先日の『きょうの健康』では、手指の痛みとしびれについて特集されていました。手指がしびれる場合に考えられる病気の種類やその原因などについて詳しく伝えられていました。
解説をするのは、整形外科で手指の病気やけがの診療が専門の、横浜労災病院の三上容司副院長です。
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複雑な手指の構造
手指は、主要なものだけでも27の骨でできています。特に手首の付け根周辺は小さな骨が集中していることがわかります。
きょうの健康より
これらの骨を動かすことができるのは、筋肉と骨をつなぐ「腱」というひも状の組織があるからです。骨が腱により引っ張られることで骨・関節が動くしくみですが、骨が腱から離れないように、ところどころで「腱鞘(けんしょう)」というバンドのような組織で押さえられているそうです。
きょうの健康より
加えて神経が各指に枝分かれしています。このように手指は大変複雑で精密にできていますが、このため、さまざまな病気があるといいます。
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手指がしびれるケース
一口に「手指がしびれる」といっても、さまざまな病気の可能性が考えられるようです。
<手指のしびれ・痛みがある>
手指にしびれと痛みがあると、「手根管(しゅこんかん)症候群」の可能性があるそうです。初期には痛みが強く、進行するとしびれだけになることが多いとのことです。
「しびれだけの場合は、「脳卒中」や「糖尿病」、「首の病気」など、手以外の病気の可能性がある。」
と三上副院長は解説します。
脳卒中の場合
体の片側にだけしびれが出る。麻痺やろれつがまわらないといった症状も出たら脳卒中の可能性があるので、躊躇することなく救急車を呼ぶ
糖尿病の場合
進行すると末梢神経に障害が出て、手以外に足にもしびれが出る しびれは体の片側ではなく左右対称に出る
首の病気
顔を上に向けた状態で首を左右に倒し、首を右に倒すと右手、左に倒すと左手のしびれがひどくなると、首の病気の可能性がある 具体的には「頚椎症」や「頚椎症性神経根症」など、加齢とともに首の骨が変形して神経を圧迫する病気
この3つに当てはまらないのに手指のしびれがあれば、手根管症候群の可能性が考えられるとのことです。
きょうの健康より
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手根管症候群とは
手根管とは手のひらの付け根にあり、手首の骨と靭帯に囲まれたトンネル状の部分で、「正中神経」と9本の腱が通っています。
その腱を覆う膜が炎症を起こして腫れると正中神経が圧迫されるのが手根管症候群だそうです。小指以外の、正中神経が関わっている残りの指にしびれが出ます。
きょうの健康より
手根管症候群の原因はわかっていないものの、妊娠・出産期・更年期の女性に多く、女性ホルモンの乱れが関係しているのではないかと考えられているそうです。また手首の骨折やスポーツ、手の使いすぎが原因だとも言われています。
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指がカクンとはねるケース
指を伸ばそうとすると痛み、カクンとはねるのは、腱鞘炎が少し進んだ状態である「ばね指」の特徴的な症状なのだそうです。
きょうの健康より
ばね指について三上副院長は、
「指の使いすぎが発症に関わっていると言われている。パソコンでの作業や楽器の演奏など、手指を使う人がよくかかる。たかが腱鞘炎だと放置していると、関節が硬くなって指が伸ばせなくなることもある」
と注意を喚起します。
<ばね指発症のメカニズム>
ばね指の発症には腱と腱鞘が関係しているそうです。通常では腱は腱鞘の中をスムーズに動くことができますが、何らかの原因で腱鞘が厚くなったり硬くなったりすると、腱の通りが悪くなり、腱の一部に炎症が起こって腫れてしまうといいます。
きょうの健康より
すると腱の腫れた部分が腱鞘にひっかかり、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなります。それでも指を伸ばそうと強い力を加えると、腱の腫れた部分が腱鞘を通るときにカクンとなってしまうのだそうです。
腱鞘炎にはばね指の他に、手首の腱鞘に炎症が起こる「ドケルバン病」というものもあるそうです。ドケルバン病の症状は手首の腫れと痛みで、つまんだり握ったりといった動作を行うことで痛みが増すとのことです。
指がまっすぐ伸ばせないケース
痛みで指がまっすぐ伸ばせないという症状は、骨折などの外傷の場合もあるものの、そうでない場合は「変形性関節症」や「関節リウマチ」が疑われるとのことです。
変形性関節症とは
変形性関節症は、骨と骨の間の関節に変形が起こり、そのことで指がまっすぐ伸ばせなくなる病気だそうです。画像の赤い丸の部分が、変形が起こってまっすぐにならない箇所です。
きょうの健康より
指が曲がる原因ですが、健康な関節は骨の表面を軟骨が覆い、クッションの役割をしているのに対し、変形性関節症ではその軟骨がすり減って靭帯がゆるみ、骨同士がぶつかる状態になっているといいます。
食い込んだ骨が削れて「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる骨の棘ができ、そのため関節が変形して指が曲がって伸ばせなくなるそうです。
きょうの健康より
三上副院長は、
「妊娠・出産期・更年期の女性が多く、女性ホルモンのバランスの乱れや体質が軟骨に影響を与えていると言われている」
とコメントしました。
関節リウマチとは
きょうの健康より
指がまっすぐ伸ばせないという点では変形性関節症と同じですが、指が伸ばせなくなる関節に違いがあるそうです。
第一関節が伸ばせない→変形性関節症
第二関節が伸ばせない→変形性関節症でも関節リウマチでも起こる
第三関節が伸ばせない→親指が曲がらないのが変形性関節症で、親指以外が曲がらないのが関節リウマチ
きょうの健康より
第二関節が伸ばせない症状が起こっている場合ですが、関節リウマチの関節のふくらみはやわらかいのに対し、変形性関節症ではふくらみが硬いので、そこで両者の見極めができるとのことです。また血液検査でも関節リウマチと変形性関節症では反応に違いが出るそうです。
どの科を受診すればいいのか
三上副院長は、
「指の変形がある場合は、整形外科、手外科、そして内科系ではリウマチ内科、膠原病内科を受診するとよい」
と指示していました。
膠原病内科とはどういう診療科なのか、そしてなぜ指の変形で膠原病内科なのかについて調べてみました。
こちらのサイト(http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~rheum/kougennbyou.html)によると、特定の臓器が障害されるのではなく、「全身の『結合組織』が病変の主座」である疾患群を「膠原病」と呼んでいるようです。膠原病は原因不明の疾患であり、関節リウマチは古典的膠原病である6疾患のうちのひとつだとのことです。
関節リウマチと関連があるので、指の変形の状態に応じて、関節リウマチが疑われれば膠原病内科を受診するとよいということのようです。
まとめ
単に指の痛み・しびれと言っても、病気の種類によって症状はさまざまだということがわかりました。
三上副院長は、
「しびれだと命に関わる脳卒中の可能性があるので注意が必要だが、命に関わらない場合でもあきらめて治療を受けないでいると、治らなくなることがある。自分の症状を見極めて早めに受診してほしい」
と呼びかけていました。
加齢が原因のことが多いようですが、ホルモンバランスの崩れた女性や、パソコンや楽器の使いすぎでも手指の痛み・しびれがくるとのことで、意外と誰にでも起こる可能性がありそうです。少しでも気になる症状があれば、三上副院長のコメントのように、早めに受診したいものです。