果たしています。

・ 皮膚や毛髪、爪の健康維持
…慢性湿疹や爪の異常と亜鉛欠乏に関係があることがわかっています。

・ 抗酸化作用
…亜鉛は体内のビタミンAの代謝を促し、過酸化脂質の害を防ぎます。

・ 免疫力の向上
…亜鉛には粘膜を保護するビタミンAを体内にとどめる効果があり、のどの痛みや鼻水・鼻づまりなどの症状を緩和してくれます。病気を引き起こす細菌を攻撃する白血球にも亜鉛が含まれているので、風邪をひいたときなどは特に重要なミネラルとなります。

・ 生殖機能の改善
…男性が精子を生成する際には亜鉛が必ず必要になります。

・ 神経伝達物質をつくる
…神経伝達物質が正常に作られないと、感情のコントロールや記憶力に異常が生じ、うつ状態になることもあります。

亜鉛が不足すると以上のような働きがうまくいかなくなるので、味覚障害以外の不具合も出てきてしまいます。
食事やサプリメントなどで適量を摂取するよう心がけましょう。

 

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味覚障害の症状

味覚障害の症状には以下のようなものがあります。

・ 味が薄く感じる、味がしない
・ 口の中に何もないのに味がする
・ 本来の味と違って感じる
・ 特定の味だけわからない
・ 嫌な味がする
・ 味がきつく感じる

「口の中に何もないのに味がする」という症状では、苦味を常に感じるケースが多いそうです。

このような症状が現れた場合は病院で診てもらう必要があります。

耳鼻咽喉科でもいいそうですが、「味覚専門外来」がある病院があれば、そこを受診してください。

味覚専門外来で行われる診察

・電気味覚検査
舌に電気を通して、味覚障害の程度を調べます。

チョイス@病気になったときより

電流を感じたらボタンを押します。正常なら僅かな電流で金属の味を感じるそうです。

・ろ紙ディスク法
味のついた小さな紙を舌の上にのせて、何味を感じたかを答えていくテストです。
甘味・塩味・酸味・苦味の4種類を、濃度を変えながら舌にのせていくことで、どの程度感じられるかを調べます。

これらを終えると、問診に移ります。

「食べ物や薬でアレルギーがあるか」などの質問を行った上で、ストレスをチェックするための心理検査を行います。

任氏によると「心でストレスを感じる人もいれば、身体に現れる人もいる。感覚が退化したり鋭くなったりなどそれぞれだが、ストレスが味覚の症状として現れることがある」という理由から、心理検査は行われるそうです。

ストレスから起きる味覚障害

Sさん(42歳男性)は昨年、突然味を感じなくなりました。

スナック菓子に塩気を感じず、チョコレートは硬いバターを噛んでいるようで、ラーメンの麺は“アツアツの噛み切ることができるヒモ”という感じがしたそうです。それでもSさんは「味覚が戻ってるかも」と確認したい気持ちから、満腹になっても食事を食べ続けたりしたそうです。

Sさんは亜鉛製剤による治療を始めましたが4ヶ月経っても効果が出ず、原因はストレスにあることがわかりました。

当時は「パワハラとモラハラが続いた結果、仕事ができないからダメだ、と自分を責めるようになっていた」といい、決心して仕事を辞めることにしたそうです。

すると突然、味覚が回復しました。

退職から1ヶ月も経たないうちに、まずは苦味から感じるようになったそうです。味覚が元に戻っていくのを実感したSさんは、仕事を辞めてよかったと思ったそうです。

任氏によると、心性の味覚障害は年々増えているそうです。

健康な人でも緊張した場面で食事をすると味を感じない時がありますが、心性の味覚障害はそれがずっと続いているような感じ、と説明していました。

心性の味覚障害は、抗不安薬や心療内科でカウンセリングを受けるなどして治療を試みるそうです。

その他の原因

さらに、他の病気が原因で味覚障害になることもあります。

貧血や胃腸の病気、糖尿病、甲状腺の病気、肝臓・腎臓の病気、神経障害(顔面神経麻痺)、脳梗塞脳出血脳腫瘍など、様々な病気が原因となりえるそうで、胃腸の手術を受けた人でも亜鉛が吸収できず味覚障害になる場合があるそうです。

唾液の減少も原因になります。

味を感じさせる物質が唾液にのって味蕾に触れることで味を感じるので、その過程に支障が出てしまうのです。唾液の量が病的に少ないと薬で治療をすることになりますが、自律神経に原因がある場合は唾液腺のマッサージをして対処します。

唾液腺のマッサージ

東京女子医科大学耳鼻咽喉科講師の山村幸恵氏が、唾液腺マッサージを解説していました。

耳の付け根あたりと顎の下にある唾液腺をマッサージで刺激します。

「耳下腺マッサージ」は、口を噛み締めた時に膨らむ頬の部分に指を押し当てて、前に向かってゆっくり回します。

チョイス@病気になったときより

10回を1セットとして1日2〜3セット行います。

「顎下腺マッサージ」は親指で顎の下を、後ろから前に向かって位置をずらしながらやや強めに押していきます。

チョイス@病気になったときより

これを1日5回行います。

どちらのマッサージも、うまくできると唾液が湧き出してくる感触があるそうです。

任氏は「食事の際にしっかりと咀嚼することも重要」と指摘していました。

酸っぱいものを食べることも唾液を出すことを促すので、食事に取り入れるとよいでしょう。

抗がん剤による味覚障害への対策

抗がん剤を使用している人は約7割が味覚障害になるそうです。

症状の現れ方は様々で、たとえば乳がんに用いる抗がん剤でもタキサン系だと味を弱く感じる傾向があり、アンスラサイクリン系だと旨味以外は強く感じるようになるなどの違いがあるそうです。

番組に登場したTさんも4年前に抗がん剤治療を行った際に味覚障害になりました。
「投与から4〜5日目に味が変だと感じ始めた。薄い感じがして、塩味をあまり感じなくなった」と話していました。

千葉県がんセンターでは、7年前から抗がん剤で味覚障害になった人でも美味しく食べられるレシピを開発しているそうです。

レシピ内容は紹介されていませんでしたが、塩味を強く感じてしまう人には塩味を控えて旨味で味をつけるなどの工夫をすることで、なるべく食事を楽しめるようにしているそうです。

意外な味覚障害

Tさん(67歳女性)は2年半前に味覚障害になりました。

かぼちゃの煮物を食べたときに味が“ただ甘いだけ”に感じたそうです。食事の支度をするときにも家族に味見をしてもらいながらでないと作れないなど、不便だったそうです。

Tさんの味覚障害のきっかけはインフルエンザに罹ったことで、まず嗅覚の異常から現れたといいます。おにぎりを食べたときに具のにおいだけでなく米や海苔のにおいまで感じなくなっていたそうです。

病院で診てもらうと「風味障害」と診断されました。風味障害は、においがわからなくなることで、味覚機能は正常なのに味がわからなくなってしまう病気です。

Tさんは神経の働きを助ける「当帰芍薬散」という漢方を処方され、7ヶ月後にようやくにおいを感じることができ、その後およそ3ヶ月をかけて味覚も復活してきたそうです。

この現象について、任氏は「例えばアイスクリームを食べた時に甘さを感じるのは味覚。しかし、イチゴ味などの風味は臭覚で感じている」と説明していました。嗅覚と味覚は脳で統合されるので、においに異常があると味覚にも影響が出るのです。

風味障害の原因で一番多いのは副鼻腔炎だそうです。

風邪をひいている間になることが多いので、風邪が治ってもにおいがわからないという場合は要注意です。

 

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まとめ

任氏によると味覚障害にはわかっていない部分も多いそうですが、「早期発見・早期治療が改善率の向上につながる」ことは確かだそうです。

前述の通り、放置すると大きな病気を誘発する可能性もありますから、異常を感じたらすぐに病院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

 

 


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