痛風の予防と治療~ビール・おじさん・贅沢病の誤解~チョイス@病気になったときより

ある日突然、激痛として現れる「痛風」
主に足の親指の付け根に腫れと痛みが現れ、それが数日〜数週間も続きます。
現在、日本では約100万人が発症しており、予備群まで含めると約1000万人もいると言われているそうです。
しかし、痛風に関しては誤解を持っている人も多いようです。
たとえば「痛みを我慢すれば良い」と考える人も多いですが、痛風は悪化すると命を脅かす大きな病気を引き起こすこともあります。
今回は、痛風に関する情報を紹介していた『チョイス@病気になったとき』を中心に情報をまとめていきたいと思います。

 

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痛風は、健康な人でもなる

Hさん(50歳男性)は小学生から柔道を続けていて大きな病気もなかったため、健康には自信がありました。しかし、30代半ばの頃から「足がだんだん痛くなってきた」といい、ある日趣味の釣りを楽しんでいたとき、靴に小石が入ったような感じを覚え、数時間後には足がパンパンに膨らみ大変な痛みがでてきたそうです。
翌日も治まらなかったため病院へ行くと、医師から「たぶん痛風でしょう」と言われたそうです。

痛風とは

痛風の原因は血液中の「尿酸」という物質です。肝臓でプリン体を分解する時に生み出される物質で、余分なものは腎臓の働きによって尿として排泄されるのですが、何らかの原因で尿酸の排泄がうまくいかなくなると血液中の尿酸が増えてしまい、やがて固まり、結晶になることがあります。

足の指の関節などにできた結晶が剥がれると、白血球はそれを異物とみなして攻撃を始めるため、炎症が起きて痛みと腫れが引き起こされるのです。
これは多くの場合、足の親指の付け根で起こります。

チョイス@病気になったときより

さらに尿酸が増え続けると、皮膚の下にも結晶が溜まってコブのように膨らみます。
その結果、関節が変形する痛風結節になってしまいます。

チョイス@病気になったときより

血中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると「高尿酸血症(血液に尿酸が増えている状態)」と呼ばれ、治療が必要になります。東京女子医科大学付属膠原病リウマチ痛風センター教授の谷口敦夫氏によると、痛風患者はほとんどが高尿酸血症になっているそうです。

高尿酸血症の人全員が痛風になるわけではないそうですが、数値が7.0を超えると痛風になりやすくなることがわかっており、値が高くなれば高くなるほどリスクが上がるそうです。

尿酸値は男性の方がもともと高い傾向にあります。女性は女性ホルモン「エストロゲン」の作用によって尿酸値が上がりにくいのですが、閉経後はその作用がなくなるため尿酸値が上がりやすくなります。

痛風に深い関わりのある尿酸ですが、尿酸値が高いと痛風以外の病気も進行しているかもしれません。

プリン体と尿酸について

人間の体内では古い細胞の核が分解される際などにプリン体が生じます。体は新陳代謝を繰り返していますから、生きているだけでプリン体は産生され続けます。

さらに、体内のエネルギー産生に関わっているATP(アデノシン三リン酸)はエネルギーを発するとADP(アデノシン二リン酸)になり、その後再利用されているのですが、激しい無酸素運動などを行ってADPが過剰になると再利用が追いつかなくなり、使われなかったADPはプリン体に分解されます。

このようにして体内で生成されたプリン体は、肝臓で尿酸に分解されて排出されるため“老廃物”であると考えられてきました。
しかし近年、腎臓を通過する尿酸の90%近くが体内に再吸収されていることに何らかの意味があると考えられるようになってきたそうです。

尿酸が体内で果たす役割の一つに「抗酸化作用」があります。
杏林大学医学部薬理学教室教授の櫻井裕之氏によると、人間の体内に生じた尿酸は、活性酸素やフリーラジカル(※)から酸化を引き受けて「アラントイン」という物質に変化することで、体内の酸化ストレスを軽減させているといいます。

プリン体と尿酸、痛風の関係については以前の記事(http://kenkouiji.info/?p=6183)でも触れていますので、参考にしてみてください。

※フリーラジカル…他の原子や分子と反応して電子を奪い取り、相手の物質を酸化する力が強い分子。

参考:
体内におけるプリン体(アサヒビール)
尿酸は本当に「悪玉」か(m3.com)
食べ物だけじゃない!体内でも作り出されるプリン体(スキンケア大学)

痛風の影で進んでいること

痛風の治療は痛み止めを服用することから始めますが、痛みが引いたからと言って痛風が治ったというわけではありません。再び尿酸の結晶が出来ないように、尿酸値を下げる薬を飲み続けなければなりません。

しかし、Hさんは服用を途中でやめてしまいました。
「年上の人を見ると珍しくない病気。みんな笑いながら痛風について話しているので、痛風を軽く見ていた」というHさんは、その後3回も痛風発作を繰り返してしまったそうです。

しかし、3度目の発作の際に医師から「クレアチニン値」を指摘され、意識が変わりました。

チョイス@病気になったときより

クレアチニン値からは、腎臓の機能がどれだけ保たれているかを知ることができます。健康な人なら0に近い数値になるのですが、Hさんは「1.18」でした。腎臓の機能が低下し始めていることを示していました。

腎臓は関節に次いで尿酸の結晶が溜まりやすい場所なので、尿酸の量が増えると腎臓の中に結晶が増えて、機能が低下してしまうのです。

医師から「腎臓は悪くなると治らない」と言われたHさんは考えを改めて、毎日欠かさずに尿酸値を下げる薬を飲み続けるようになったそうです。

谷口氏は「尿酸は腎臓から出されるので、尿酸値が高いと腎臓には負担がかかる。痛風患者には動脈硬化の人も多いので、それも相まって腎機能が悪くなる」と解説していました。

先述の通り血中尿酸値が高いからといって必ず痛風発作が出るとは限らないため、自覚症状がないままいつの間にか腎臓の機能が悪くなっていることもあるということです。自覚症状がない人ほど「自分は健康だ」と思っているため健康診断を受ける機会も少なくなり、事態が深刻化しやすいという問題があります。

知らないうちに腎機能が低下していては大変ですから、血液検査などで尿酸値の異変が見つかった場合は必ず医師の判断を仰ぎ、尿酸値を下げる薬を飲み続けるなどの対処をするようにしましょう。

痛風の人で発作を繰り返していない場合でも、一度痛風発作を起こした人は尿酸値が上がりやすい生活になっている可能性が高いので、まったく油断はできません。尿酸値が上がりやすい生活を続けると尿路結石もできやすくなり、さらに血圧が高い人も多いので動脈硬化にもつながるなど、さまざまな弊害が引き起こるかもしれません。

尿酸値を下げる方法

Uさん(47歳男性)は6〜7年前、朝起きた時に足の親指の付け根が痛くなったのをきっかけに痛風に悩まされるようになりました。

原因には心当たりがありました。当時はお酒を大量に飲み、食事も肉中心だったそうです。

医師に「薬は飲みたくない」と相談すると、食生活の改善を指導されたそうです。

尿酸値を下げるには、食物に含まれるプリン体に注意をする必要があります。

プリン体は肉や甲殻類、魚卵に多く含まれるのでこれらの摂取を少なめにし、調理にも工夫を施すようになりました。「野菜中心に切り替え、肉を食べたいときには、(プリン体が水によく溶ける性質を活かして)下茹でしてから食べるようにした」そうです。プリン体が流れ出やすくするために肉などには切れ目を入れて下茹でをするという徹底ぶりです。

その結果、8.7だった血中尿酸値を5.7の正常値まで引き下げることに成功しました。

主治医は「この生活習慣なら値は上がらないと予想している。上昇に転じ始めたときには相談したいと考えている」と話していました。

Uさんは、痛風をきっかけに健康に対する意識も変わったそうです。

「痛風になっていなかったら同じ生活を続けて、もっと怖い病気に突然なっていたかもしれない。痛風がきっかけで健康に気をつけようと考えることができたので良かった」と前向きに話していました。

プリン体が含まれている食品

ビールにはプリン体がたくさん含まれているというイメージが持たれていますが、実際は…

・ビール350ml…プリン体12〜20mg
・やきとり1本(鶏もも肉80g)…プリン体98mg

実は、やきとり1本にはビール1缶の4倍以上のプリン体が含まれているのです。

下図は、高尿酸血症の人が注意すべき食品をまとめたものです。

チョイス@病気になったときより

※「納豆」が含まれていることからもわかるように、大豆やブロッコリー、きのこ類などの野菜にもプリン体は含まれています。ただし、谷口氏によると、野菜や豆類に含まれるプリン体は痛風にはあまり関係がないので、そこまで心配する必要はないそうです。

このように気をつけるべき食品はたくさんありますが、谷口氏は「プリン体を完全に避ける食事は不可能だし、逆に栄養バランスも悪くなる」と指摘していました。

プリン体は、その量に気をつけることが大切です。

健康な人が1日に処理できるプリン体の量は1日400mgです。これを超えないように意識して、超えてしまったら翌日は注意して超過が連続しないようにするべきだそうです。

谷口氏は「痛風発作はプリン体が全ての原因ではないので、この程度の意識でいることが続ける秘訣」と話していました。

食物繊維と摂るとプリン体の吸収が抑えられるという報告もあるといいますから、食事に取り入れるとよいでしょう。

 

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プリン体だけじゃない、尿酸値に影響を与える物質

・果糖
果物や清涼飲料水に含まれる「果糖」は、肝臓で分解する際に尿酸値を上昇させることがわかっているそうです。

・アルコール
お酒はどんな種類でも尿酸値を上げる働きがあるので、ビールさえ避ければいいというわけでもありません。適量を心がけましょう。

食事が与える尿酸値への影響はわずか2割ほどではありますが、毎日摂るものですから影響はバカにできません。コーヒーや乳製品(特に低脂肪乳製品)、ビタミンCには尿酸値を下げる作用がありますから、工夫して取り入れるようにすると良いでしょう。

食事以外にも下げる方法が

Yさん(43歳男性)は7年前に最初の痛風発作が現れました。以後も定期的に発作が出るようになってしまったそうですが、いつも痛みをやり過ごすだけで、治療をやめてしまっていたそうです。

しかし1年前、お子さんが生まれたことをきっかけに治療を決意し、ダイエットを始めたそうです。毎日の通勤を電車から片道40分の自転車通勤に変え、空き時間にはジョギング30〜40分を週2〜4回行った結果、体重を88キロから75キロまで減らすことに成功しました。

尿酸値も8.7から6.8に下がり、痛風発作も現れなくなったそうです。

体重と尿酸値の関係

尿酸は腎臓から排出されますが、尿になるのは腎臓を通過する尿酸の10%ほどで、残りはまた体に戻っていきます。体に戻す際にはインスリンという血糖値を下げるホルモンが作用しているので、肥満でインスリンが増えると尿酸が体に戻りやすくなってしまいます。内臓脂肪が多いと尿酸値が高いこともわかってきたそうです。

肥満は高血圧や高脂血症を合併しやすいので、動脈硬化が進みやすくなり、狭心症や心筋梗塞につながりかねないため、肥満は解消すべきです。

運動を始める際は、急に激しい運動をするのではなく、全身を使う有酸素運動から始めましょう。(有酸素運動は尿酸値を上げにくく、無酸素運動は尿酸値に悪影響を与えるという研究結果もあります。)

2日に1回行えるとベストだそうですが、現実的には難しいので、日常生活の中で階段を使ったりやや早足で歩いたりなどの工夫をするようにしましょう。

尿酸値を下げる薬

痛風発作を繰り返す人は尿酸降下薬が処方されます。

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尿酸値を下げる薬には以下の様なものがあるそうです。
◯アロプリノール
(商品名ザイロリック、アロシト-ルなど)
◯フェブキソスタット
(商品名フェブリク)
◯ベンズブロマロン
(商品名ユリノ-ムなど)
◯プロベネシド
(商品名ベネシット錠など)痛風財団HPより

一般的には生涯飲み続ける必要があります。関節の中の固まりがとれるのに数年はかかるそうです。

ただし、尿酸値が6.0以下になり、生活習慣もしっかりと改善させられていれば服用をやめる、という判断になることもあるそうです。

 

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まとめ

今回は痛風に関する間違った常識をメインに紹介されていました。
現在痛風に悩まされている方も、発作を抑えるために尿酸値を下げることで、大きな病気のリスクまで下げることができると考えれば、前向きに生活習慣等の改善に取り組めるかもしれません。
痛風はとてもつらい病気ではありますが、大病になる前の “サイン”でもありますから、それをしっかりと活用していきましょう。

 

 


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