認知症と聞くとアルツハイマー病を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は認知症にはいくつかの種類があるそうです。先日の「きょうの健康」では、アルツハイマー病の次に患者数の多い血管性認知症について認知症の診断と治療が専門の岡山大学大学院教授の阿部康二先生(神経内科医)が分かりやすく説明していました。
ポケット版神経内科検査・処置マニュアル
阿部 康二
認知症の種類と患者数
2012年に厚生労働省が実施した調査によると日本には推計で462万人の認知症患者がいるそうです。そのうちの7割近くがアルツハイマー病で2割が血管性認知症です。そして、残りの約1割強はレビー小体認知症(20万人以上)、前頭側頭型認知症(5万人以上)、正常圧水頭症(1万人以上)などの患者だと番組で紹介していました。
きょうの健康より
阿部先生によると、どの認知症も悪化すると寝たきりになってしまうので早期発見をして対処をする必要があるとのことです。
認知症の行き着く先が寝たきりというのは案外意識されてないところかもしれませんが、脳の機能の低下ということであれば納得です。
2つのタイプの血管性認知症
血管性認知症の原因となる病気は、脳卒中と脳小血管病だそうです。
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脳卒中が原因の血管性認知症
脳卒中が原因の血管性認知症は、脳梗塞で脳の血管が詰まったり、脳出血で脳の血管が破けたりして脳の細胞が死んでしまったために発症するとのことです。下の画像の赤く囲んである部分が脳梗塞と脳出血の病巣です。
きょうの健康より
脳卒中の場合には、半身のまひ、ろれつが回らない、フラフラするなどの症状が出るので、すぐに病院で治療を受けるのが大切だそうです。
脳小血管病が原因の血管性認知症
脳小血管病は、脳のごく細い血管が詰まってしまったり、破れてしまったりする病気です。40歳以上であれば脳の中に1、2箇所はあるのですが、とても小さいのでほとんどの場合は症状が無い(無症候性)そうです。けれども、加齢や生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)が原因で脳小血管病が悪化すると血管性認知症になると阿部先生が説明していました。
きょうの健康より
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血管性認知症の症状
血管性認知症の症状は、脳梗塞や脳出血が原因で大脳皮質からの命令を体に伝える経路(白質)が断線してしまうことで起こるそうです。この断線によって体に命令が伝わるのに時間がかかるようになってしまうために、前まではスムーズに出来ていたことの段取りができなくなってしまうそうです。そして、症状が少し進行すると白質から記憶を司る部分へ連絡をすることが出来なくなってしまいもの忘れが発症するとのことでした。
血管性認知症とアルツハイマー病のもの忘れには違いがあります。
血管性認知症
行動の一部だけを忘れてしまう
アルツハイマー病
行動そのものを忘れてしまう
例えば、血管性認知症の場合は食事をしたことは覚えているけど、おかずの数品が思い出せない、アルツハイマー病の場合は食事をしたことを忘れてしまうといった感じですね。
それから、脳からの指令が体に伝わるのに時間がかかるため、ほとんどの動作がゆっくりとなるとのことです。
きょうの健康より
さらに症状が悪化すると、言葉を発することが減って塞ぎ込むようになることが多くなるそうです。そして、感情をコントロールできなくなり、突然怒ったり、泣いたり、笑ったりするようになるとのことです。
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血管性認知症の検査方法
もし血管性認知症の症状が疑われる場合は、脳卒中の有無によって対応を決めるとよいそうです。
脳卒中を発症したことがある人
そのときの担当医に相談する
脳卒中を発症したことがない人
もの忘れ外来、神経内科、精神科、脳神経外科を受診する
血管性認知症の検査には、問診、記憶力を調べるテスト、脳画像検査(CTやMRIなど)があるとのことです。脳卒中ではない70歳以上の人には脳ドック(費用:4万から10万円)を脳卒中の人は定期的な脳の画像検査を阿部先生は勧めていました。
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血管性認知症の治療方法
血管性認知症の治療には脳卒中の再発を防ぐためのものと脳小血管病の進行を防ぐためのものがあります。どちらの場合もまず生活習慣の改善から始めるそうです。
それでも十分でない場合には、薬物治療が行われるとのことです。また、認知症そのものの症状(意欲低下、うつ、不安感、注意欠落など)を改善するためには、脳循環改善薬、脳代謝改善薬などの薬物治療があります。最近では、薬に頼るだけではなく、認知リハビリテーションとして料理やフラワーアレンジメントなど手先を動かす作業で症状の改善を図るという治療法もあるそうです。
まとめ
認知症イコールアルツハイマー病だという認識が広く浸透しているので、認知症にいくつかの種類があることに驚く人も多いのではないでしょうか。認知症は、もの忘れがひどくなるだけではなく悪化すると寝たきりになってしまうとのことなので、健康的な生活習慣を身につけて、認知症を予防したいですね。