つらい便秘にお悩みの方は、食事やマッサージ、お薬などさまざまな方法を試して、便秘と闘っていらっしゃることと思います。
しかし、それでも「なかなか解消しない…」という方も多いのではないでしょうか。
つらい便秘を根本的に解消するためには、「大腸の動き」がポイントになります。
大腸が正しい動きを取り戻せば、約8割の人は便秘を改善させることができるそうです。
今回は、便秘になる仕組みやその改善方法、改善した後の予防方法まで紹介していたNHK『ガッテン!』をまとめておきたいと思います。
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大ぜん動
大腸の動きには「大ぜん動(だいぜんどう)」というものがあるそうで、これが便秘の有無に大きく関わっているそうです。
意外かもしれませんが、私たちが目覚めて活動している日中、大腸は寝ています。
逆に、夜になって私たちが眠りにつくと、大腸は目覚めて活発に動きだすのですが、そのときに起こる大腸のダイナミックな動きを「大ぜん動」と呼びます。
川崎医科大学総合診療科医長の楠裕明氏によると、大ぜん動は「腸の半分くらいから肛門にかけての部分が、ダイナミックに収縮している。まるで歯磨きチューブをぐいと絞るような動き」だそうで、ミミズやヘビなどが這って進んでいくときの動き(=ぜん動)と似た動きであるためにこの名がつけられているそうです。
そして、夜間に大腸が大ぜん動を起こすかどうかが、便秘になるかならないかの分かれ目になっており、楠氏によると「大ぜん動は夜のごくわずかのチャンスにしか起こらない」といいます。
昼間でも生じるふつうの「ぜん動運動」は、大腸の壁から栄養や水分を効率吸収するための動きです。大腸の向きを変えて効率的に栄養素などを吸収するための動きで、この動きによって食べたものは2〜3センチほど動いていくそうです。
一方、夜間にのみ起こる大ぜん動は、ぜん動運動の200倍の活発さだそうで、番組で流れていた映像で見ると、まるで川の流れのように、大腸内の食べ物が一気に流れていっていました。
このように、大ぜん動は夜のうちに大腸の内容物を直腸まで運ぶために特化した動きなので、これがちゃんと起こって内容物が直腸まで運ばれていると、翌朝便意をもよおすことになります。
これで、大ぜん動と便秘の関係がおわかりいただけると思います。
大ぜん動は、脳が寝て副交感神経が優位になると起きるようになります。
ですから、寝る直前に食事を摂ったり熟睡できていなかったりすると、副交感神経が優位にならず、大ぜん動は起こりません。
「不規則な生活は便秘になる」と言われるのも、このためです。
しかし、「規則正しく寝ているし、寝る前に食べたりしていないのに便秘だ」という方もいらっしゃるでしょう。
近年の研究から、大ぜん動を止めてしまう便秘の“真犯人”が居ることがわかってきたそうです。
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便秘の原因
その“真犯人”を突き止められる機械があります。
これは、行岡病院の行岡秀和氏がおよそ30年かけて開発したものです。
行岡氏は麻酔科医で、手術後の患者の体調管理に役立つと考えて開発したそうです。この機械を開発した動機について行岡氏は、「麻酔薬は腸管を完全に止めてしまうが、麻酔が覚めると腸はどんどん動いてくる。その際に、どういうふうに回復してきたかを診るのが大事なので」と語っていました。
患者が食事をとれるほどまで回復しているかどうかを確認するためのこのモニターは、実はおならを計測する「オナラモニター」なのです。
オナラに含まれる水素を検出し、回数を計測することで、腸の活発度を確認するそうです。
そして、便秘の“真犯人”が実はオナラだそうで、このオナラモニターを応用すれば、健康な人と便秘の人の違いをわかりやすく見ることができるそうです。
ということで、オナラモニターを用いた実験をしてみると、便秘でない健康な人は1日に7回も(昼2回夜5回)おならを出していたのですが、便秘で悩む人は1回もおならをしていませんでした。
この結果は、便秘とおならの関係をよく表しています。
ガスが大腸の中に溜まって出ないことは、便秘の大きな原因となるのです。
東邦大学総合診療・急病センターの渡邉利泰氏によると、「大ぜん動を止めるのは、大腸内のガス。ガスは口から入る空気以外にも、腸内細菌が食べ物を分解するときに出てくるガスがあり、具体的には水素ガスやメタンガスなどがある。これがたまってくるとお腹が張ってきて、大腸の動きが遅くなる。特にメタンガスは大腸の動きを遅くする作用が報告されている」とのことでした。
さらに、便秘になると便や内容物が腸内細菌と触れている時間が長くなるので、より多くガスを発生するようになり、よけいお腹が張ってしまいます。すると大ぜん動が起きづらくなるので、もっと便秘が悪化する…というように、便秘の“負のスパイラル”が起きてしまうのです。
健康な人と便秘の人の大腸内のガスを見比べてみると…
左が健康な人で、右が便秘の人の腹部です。
黒い部分がガスなのですが、便秘の人の腹部には大きく膨れ上がった黒い部分が確認できます。
この事実から、便秘というのは大腸内に便とガスが溜まっている状態であることがわかりました。
ということは、ガスを抜くことで便秘を改善できるということになります。
次は、大腸からガスを抜いて便秘を解消する方法を見ていきましょう。
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大腸のガスを出す運動
便秘の解消には「うつ伏せ」が有効だそうです。
うつ伏せのポーズをとることで、約8割の人の症状が改善するというのです。
番組では、頑固な便秘である女性4人が実験を行いました。
- 本を読んだりスマホをいじったりしながら、10分間うつ伏せの姿勢をとり続けます。
- 10分経ったら、右に左にゆっくり転がる動きを5往復行います。
たったこれだけで、1日の分は終わりです。時間にすると15分ほどで済んでしまいます。
被験者4人が2週間この運動を続けた結果、全員が便秘の改善を実感したそうです。
以前、飲食店で食事をした帰りに腹痛になってしまい、意識を失って救急車に運ばれたという重度の便秘に悩んでいたAさんは、「ガスが出るようになった実感がある。便の量も若干増えた」と話していました。
おなかが張るというFさんは「便がすっきり出るようになった」と話し、Kさんは「2週間で体重が3キロ減った」と喜んでいました。
Sさんも「それまでは10日間くらい出なかったが、7日、5日、4日…というように、便が出るまでの期間が縮まってきた」と話していました。
うつ伏せが便秘解消に効くのは、その姿勢を取ると直腸が上を向くためです。
ガスは空気よりも軽いので、上を向いた直腸の出口の方へ向かっていくのです。
また、床にお腹をつけることで腹部を圧迫する効果もあります。(おへその上あたりに座布団などを当てながらうつ伏せになるとより良いそうです。)
10分後に左右にごろごろと動くのは、腸の内容物やガスを動かす目的です。
行うタイミングは、寝る前がオススメです。
食後すぐ行ってしまうと食べたものが食道の方に逆流する可能性があるので、食後2〜3時間は避けるようにしましょう。
高齢者や体の不自由な人は、身体に負担がかからない範囲で続けてみるとよいでしょう。
腹部を圧迫するという意味では、『”の”の字マッサージ』も効果的です。
大腸の形にあわせて、お腹にひらがなの「の」を書くようにマッサージしていき、大腸を刺激するマッサージ方法です。
どこでもできるので、気がついたときにやってみてはいかがでしょうか。
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病気が原因でなる便秘もある
ある水泳選手は、オリンピックの1年前あたりから急に激しい下痢と体調不良に襲われるようになりました。本人によると「おなかがくだったり熱が出たりして、練習を途中で上がってトイレに駆け込んだりすることもあった」といいます。
病院で診てもらったところ、「潰瘍性大腸炎」と診断されました。
この病気になると大腸の働きが大きく乱れてしまい、大腸内の傷口から出る膿や血が、ゼリーのようになって便に混ざったりするそうです。
原因は不明ですが、ストレスや食生活が引き金と言われています。
この選手は、診察の際に自分の携帯電話で撮影した便を医師に見せたため、正確かつ迅速に診断することができたそうで、担当した医師も「軽いうちに診ることができたのがよかった」と話していました。
早期発見のおかげもあって、この選手はオリンピックでメダルを獲得することができました。
もし、便秘や下痢があって便に似たような異常がある場合は、すぐに病院で診てもらいましょう。
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便秘解消の食事
便秘になると食物繊維をたくさん取るようにするという方も多いでしょう。
しかし、食物繊維がかえって便秘を悪化させるということもあるそうです。
食物繊維をとると便のボリュームが増えるため、ぜん動運動が活発になって、便秘の“予防”には効果があります。
しかし、便やガスがたまってパンパンになっている状態で食物繊維を摂ると、食物繊維が分解される際に発生する大量のガスによって便秘がより悪化することがあるというのです。
すでに便秘になっている方は、まずはおかゆやうどんなどの消化吸収の良い炭水化物を摂るようにして、うつぶせ寝などを実行して便秘が解消してから、食物繊維を摂るようにしましょう。
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まとめ
便秘の根本的な解消には、ストレスの解消や生活を規則正しくすることが必要ですが、なかなか難しいですよね。
それでも、うつぶせ寝とゴロゴロ動きを実施するだけで8割の人が改善に向かうというのは、嬉しいことだと思います。
オナラモニターで1回もおならが検知されなかった方も、この運動を実行したあとに再度実験すると、夜間に3回もおならが計測されたそうです。
お悩みの方は、うつ伏せ寝+ゴロゴロ動きを寝る前の習慣にしてみてください。