先日の『きょうの健康』のテーマは、医療機関での禁煙治療についてでした。呼吸器内科医の村松弘康先生(東京慈恵会医科大学非常勤講師)が喫煙の健康被害、医療機関で行われる禁煙治療の内容などについて説明をしていました。
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喫煙が影響する病気
タバコに含まれる有害物質は肺から全身に送られていくので、喫煙は体のさまざまな部分に悪影響を及ぼすそうです。例えば、タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる働きがあるので、心筋梗塞・狭心症、脳卒中など血管の病気の発症率は喫煙しない人よりも高くなるとのことです。また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者の90%以上は喫煙者です。その他にも糖尿病、腎臓病、ぜんそくなどの発症率も喫煙者のほうが高くなると村松先生は説明していました。
それから、タバコには70種類以上の発がん性物質が含まれているそうです。喫煙者のがん死亡率は、喫煙しない男性の2倍、女性の1.6倍だそうです。また、喫煙するとのどに発がん性物質が大量に付着するので、咽頭がんの発症率は喫煙しない人の32.5倍にもなると村松先生は説明していました。さらに、喫煙は、肺、食道、肝臓、胃、すい臓、子宮頚部、膀胱などのがんの発症率を高くするとのことです。
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【参考】
国立循環器病研究センター『まだタバコを吸っているあなたへ』
過小評価されている受動喫煙
村松先生によると、受動喫煙も自分が喫煙するのと同じように体に悪影響があるそうです。2016年に厚生労働省の研究班が発表したデータによると、受動喫煙が原因で年間約15,000人が死亡しているとのことです。死亡原因の内訳は、脳卒中が約8,000人、心筋梗塞・狭心症が4,500人、肺がんが約2,500人です。
村松先生は、受動喫煙によって多くの子供や女性が犠牲になっているのにも関わらず、その影響が過小評価されていると考えていました。例えば、
夫が1日に20本以上タバコを吸うと妻の肺がんの死亡率が喫煙しない人の1.9倍
になります。また、先ほど紹介した厚生労働省の調査によると、
受動喫煙が原因の乳幼児突然死症候群で死亡した子供が約70人
いました。さらに、タバコにはPM2.5が大量に含まれているので、
喫煙可能なレストランなどの空気の汚染は北京と同等
で、分煙にしても変化はないと村松先生は説明していました。
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禁煙が難しい理由
喫煙者を対象に実施した調査によると「タバコをやめたい、または減らしたい」と思っている人は男性が59%、女性が63%だそうです。けれども、実際にタバコをやめるのはかなり難しいようですね。
自力でタバコをやめることができるのは5%から8%だと番組で紹介していました。禁煙が難しいのは、タバコに含まれるニコチンに依存してしまうからです。意思が弱いから喫煙できないというわけではないそうです。ですから、本当に禁煙するためには、ニコチン切れのイライラなどをサポートしてくれる医療機関を受診するべきだと村松先生は話していました。
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医療機関での禁煙治療
医療機関での禁煙治療では、ニコチンパッチ(張り薬)やバレニクリン(飲み薬)のような禁煙補助薬が処方されます。また、3か月間で5回受診をして、医師や看護師の喫煙指導も受けるそうです。
ニコチンパッチ
ニコチンパッチは1日1回腕、腹、胸などに貼って、皮膚からニコチンを吸収させます。ニコチンを徐々に体内に吸収することで、禁煙中のニコチンへの禁断症状を和らげてくれるとのことです。ニコチンパッチは使用し始めた日から禁煙が始められるので、すぐに禁煙をしたい人にお勧めだそうです。ニコチンパッチには大、中、小のサイズがあり、大きなパッチから始めて徐々に小さいものに変えていきます。張り薬なので、皮膚がかぶれる恐れがあります。
バレニクリン
バレニクリンはニコチンと似た作用がある飲み薬で、ニコチン切れのイライラを抑える効果があります。胃への負担などを考えて徐々に量を増やしていくそうです。バレニクリンを使用する場合は、服用後1週間は喫煙しても良いとのことです。バレニクリンの服用を続けていると、だんだんタバコがまずく感じるようになるとのことです。
タバコがおいしく感じる理由は、脳の神経細胞の受容体にニコチンが付着してドパミンが大量に分泌するからだそうです。これが、ニコチン依存症になる原因でもあります。
バレニクリンも受容体に付着して少量ですがドパミンを分泌します。バレニクリンが付着した受容体にはニコチンが付着することができないので、タバコを吸ってもおいしく感じなくなると若松先生は説明していました。
バレニクリンは飲み薬なので、副作用の吐き気が辛くて中断してしまう人もいるとのことです。服用の際には、しっかり食事をとって、大量の水と一緒に服用すると良いそうです。それでも、吐き気がひどい場合は、量を減らしたり、吐き気止めを併用したりするとのことです。吐き気の他にも便秘、眠気、怖い夢、意識障害、うつなどの副作用が出る場合があると若松先生は説明していました。
バレニクリンは処方箋が必要ですが、ニコチンパッチは市販されているものもあります。
ニコチネル パッチ20 14枚 STEP1【第1類医薬品】
http://www.nicotinell.jp/p_otc/p_product/patch.html
また、禁煙のイライラを抑えるためにニコチン入りのガムも市販されています。
【指定第2類医薬品】ニコチネル
ニコチネル
どちらも、禁煙目的以外では使用しないようにとのことです。
医師や看護師の喫煙指導
医師や看護師の喫煙指導では、タバコへの依存度のチェックや禁煙の意欲・目的、心の準備などについて話をするそうです。また、患者は禁煙宣言書にサインをするとのことです。さらに、どうしてもタバコを吸いたくなったときのアドバイスなどを受けることができます。
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まとめ
自力での禁煙の成功率は1割にも満たないのですね。35歳未満や35歳以上でも長年喫煙を続けている人やヘビースモーカーの人には、禁煙治療に健康保険が適用されるということなので、自力での禁煙に何度も失敗している人は、ぜひ禁煙治療に挑戦してみてくださいね。