先日の『チョイス』では、のどの痛みやつまりの特集をしていました。石井正則(JCHO(ジェイコー)東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科部長)がのどの代表的な病気「扁桃炎」の仕組みや予防法、扁桃炎以外でのどに症状が出る病気の解説をしていました。のどの病気を放っておくと死に至ることもあるそうです。のどの病気や予防法について、この機会にしっかり確認しておきましょう。
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扁桃炎の仕組みと症状
急性扁桃炎はカゼなどの細菌が原因で、のどの入り口付近にある口蓋(こうがい)扁桃が炎症を起こす病気だそうです。扁桃が赤く腫れあがり痛みを感じる、高熱が出る、物が飲み込みにくくなるといった症状が出ます。
チョイス@病気になったときより
急性扁桃炎を何度も繰り返すのことを、慢性扁桃炎または習慣性扁桃炎といいます。番組のインタビューを受けていたBさん(35歳男性)は、5年ほど前からカゼをひくたびに扁桃炎を発症しているそうです。
チョイス@病気になったときより
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扁桃炎の悪化「扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうしょう)」
扁桃炎が悪化すると周辺にも炎症が広がります。そして炎症部分に「うみ」が溜まってしまう病気を扁桃周囲膿瘍というそうです。Bさんも、1年ほど前にこの病気を発症しました。扁桃周囲膿瘍によるのどの痛みは、これまでの扁桃炎とは違う痛みだったとのことです。横になったときにのどの腫れでのどがふさがれ、呼吸が苦しくてあまり眠れなかったとBさんは話していました。
扁桃周囲膿瘍の治療では、注射でうみを吸い出すそうです。
チョイス@病気になったときより
それでもうみが吸いきれない場合は、切開をすることもあると石井先生が説明をしていました。
さらに重症化して、うみが息をするところまで広がると呼吸困難になることも。また、細菌が全身に広がって敗血症になると命に危険が及ぶ場合もあるそうです。そうなる前に医師の手当を受けることが寛容です。
扁桃炎の原因
免疫機能の一部である扁桃が炎症を起こすのは、細菌と戦っているからだそうです。扁桃炎になる原因の多くは「カゼ」。カゼをひいて鼻が詰まると口呼吸になりますよね?すると口の中が乾燥して細菌が増え、扁桃が炎症を起こします。口呼吸で口の中が乾燥するのは、だ液の量が少なくなってしまうからだそうです。だ液には免疫機能があるので、量が少なくなると免疫機能が低下します。ゆえに細菌が増加してしまうわけです。
また、疲れや寝不足による免疫機能の低下も扁桃炎の原因になると石井先生が解説していました。
扁桃炎になりやすい人
扁桃炎になりやすいのは、口呼吸をしている人だそうです。お酒の飲み過ぎでも、鼻がつまるので口呼吸になりがち。また、タバコを吸う人、虫歯を放置していて口の中が不衛生な人も扁桃炎になりやすいとのことです。
また、慢性扁桃炎の人は免疫機能が低下しているので、少しのきっかけでも炎症が起きてしまうと石井先生が説明していました。
扁桃炎と口臭の関係
慢性扁桃炎は「口臭」の原因にもなるそうです。口蓋扁桃には、陰窩(いんか)や腺窩(せんか)という小さなくぼみがたくさんあります。そのくぼみに、膿栓(のうせん)という「うみ」のかたまりが溜まると口臭が発生するのです。
チョイス@病気になったときより
原因が扁桃にあるとは気がつかずに、口臭に悩んでいる人が多いと石井先生は話していました。
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慢性扁桃炎の治療法
慢性扁桃炎の治療は、薬または手術だそうです。患者の状況や状態によって治療法が選択されます。
●薬による治療
扁桃炎の治療には、消炎鎮痛薬や抗菌薬などの飲み薬が処方されます。内科の治療で扁桃炎が改善しない場合は、のどの専門である耳鼻咽喉科で治療を受けることになります。Bさんもかかりつけの内科医から耳鼻咽喉科の受診を進められました。耳鼻咽喉科では、直接のどに薬を塗る治療、吸入ネプライザー治療(液体の吸入薬)など専門的な治療が受けられるのです。
●扁桃摘出手術
扁桃摘出手術では、炎症を繰り返す口蓋扁桃を摘出。炎症のもとを切り取ってしまうので、慢性扁桃炎がほぼ完治するそうです。全身麻酔をするので手術中は痛くないのですが、術後3,4日は痛いとのこと(鎮痛剤で痛みを抑えることが可能)。1週間の入院が必要なこともあり、手術を選択する人は少数。Bさんもかかりつけの耳鼻咽喉科医から手術を勧められました。けれども、経費や手術後のことを考えて手術は受けませんでした。
扁桃摘出手術と免疫機能
扁桃には免疫機能があります。けれども、口蓋扁桃を摘出してしまっても、免疫機能に影響はないそうです。人間には見えていない部分にも4つの扁桃があります。ですから、口蓋扁桃を摘出しても、他の扁桃が免疫機能を補ってくれるとのことです。
チョイス@病気になったときより
手術で扁桃炎を治したほうがよい場合
薬で治療をすることもできる慢性扁桃炎ですが、手術を選択するべき場合もあります。
例えば、最近では薬に抵抗する細菌が増えていて、これまで使っていた薬が効かなくなるという場合があるそうです。そのようなケースは手術で扁桃を摘出するそうです。
こどもの扁桃炎の手術
子どもは免疫機能が完成していないので、5、6歳までは扁桃摘出手術は行わないというガイドラインがあるそうです。けれども、頻繁に発熱をしたり、扁桃の腫れがひどく睡眠時無呼吸症候群になったりしている場合などは手術をすると石井先生は説明していました。
扁桃炎が原因で起こる全身の症状
扁桃の免疫機能は、リンパを介して全身の免疫機能とつながっているそうです。それで、扁桃炎を何度も繰り返していると、体の他の部分にも細菌が広がり「扁桃病巣感染症」を発症することがあります。番組では、扁桃炎が原因の骨、手・足、腎臓の症状を紹介していました。
●骨
扁桃炎が原因で、鎖骨や胸骨が炎症を起こして痛みだすことがあるそうです。
チョイス@病気になったときより
ひどくなると腕が上がらなくなったり、痛みで物が持ち上げられなくなったりすることもあると石井先生が説明していました。
●手・足
扁桃が原因で手や足に赤いぶつぶつや水ぶくれができます。正式な病名は「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」だそうです。
チョイス@病気になったときより
皮がボロボロとむけたり、かゆみを感じたりします。
●腎臓
扁桃が原因で腎臓が痛む病気は、「IGA腎症」だそうです。悪化すると腎機能が低下して、腎不全になることも。人工透析をすることになったケースも報告されていると石井先生は話していました。
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手軽にできる扁桃炎の6つの予防法
番組ではマスク、うがい、加湿、手洗い、マフラー、のど飴で効果的に扁桃炎を予防する方法を紹介していました。
●マスクは2枚重ね
のどを守るために、マスクを2枚重ねて使うのが石井先生のお勧め。2枚重ねて使うと加湿機能が高まるそうです。2枚の使い捨てマスクの間に、霧吹きで水をかけたガーゼを挟んで使うとさらに保湿効果がアップ。上のマスクで下のマスクをカバーすれば、見た目もマスクを2枚しているようには見えません。
マスクの交換は1日に2回から3回。ガーゼが乾いたら交換することを心がけましょう。
●鼻うがい
石井先生によると、口うがいに加えて、鼻うがいをすると扁桃炎の予防になるそうです。鼻とのどの間はつながっているので、鼻うがいをすると鼻の奥に残っている細菌などを洗い流すことができます。鼻うがいは扁桃炎だけではなく、花粉症の予防にも効果的とのことです。
鼻うがいが痛いという人は、正しいやり方をしていない証拠。水道水を使うなど適当な方法でするのではなく専用の洗浄機を使用すれば痛くないと石井先生は話していました。最近では大手の製薬会社も鼻うがいの関連商品を発売しています。
鼻うがいは、専用の洗浄機と洗浄液を使って正しい方法で行いましょう。
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●加湿
のどを乾燥から守るために、湿度は40%から60%に保つのが良いそうです。
●手洗い
手を洗うことで手から口へ細菌が入るのを防ぐことができます。
●マフラー
扁桃炎の予防にはのどを冷やさないことが重要。ですから、寒いときはマフラーを巻いた方が良いそうです。全身の保温にもなります。
●のど飴
のどが少し痛いときにのど飴をなめるのは、薬に頼らない方法としては効果的だそうです。飴をなめて、唾がたくさん出ると免疫機能が高まると石井先生が解説していました。
扁桃炎以外でのどの痛みやつまりの症状がでる病気
のどの痛みやつまりの原因は、扁桃炎だけではないそうです。ストレス、ぜんそく、咽喉頭酸逆流症(逆流性食道炎)、がん(下咽頭がん・咽頭がん)などが、のどの痛みやつまりを引き起こしていることも……。
番組では、逆流性食道炎(咽喉頭酸逆流症)によるのどの痛みやつまりに悩んでいたMさん(53歳男性)へ病気の経過をインタビューしていました。
咽喉頭酸逆流症(いんこうとうさんぎゃくりゅうしょう)とは?
胃酸が食道へ流れ込んで炎症を起こし、胸やけなどの症状がでるのが「逆流性食道炎」。Mさんの場合は、胃酸がのどの入り口まで上がってきて炎症を起こしていたので、「咽喉頭酸逆流症」でした。
Mさんは胃の痛みを感じたのは数年前。その痛みがだんだん食道まで上がって、そして、のどぼとけの下のほうまで広がったのです。扁桃腺は治療で治していたので、なぜのどが痛むのか見当がつかなかったとのこと。次第に、のどのつまりも感じるように、意識していないとはっきりと言葉を発することができず、家族や会社の人に聞き返されるようになったそうです。
咽喉頭酸逆流症の検査と治療法
耳鼻咽喉科で、のどの奥のつまりなどについて調べるときは「経鼻(けいび)内視鏡」が使われるそうです。
チョイス@病気になったときより
経鼻内視鏡は、鼻の穴から差し込み、のどの奥の状態を手軽に診察できます。また患者への体の負担も小さく、検査結果もすぐにわかるとのことです。
Mさんも、石井先生の耳鼻咽喉科で内視鏡検査を受けました。食道への入り口付近が赤く充血していたので、咽喉頭酸逆流症だと診断されました。
その後Mさんは胃酸を抑える薬で治療をして、のどのつまりや胃の痛みがなくなったとのことです。
のどの痛みやつまりが長く続いているとき、微熱が一週間以上続くときは耳鼻咽喉科を受診することを石井先生が勧めていました。
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まとめ
扁桃炎の予防には、保湿をしてのどを乾燥から守ることが重要。今回番組で紹介されていた扁桃炎の予防法は、普段していることに少し手を加えるだけのものが多かったです。そして、のどの痛みが長く続いているときは「そのうち治るだろう」と放っておかないで、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。