声のかすれが大動脈瘤の初期症状!?~ガッテン!より

声のかすれが気になるときはありませんか?
声のかすれに関連しては、当サイトでも「声帯萎縮」や「咽頭がん」などを紹介したことがありますが、他にも“意外な病気”の影響でかすれ声になることがあるようです。

声のかすれ~老化?ガン?〜『チョイス@病気になったとき』より

その意外な病気というのは「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)」という病気で、ほとんど痛みを感じることなく進行し、ある日突然、血管が破裂して死んでしまうこともあるという大変な病気です。
症状が出るときにはもう手遅れで、病院に到着する前に死亡してしまうこともあるそうです。

胴体のあたりで起きている病気が、どうして声のかすれを引き起こすのでしょうか。
その理由を知るために、まずは大動脈瘤について正しい知識を得ておきましょう。

 

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大動脈瘤について

私たちの心臓からは「大動脈」という血管が出ています。
大動脈は血液を全身に送り出すためのとても太い(直径2〜3センチの)血管なのですが、ここにいつの間にか大きな瘤(コブ)ができてしまうことがあります。これを「大動脈瘤」といいます。
多くのケースでは自覚症状がないままどんどん膨らんでいき、破裂して大変なことになったときにはじめて気づく、ということになるそうです。
瘤ができる場所はさまざまで、上の方(心臓に近い方)にできる瘤を「胸部大動脈瘤」、下の方にできる瘤を「腹部大動脈瘤」と、分類して呼ぶそうです。

「多くのケースでは」と述べましたが、大動脈瘤の診療ガイドラインに掲載されている情報によると、腹部大動脈瘤の場合は12%の人に「腹痛」の症状があったそうです。
さらに、年間の手術件数が約1万件にもなるという胸部大動脈瘤患者のうち21%の人には「声のかすれ」があったそうです。
もちろん、声のかすれはすべて大動脈瘤のサインというわけではありませんが、大動脈瘤のわかりやすいサインとして覚えておくと、大惨事に至る前に気づくことができるかもしれません。

 

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風邪でもないのに声がかすれる…

かすれ声になるのは、のどの奥にある声帯に原因があります。
声帯が閉じている時に息を吐くと声帯が振動し、音が鳴ります。これが声です。
そして声を出し終わったり、息を吸ったりするときには声帯が開いています。
この原理を知れば、かすれ声になるのは声帯の開閉に問題があることがお分かりになると思います。

かすれ声が気になって病院を受診したところ大動脈瘤が見つかったという実例が、『ガッテン!』にて紹介されていました。
東京都港区の総合病院・山王病院には声を専門に診る「ボイスセンター」があり、プロの歌手まで訪れるそうです。
ここでは声帯を内視鏡で観察し、大動脈瘤と関係のある異常を発見することができます。

ガッテン!より

神奈川県のHさん(83歳男性)はグラウンドゴルフをやるなど「大きな病気にかかったこともない」という健康体でした。ところが2年前のある日、電話を受ける際に声のかすれが気になったそうです。風邪の諸症状などもなかったため不思議に思ったそうですが、3ヶ月経ってもかすれたままだったため心配になり、耳鼻咽喉科を受診したそうです。
するとそこで医師から「私の手には負えない」と言われてしまったそうで、専門病院を紹介されたそうです。Hさんが医師に対して「では1回帰ってから(専門病院へ)行きます」と告げると、「ダメ!このまま行きなさい」と厳しい調子で言われるほど、病状は深刻だったそうです。
紹介された川崎幸病院でCTを使った精密検査を行ったところ、6センチ以上の動脈瘤が見つかりました。

ガッテン!より

血管の3倍くらいの大きさで、すぐに手術が必要な状態でした。

なぜ、耳鼻咽喉科のお医者さんは声帯を見ただけで大動脈瘤の存在を知ることができたのでしょうか?
その理由を見ていきましょう。

 

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キケンなかすれ声と、そうでないかすれ声の違い

声帯が正常である人は、声帯が開くときはしっかりと開き、閉じるときはぴったり閉じるという感じで、声帯の開閉にメリハリが付いています。

ガッテン!より

しかし、キケンなかすれ声の人は、声帯がちゃんと閉じません。

声帯を閉じさせているのは、脳からの司令です。
「反回神経」という神経を伝わって司令が届くのですが、その神経は大動脈の下を経由して声帯につながっているので、大動脈瘤ができてしまうと神経を圧迫して麻痺させてしまい、脳からの指示を声帯にまでしっかりと伝えることが出来なくなってしまうのです。(このような経路で神経がつながっているので、大動脈瘤ができて生じる異常は声帯の左側にだけ出るそうです。)
「声のかすれがあった腹部大動脈瘤患者は21%」という調査結果だったのは、神経が通っている付近に大動脈瘤がある場合にしか声のかすれが生じないためで、反回神経から少し離れた場所に瘤ができてしまった人だと、声のかすれが生じず、さらに気づくことが難しくしまうようです。
(※ちなみに、二日酔いのときに声がかすれるという経験のある方も多いと思いますが、二日酔いによる声のかすれはむくみによって声がかすれてしまうだけであって、当然ではありますが、大病の心配はありません。)

・反回神経が遠回りしている理由
なぜ反回神経はこんなに遠回りして声帯までつながっているのでしょうか?
反回神経が大動脈の下を経由しているのはキリンも同じだそうで、そのためキリンの反回神経は4メートル以上もあるといいます。
どう考えても不自然に思えますが、4億年程前に生きていた私たちの祖先は、こうはなっていませんでした。
私たちの祖先が海の中に生活していたころ、すでに心臓も大動脈も存在していました。進化の過程で陸に上がる準備として、(この進化の過程には諸説あるそうですが、)空気を取り入れるために体内に肺がつくられました。
そして、水中にいる間に肺に水が入らないように、肺の入り口を開いたり閉じたりできるような仕組みも出来ました。

ガッテン!より

やがて完全に陸上で生活するようになり、立った姿勢で生きるようになると…

ガッテン!より

結果的に、大動脈付近を遠回りして声帯へとつながるようになったのです。
(右側の反回神経は、右の鎖骨のあたりを経由して声帯につながっているそうです。)

キケンな声のかすれかどうかを確かめるには…

大動脈と声帯は位置的にも離れていますから、意外に感じた方もいらっしゃるかと思います。
ところが、国際医療福祉大学の渡邊雄介氏によると、この関係は随分と前から知られていたそうです。

渡邊氏によると、キケンなかすれ声の目安は以下の2点だそうです。

・ 原因に心当たりがない
・ 声のかすれが1週間以上続く(または、悪化していく)

上記に該当する場合は、「あー」という発声を10秒以上し続けられるかを試してみるといいそうです。片方の神経が麻痺していると声帯がきっちり閉まらなくなり、声を一息で長く出すことが出来なくなるため、判断できるんだそうです。
大きく息を吸って、楽に出る声の高さで、楽な声量でやっても10秒以下しか続かないとしたら、何か病気が隠れているという可能性を考えましょう。

このテストを行う際のポイントは、以下の通りです。

・ まず楽な姿勢を取る
・ 息を吸うときは思い切り吸う
・ できるだけ長く「あー」と発声する

ちなみに、小さな声でも大丈夫とのことでした。
声がかすれてしまうのは老化が原因ということもあるそうですが、このテストをやってみて10秒続かないようであれば耳鼻咽喉科を受診することが勧められていました。

※声のかすれを引き起こすその他の病気
以下のような病気で声がかすれることもあります。

・ 甲状腺の悪性腫瘍(がん)
・ 肺がん
・ 食道がん

ガッテン!より

他にも、こんな病気や原因でかすれ声になることがあるようです。

・ 声帯炎
・ 声帯結節
・ パーキンソン病
・ 橋本病(慢性甲状腺炎)
・ アナフィラキシーショック

声帯炎や声帯結節などは「当然」という感じですが、パーキンソン病などは意外というか、とても怖い感じがしますよね。
いずれにしても、体に不自然な異変が生じた場合は病院で診てもらうようにすると良いでしょう。

声のかすれを治すトレーニング

ここからは、加齢によって生じる声のかすれを回復させるトレーニングについて見ていきましょう。
番組に登場したIさん(79歳男性)は数年前から、声帯やその周りの筋肉が衰えて声がかすれるようになってしまったそうです。
そこで病院を受診し、「音声治療」という治療を始めました。

ガッテン!より

ある高さからある高さへ徐々に音を上げていき、それから巻き戻しのように徐々に音を下げていく、という発声を繰り返す治療です。
シンプルな治療ですが、どこの病院でも受けることができるわけではない専門的な治療だそうです。

近くにこのような治療を実施している病院がない場合、渡辺氏は「1日1曲、好きな歌をうたう」ことを推奨していました。
歌をうたうときは様々な高さや音の声を出すので、声帯の筋肉を使うことができます。
(しかも、ストレス解消にもなりそうですよね。)
声を大きく出し過ぎたり、張り上げ過ぎたりすると逆に痛めてしまうので注意しましょう。

まとめ

今回ご紹介したような知識を知らないままでいたら、お腹のあたりが痛んだり、検査で何かの数値が高くなったりでもしなければ、病気の可能性を頭に浮かべることは難しかったと思います。
さまざまな病気がかすれ声を引き起こすということを頭の片隅にでも置いておくと、いつか身を助けることになるかもしれませんね。


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