「沈黙の臓器」という異名を持つ肝臓。
病気になっても自覚症状がほとんど無いことからそう呼ばれています。
病気のまま放置しておくと脂肪肝から肝炎、肝硬変、肝臓がんというように、どんどん進行していってしまいます。飲酒をしない人でも脂肪肝から肝炎になってしまうことがあるそうで、その患者数は推定400万人とも言われているそうです。
しかし、早い段階で病気を発見することができれば、その悪化を食い止められるといいます。
今回は、肝臓を病気から守る方法を紹介していた『チョイス』をまとめておきたいと思います。
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肝臓について
肝臓は「人体の化学工場」とも呼ばれ、代謝や解毒を担う大切な臓器です。
成人男性の場合は体重のおよそ50分の1である約1.2キロもあり、体積としては人体の中でいちばん大きいそうです。比べてみると、胃よりも大きいのです。
チョイスより
肝臓疾患の第1段階である脂肪肝の患者数は現在約2000万人と言われているそうです。冒頭にも述べたとおり、脂肪肝は自覚症状がないまま肝硬変や肝臓がんへと進行してしまう可能性があります。
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肝臓の検査
建設関係の仕事をしていたIさん(76歳男性)は、32歳のときにお母さんを肝臓がんで亡くした経験があり、肝臓を気にした生活していたそうです。
たとえば、亡くなったお母さんは日本酒をグイグイ飲んでいたため同じような行為は控えていたIさんでしたが、それでもビールは毎日のように飲んでいたそうで、多いときには10本ほど飲むこともあったそうです。
そんなIさんの肝臓に異常が見つかったのは60歳のときでした。
高血圧で通い始めた病院での血液検査で、肝機能の働きをしめす「γ-GTP」が(基準値73以下のところ)471という結果が出てしまいました。
アルコールとγ-GTPはどのような関係があるのでしょうか。
アルコールが肝細胞に入ってくるとアルコール分解酵素によって分解され、その際にγ-GTPが一緒に作られます。アルコールが大量に入ってくるとそのぶんγ-GTPが大量になり、血管に流れ出てきてしまうため、この値が高くなるのです。
Iさんの471という値は肝臓病の疑いがあるほど高い数値であり、このとき既に脂肪肝であったと考えられます。
脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまってしまった状態です。
肝臓はおもに解毒と代謝の働きを持っています。解毒は、飲酒によって入ったアルコールを酵素の働きによって無害化し体外に排出する働きで、代謝は、食事として摂った糖質や脂肪を中性脂肪にして蓄え、必要なときにエネルギー源として放出する働きです。
ほどよい量の飲酒であればこれらが上手に働くのですが、アルコールが大量に入ってきてしまうと、肝臓は解毒作用にかかりきりになってしまうため、中性脂肪が肝臓に蓄積されたままになってしまうのです。
そんな大変な状況になっていたにもかかわらず、Iさんは自覚症状がないことや、γ-GTPの値がそれ以上上がらなかったこともあったということで「これも自分の体質だろう」と考えてしまい、飲酒習慣を変えることなく続けてしまったそうです。
その結果、8年後にはγ-GTPの値が640にまで急上昇してしまいました。
さすがに心配になったIさんが肝臓の専門医のいる病院で精密検査を受けると、3センチほどのがんが見つかったそうです。
すでにアルコール性脂肪肝だったにも関わらず酒を飲み続けたため、肝臓の脂肪が増え続け、肝細胞が破壊されて炎症を起こし、肝炎になったと考えられます。それから組織が固く萎縮し肝硬変という状態になり、その一部ががん化したのです。
幸い早い段階で見つかったので治療することができ、以後Iさんは飲酒していないそうです。
武蔵野赤十字病院の泉並木氏によると、「(血液検査で異常が見つかっても)酒を控えれば大丈夫だろうと考えて油断する人が多い」そうです。
血液検査でわかるのは、主に以下のような項目です。
チョイスより
ALTやASTなどは、肝細胞に含まれる酵素です。肝機能に異常があると血液中に流れ出て数値が高くなります。
総タンパクは肝臓で作られるたんぱくの総量です。
アルブミンは肝臓だけで作られるタンパク質で、肝機能が低下すると量が低下します。
総ビリルビンと総コレステロール、血小板も肝臓の働きに関わっているため、これらの数値を組み合わせて見ることで、肝臓の状態を推測することができるそうです。
特に重要なのはALTとAST、そしてγ-GTPです。
ALTとASTは主に肝臓に含まれる酵素です。肝細胞がアルコールで壊されると血液中に漏れ出るため、肝障害の有無を知ることができます。
このふたつは肝臓の障害の度合いに応じて血液に漏れ出す量に差が生じるため、肝臓の状態を知る重要な指針になるのです。
このふたつの数値の出方から推測される肝臓の病気は、以下のようになります。
チョイスより
一番下の肝臓がんについての表記は、両方の数値が上がることも片方だけが上がることもあるという意味だそうです。
これに加えてγ-GTPの数値を見ることで、より多くのことを読み取れるようになります。
γ-GTPは1週間ほど飲酒をやめると正常値に戻るため、ふだん飲酒している方が血液検査を受ける際は、検査前に断酒しないようにしましょう。ありのままの、正しい検査結果を得るために必要なことです。
お酒の適量
泉氏が示した、1日に飲んでも大丈夫なお酒の量の目安は以下のようになります。
チョイスより
これらの量は「どれかひとつ飲むとしたら一日これだけ」という意味なので、組み合わせて飲むと過剰になってしまいます。
厳密には、「将来肝臓が悪くならないという安全域を示したもの」だそうで、3倍以上の酒量を5年間毎日飲んでいる人を「過剰飲酒」と呼んでいるそうです。
休肝日について
泉氏によると、休肝日は必要だそうです。
「飲酒してから肝臓が酒の影響を処理しきるのに24時間かかる。ずっと飲んでいると肝臓が休む暇がないので、週に2日は休肝日を」とのことでした。
また、年に1回は血液検査で肝臓のチェックをするようにすべきだそうです。
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肝臓の精密検査
Hさん(50代男性)は缶ビールを毎日3本飲んでいます。
血液検査ではALTが少し高めに出ているだけだったので大丈夫だと思っていたそうですが、番組で精密検査を受けることになりました。
まず受けたのはエコー検査です。
超音波で肝臓の大きさや形、表面の凹凸を調べて、腎臓と比較することで判断を下します。正常ならば映像の肝臓と腎臓は同じ色で見えるといいますが、Hさんの画像を見ると肝臓の方だけ白っぽくなっていました。これは肝臓に脂肪が溜まっていることを示すそうで、これを見た医師によって脂肪肝と診断されていました。
次はMRエラストという検査です。
機械で肝臓に振動を与えて、肝臓の固さを調べるものです。
下図は肝硬変の人の画像です。
チョイスより
硬い部分(赤で示されている部分)が多いですが、Hさんは…
チョイスより
全体的に柔らかいことがわかります。肝硬変ではありませんでした。
これらの精密検査の結果から、泉氏はHさんに対して「脂肪肝の段階で運動・食事療法をしていくように」と勧めていました。
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お酒を飲まなくても脂肪肝になる
飲酒をしない主婦のSさんは、4年前の血液検査で異常が見つかりました。ASTとALTが基準値をはるかに超えていたそうで、その後受けたエコー検査で脂肪肝であることが発覚しました。
体内に取り入れられた脂肪は肝臓でエネルギー源に変換され、全身に送り込まれます。しかし、カロリーオーバーの食生活をしている人は、他の臓器の表面に内臓脂肪が溜まってしまうそうです。すると、そこから常に肝臓に脂肪が供給され、エネルギーに変換できなかった脂肪が肝臓にたまり、脂肪肝になってしまうのです。
医師から「運動すれば肝臓の脂肪が落ちる」と言われたSさんはウォーキングを始めたそうですが、1週間に1〜2回短時間行うだけでした。しかも食事も改善しなかったため、血液検査の数値も高いままでした。
3年後、「肝生検」という、腹腔鏡で肝臓の映像を見ながらお腹に針を刺して肝臓の組織をとり、それを顕微鏡で調べる検査を受けたところ、非アルコール性脂肪性肝炎「NASH(ナッシュ)」であることがわかりました。生活習慣をあまり改善しなかったため、NASHに進行してしまっていたのです。
脂肪肝になった肝臓はたまった脂肪を燃やそうとする過程で活性酸素を発生させるため、肝細胞を傷つけて炎症が起きてしまうそうです。この状態がNASHで、いずれ肝硬変に進む可能性もあり、発がんのリスクも高まることになります。
現在は週3日30分のジム通いをかかさず、間食もしないようにしているそうで、体重も減少していっているそうです。
近くにジムがなかったり、自分で運動したいけど何をどうしたら効率的にできるのかわからないような場合は、ソネトレのようなインターネットを利用したパーソナルトレーニングという方法もあります。
筋トレやランニング、ウォーキングといった運動を自分専属のトレーナーのアドバイスを受けながら行うことができます。
料金もジムに通うことを考えれば格安ですし、ソニーグループの運営ですから怪しいところではありません。
NASHを治す薬はまだないため、食事療法と運動が重要です。
血液検査で
・ 血小板の値が低い
・ 「肝線維化マーカー」が高い
という傾向が出ると、NASHの可能性があります。
肝生検では、血液検査ではわからない、単純な脂肪肝かNASHかの見極めが可能です。
下図はNASHの人の肝臓です。白い部分が脂肪です。
チョイスより
「風船用腫大」という腫れ上がった状態も見られます。
チョイスより
その中のピンク色の部分はマロリー体と呼ばれ、これもNASHの特徴だそうです。
脂肪肝の10〜20%の人がNASHに進行すると言われています。さらに、6〜7年で肝硬変に、そのうち2〜3割の人が肝臓がんに進行してしまいますので、早期治療が重要です。
ただし、急激なダイエットは逆に肝臓にダメージを与えてしまうそうです。ダイエットの目安は1ヶ月に1〜2キロほどの減少で、運動を取り入れることが重要です。
痩せている人は脂肪肝にはなりにくいそうですが、偏った食事はよくありません。運動を生活に取り入れることも重視しましょう。
ウイルス性肝炎
B型・C型肝炎などのウイルス性肝炎の検査は、通常の血液検査の項目には入っていません。
これらの専用の検査は無料で受けられる自治体もあるので、市区町村に問い合わせてみると良いでしょう。
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まとめ
「沈黙の臓器」と呼ばれる所以と、その怖さがよくわかる特集でした。
血液検査で異常が出たら必ず精密検査を受けるようにして、食事や運動習慣を見直すようにしましょう。