先日の『きょうの健康』のテーマは「機能性ディスペプシア」についてでした。兵庫医科大学の三輪洋人主任教授(消化器内科医)が、機能性ディスペプシアの原因や治療・改善方法について説明していました。
スポンサーリンク
機能性ディスペプシアとは?
画像検査(内視鏡検査又はバリウム検査)では胃に異常が見つからないのに胃の痛み、食後の胃もたれ、早期満腹感が慢性化していると機能性ディスペプシアと診断されるそうです。機能性ディスペプシアの概念は、1989年にアメリカの学会で誕生したそうです。ディスペプシアはディス(できない)+ペプシア(消化)という意味です。2013年に機能性ディスペプシアは日本でも正式な診断名として使われるようになったと三輪先生は説明していました。
きょうの健康より
機能性ディスペプシア(FD :functional- dyspepsia)とは、胃の痛みや胃もたれなどのさまざまな症状が慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査などを行っても、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がみつからない病気です。生命にかかわる病気ではありませんが、つらい症状により、患者さんの生活の質を大きく低下させてしまう病気です。
“異常がみつからない病気”というのが機能性ディスペプシアの面倒なところですね。本人の自覚症状が頼りというところでしょうか。
スポンサーリンク
機能性ディスペプシアの症状
機能性ディスペプシアの症状はは、胃もたれ、早期満腹感、胃の痛みがあるそうです。
「胃もたれ」
食後の胃もたれは、胃の動きが鈍くなり食べ物が通常よりも長い時間胃の中に残るために起こるとのことです。
「早期満腹感」
食べ物を食べたときに広がるはずの胃の上部が広がらないために、少し食べただけでおなかがいっぱいだと感じてしまいます。
きょうの健康より
「胃の痛み」
健康な胃は胃液の刺激を感じることはありません。けれども、機能性ディスペプシアで胃の痛みを感じるのは、胃が胃酸の刺激を感じる知覚過敏を起こしているからだそうです。
スポンサーリンク
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアの原因はストレスや疲労です。ストレスによって自律神経が乱れると、胃が正常に機能しなくなってしまうそうです。自律神経は、睡眠不足、食生活の乱れ、喫煙によって正常に働かなくなります。また、胃酸が出すぎたり、ピロリ菌に感染していたりすると胃が通常の役目を果たせなくなってしまうと三輪先生は説明していました。
きょうの健康より
スポンサーリンク
機能性ディスペプシアの治療法1「生活習慣の見直し」
三輪先生によると、機能性ディスペプシアを改善するためには、まず生活習慣を見直すことが重要だそうです。食事はゆっくりよく噛んで食べ、食べ過ぎない(腹八分目を心がける)ようにすると良いとのことです。
また、食後すぐに動くと消化に悪いので食後30分の休憩を三輪先生は勧めていました。さらに、ウォーキングなど適度な運動をすることや禁煙も機能性ディスペプシアの改善に効果があるとのことです。これらのことを1週間試しても症状が良くならない場合は、専門医(消化器専門医や一部の内科医)を受診する必要があるとのことです。
機能性ディスペプシアの患者は、潜在的に不安を抱えている人が多いので、患者に寄り添ってくれる医師を受診できると良いと三輪先生は話していました。
スポンサーリンク
機能性ディスペプシアの治療法2「薬物療法」
生活習慣を見直しても症状が改善しない場合は、飲み薬を治療に使用します。2013年に早期満腹感や胃もたれを改善するアコチアミドが、機能性ディスペプシアの治療薬として初めて保険適用となりました。約半数の患者がアコチアミドで症状が改善するそうです。
アコチアミドの効果を胃のシンチグラフィで見ると、服用から2週間後には胃がよく膨らむようになり、食後に胃に食べ物が残る時間が短くなっているのがわかります。(画像の緑色の部分が食べ物です。)
きょうの健康より
アコチアミドの他には、胃の痛みの改善に胃酸の分泌を抑える薬、強いストレスがある場合には抗不安薬が治療に使用されるとのことです。
1か月薬物療法を続けても症状が改善しない場合は他の病気の可能性があるので、消化器専門医を受診して内視鏡検査やピロリ菌の検査を受ける必要があるとのことです。これらの検査を受けて、自分の胃に問題がないことを知るだけで約3割の人の症状が改善すると三輪先生は説明していました。機能性ディスペプシアの原因はストレスなので、不安な気持ちでいると症状が悪化してしまいます。ですから、ストレスが原因だとしっかり認識することも重要とのことです。
三輪先生は、機能性ディスペプシアや慢性胃炎やよる胃の不調を治療や生活習慣の見直しによって改善する方法をまとめた本を執筆しています。
「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎 (別冊NHKきょうの健康)
三輪 洋人
まとめ
三輪先生の「胃の調子が悪いとハッピーな生活は送れない」という言葉が印象的でした。確かに、胃が痛いと何をしていても楽しめません。機能性ディスペプシアの症状(胃痛、胃もたれ、早期満腹感)がある場合は、何が自分にとってのストレスなのか、生活習慣で改善しなくてはいけないことはないかを知ることから始めたいですね。