近年、日本一の長寿県である長野県で、人間ドックに大きな変化が起きました。
検査項目の中に「歩行姿勢検診」という、歩くときの姿勢を分析する検査が加わりました。
ひざなどの関節の負荷を視覚化し、自分にあった歩き方の指導が可能になりました。
その背景には、平均寿命は男女ともに全国1位であるにもかかわらず健康寿命は1位ではないという事情があるそうです。
ひざ痛というと大したことはないように聞こえますが、寝たきりにつながる重要な疾患です。「長時間歩くと痛い」「イスから立ち上がるときに痛い」「階段を降りるときに痛い」などの“ひざ痛予備群”を含めると全国で約3000万人も膝痛に悩む人いるそうです。
そこで今回は、座ったままできるひざ痛予防法やひざ痛ホルモンに関する解説、さらにはひざの軟骨が再生する治療法まで紹介していた『健康カプセル!ゲンキの時間』をまとめておきたいと思います。
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ひざ痛予備群
以下のうち、膝に最も負担がかかる行為はどれだと思いますか?
B,片足で立つ
C,座っている
正解はAの「階段を降りるとき」です。
ひざにかかる負荷は体重の約5倍にもなるそうです。
このように、時と場合によってひざに痛みが生じるような“ひざ痛予備群”の実情を調べるために、番組では慶應義塾大学病院の理学療法士・今井覚志氏とともにある会社に赴いて調査していました。その会社は少し特殊で、9時に出勤して翌朝9時まで仕事をするという勤務形態の会社でした。
社員のAさん(43歳男性)は「今年5月から左ひざに痛みが出てきた」そうで、「階段で歩くとひざの外側が痛い」と話していました。その話を聞き、触診をした今井氏は「変形性膝関節症の初期になっていく可能性がある」と診断しました。
ひざ関節の表面は軟骨に覆われていて衝撃を和らげていますが、この軟骨がすり減るとむき出しの骨がぶつかって痛むようになります。Aさんは165センチ、80キロとやや太り気味でひざへの負荷が大きいことが一因となっていると見られます。
しかし、今井さんが着目したのは体重だけでなく、「勤務中に座りっぱなしで膝を動かさないこと」でした。
今井氏によると座っているときは「滑液(関節液)が全く動かない状態になっている」といいます。
潤滑油のような役目を果たす関節液が循環できなくなると酸素や栄養が滞り、炎症が起きてしまうそうです。長時間の運転や飛行機での移動、キッチンで立ちっぱなしでいるときなどに生じるひざの痛みも、同じ理由で起きていると考えられています。
・テニスボールでひざ痛予防
椅子に座った状態でテニスボールを床において、足の裏でボールを転がします。
膝が適度に動くので、関節液が滞りにくくなります。左右交互に30分に1回やるようにしましょう。
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ウォーキングをしているのに
社員Bさん(46歳男性)は「長時間歩くと右ひざの裏が痛む」そうです。
1日8000〜10000歩のウォーキングを行っているというBさんの歩くフォームを見た今井氏は、がに股で歩いていることを指摘した上で「膝周りの筋肉が弱いかもしれない」と話していました。
実際に筋力を測定すると、外転筋が弱いことがわかりました。
歩く動作は、最大筋力の10%以下しか使われていないため、どんなに歩いても筋トレにはならないそうです。
そして、筋力不足になるとバランスを崩しやすくなり、ひざが左右にブレるようになってしまいます。そこで足を開いて安定させる姿勢が身についたと考えられます。
がに股歩きはひざ関節の内側に負担がかかることになるので、軟骨が削れてしまいます。電車でふらつきやすかったり、靴の外側がすり減っていたりすると外転筋が弱っているサインだそうです。
・外転筋を鍛えるトレーニング
足を少し開いてベルトでひざを縛り、左右に広げるように力を入れて10秒キープします。
10回1セットで1日3セットを目安にして行いましょう。
変形性膝関節症のリスクは女性の方が高いそうです。
原因は筋力の弱さや骨の形の違いと言われています。
女性は積極的にこのトレーニングを行うようにしましょう。
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筋力のバランスから
社員のCさん(46歳男性)は40代に入った頃から痛みを感じるようになったそうです。階段の昇り降りで痛むようになり、正座もできなくなってしまいました。
今井氏によると変形性膝関節症の初期症状だそうです。
様々な足の筋力を測定してみると、大腿四頭筋の筋力は強いのに他の筋力が弱い状態になっていたようです。
太ももの裏側のハムストリングが弱かったようです。
このような筋力のアンバランスが膝の痛みの原因になっていたのです。
この4つの筋力のどれかが弱いとバランスが崩れるそうです。自己流の運動やスポーツが筋力のアンバランスを招きます。
このバランスを取って筋肉をつければ、進行を遅らせることができるそうです。
フィットネス用のゴムバンドの端を机の脚と自分の足にくくりつけて、ハムストリングを意識しながら机の脚を引くように動かします。
10回1セットを1日3セットが目標です。
慶應義塾大学スポーツ医学総合センターの松本秀男氏によると、「筋力がアンバランスになるとひざに均等に力が入らない。半月板を痛めたり変形性膝関節症が進んだりする」といいます。
サッカーやゴルフ、野球などの片足だけを使う競技をやる人はアンバランスになりやすいので、反対側の筋力も鍛えるようにしないといけないそうです。
・筋力バランスチェック
片足立ちでバランスをチェックしましょう。
手を軽く広げて、足を少しだけ上げます。この状態を1分以上キープできれば問題ありません。
足をついたり、大きくふらついたりしたらバランスが崩れている証拠だそうです。
ひざ痛を引き起こすホルモン
高知大学の池内昌彦氏によると、ひざ痛を起こすホルモンである「アディポカイン」というものがあるそうです。脂肪から分泌され、動脈硬化や高血圧に関係すると言われているホルモンだそうです。内臓脂肪からも分泌されるので、一見太っていない人でもまったく油断できません。
しかし、池内氏によると「ひざ関節に良い効果を与えるマイオカインというホルモンもある」そうです。有酸素・無酸素運動問わず筋肉を鍛えるほど分泌量が増えるそうです。脂肪を分解することでアディポカインの分泌量が減ってひざの痛みの改善につながるので、一石二鳥です。
これらのホルモンについてはまだ研究段階なので、今後の研究の進展が期待されます。
ひざ軟骨を再生させる最新治療
変形性膝関節症は軟骨がすり減ることで起こるので、再生できれば治ることになります。しかし、軟骨は一度すり減ると再生しないというのが常識でした。
東海大学医学部付属病院の佐藤正人氏は「軟骨再生シート(細胞シート)」を使う研究を進めているそうです。
薄い膜が細胞シートです。患者の正常な部分の軟骨を採取してそこから細胞を取り出して培養し、厚さ0.2ミリのシート状に加工して、膝の軟骨がすり減ったところに貼り付けます。すると、シートが特殊なタンパク質を出し続け、軟骨を作る細胞が活性化し、軟骨が再生するといいます。
番組で取材に答えていた高校教師の男性は「ひざが曲がりにくく(剣道部での指導で)動きが緩慢になってしまっていた」そうです。
そんな男性の治療前後のひざの骨の様子を見比べてみると…
1年で再生していることがわかります。
こちらもまだ研究段階だそうですから、その進展が期待されます。
※同大学での臨床研究の受付は終了しているそうです。問い合わせはご遠慮くださいとのことでした。
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まとめ
同じようなひざの痛みでも、原因は関節液や筋力のアンバランスさなどさまざまあることがわかりました。
ご自身に思い当たる原因がないかどうかを考えて、紹介されていたトレーニング法などを実践してみてはいかがでしょうか。