がん検診の種類やメリット・デメリット~アミノインデックス検査・J-START等~あさイチより

がんは、日本人の2人に1人が発病し、日本人の死因第1位の病気です。近年、がんは早期発見をすれば治るケースが増えきています。けれども、
「(検診を受けるのが)怖い」
「時間がない」

などの理由から、がん検診を受診していない人は多いようです。
先日の『あさイチ』では、がん検診の特集をしていました。がん検診のメリットやデメリット、最新の検査方法などを斎藤博先生(国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部部長)が解説していました。

 

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がん検診の大きな誤解

「がん検診」でがんが見つかると思っていませんか?
実は、がん検診は、がんを見つける検査ではないそうです。健康な人を対象に、がんの可能性が高いかどうかを検査します。がん検診で陽性だった場合に精密検査を受けて、本当にがんがあるかを調べるのです。ですから、がん検診で陽性だったとしても、がんだと決まったわけではありません。

 

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がん検診のメリット

以前は、がんは治すことができないイメージでした。けれども、医学の発達によって、がんは早期に発見すれば、治すことも可能になってきています。

ある調査によると、早期発見での5年生存率は、

胃がん・・・94.9%
乳がん・・・98.7%

とのことです。ですから、がん検診を受けるメリットは、がんを早期発見できることです。

番組では、昨年6月に乳がんと診断されたSさん(44歳女性)にインタビューをしいていました。

がん検診を定期的に受診する重要性

Sさんは、10年前に職場の健康診断で、胸に腫瘤(しゅりゅう)というしこりが見つかりました。それからは、半年に1度乳がん検診を受けていたそうです。ただ、その後の検査では異常なしが続いたので、自分はがんにはならないだろうと思い込んでいたとのこと。
フラダンスを週に5回するなど健康に自信があったこと、がん家系ではないことが、自分はがんにはならないとSさんが考えていた理由です。

Sさんは、2015年11月に胸に強い痛みを感じて、病院で検査を受けました。このときも結果は異常なし。けれども、半年後に改めて超音波検査を受診すると、右胸に新しいしこりが発見されました。その後の精密検査(MRI検査や乳房内の組織を切り取る組織診)の結果、早期の乳がん(ステージ1) と診断されました。

1度「異常なし」と診断されると、安心して検診にいかなくなってしまう人もいます。けれども、Sさんは定期的に検診を受けていたことで、がんが早期に発見され、手術で切除することができました。

 

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国が推奨するがん検診

国が受診を推奨している検査は、検診を受けたことによって死亡率が下がるということが実証されているものです。現在、国が推奨しているがん検診は6種類あります。

●胃 …受診年齢:50歳以上、受診間隔:2年に1回
胃がんの検診として推奨されているのは、X線検査と内視鏡検査です。胃がんによる死亡率は検診を受けないよりも、X線検査を受けることで59%、胃内視鏡検査を受けることでは30%下がるという調査結果があります。
X線検査のほうが内視鏡検査よりも死亡率が大きく下がるのは、X線検査のほうが長期間の研究データがあるからだと斎藤先生が説明をしていました。以前は、X線検査を勧めていましたが、現在はどちらの検診も勧めることができるとのこと。自分に合った検査を選ぶようにするといいそうです。
●大腸 …受診年齢:40歳以上、受診間隔:1年に1回
大腸がんの検診として推奨されているのは、便潜血検査です。採取した便に、目に見えないほど微量の血液があるかどうかを調べます。この検査を受けることによって、大腸がんによる死亡率が60%下がるそうです。
●肺 …受診年齢:40歳以上、受診間隔:1年に1回
肺がんの検診として推奨されているのは、胸部X線検査です。この検査を受けることによって、肺がんでの死亡率が28%下がるとのことです。
●乳房 …受診年齢:40歳以上、受診間隔:2年に1回
乳がんの検診として推奨されているのは、マンモグラフィです。この検査を受けることによって乳がんでの死亡率は25%下がるそうです。
●子宮けい部 …受診年齢:20歳以上、受診間隔:2年に1回
子宮頸がんの検診として推奨されているのは、細胞診です。この検査を受けることによって子宮頸がんでの死亡率が78%下がるそうです。他の検診に比べて、かなり効果があるようですね。

あさイチより

その他のがんについては、まだ有効な検診方法(死亡率を下げる)がないと斎藤先生が説明をしていました。

がん検診の費用

がん検診の受診を推奨されている年齢と時期の人には、地方自治体から補助金が出ます。ですから、比較的安い金額で検診を受けることができるのです。補助の金額は、自治体によって異なるので、番組ではがん検診の費用(自己負担額)の全国平均を紹介していました。

●胃  X線検査:1,505円、胃内視鏡検査:3,116円
●大腸 便潜血検査:584円
●肺  胸部X線検査:527円
●乳房 マンモグラフィ:1,291円
●子宮けい部 細胞診:1,396円

 

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がん検診のデメリット

斎藤先生によると、がんは水に浮かぶ氷山に例えられるそうです。

あさイチより

水面の上は、がんの症状があること、水面の下は症状がないことを表しています。

がん検診では、健康な人(その時点では症状がない人)を対象に検査をします。早期がんの中には、一生症状の出ないものもあります。検診を受けたことによって、本来治療しなくてもよいがんまで治療することになるというデメリットがあります。本来は治療しなくてもいいがんだったとしても、がんと診断されれば多くの人が精神的ダメージを受けてしまいます。つまり、余計な不安を与えてしまうことがあるのもがん検診のデメリットなのです。

また、がんは症状が出てから治療しても助かるものもあるとのことです。
ですから、検診を受けることによって、がんから助かったという証明がある検診を受けるのが大切だと斎藤先生は説明をしていました。

そして、がん検診が100%ではないということも知っておく必要があります。番組の視聴者からのFAXでは、がん検診ではがんが見つからなかったのに、その後、末期のがんが発見されて助からなかったというものがありました。がん検診で異常がなくても、体に異変を感じたら、医療機関を受診するようにしましょう。

最新のがん検診の研究

現在、国で推奨されているがん検診は、1つの検診で1種類のがんの可能性しか検査することができません。短期間に全ての検診を受けるのは、とても大変ですよね。
現在、日本国内で「だ液」と「尿」を使って1度に数種類のがんの検診をする方法の研究が進められています。
●だ液
慶応義塾大学と東京医科大学では、だ液の代謝物から大腸がん、肺がん、乳がん、すい臓がん、口腔がんを発見する研究をしているそうです。

●尿
九州大学では、尿を使ったがん検診の実用化へ向けた研究をしています。線虫(せんちゅう)という体調1㎜ぐらいの犬よりも嗅覚の強い虫が、がん患者の尿に反応することを利用した検査だそうです。2019年の実用化を目指しているとのことです。

mametisiki
線虫によるがん検診の詳しい情報は、九州大学大学院の広津研究室のホームページで紹介されています。

血液によるがん検診「アミノインデックス検査」

アミノインデックス検査は国からは推奨されていませんが、全国1,200の医療機関で受けることができます。この検査も国が推奨するがん検診と同じように、がんの可能性を知ることができるというものです。がんを発見する検査ではありません。

アミノインデックス検査では、血液を採取して、アミノ酸の濃度を調べます。がんになっている可能性をランクAからランクCまでの3段階で判定するそうです。ランクCの場合は通常の4倍から11倍がんになっているリスクが高いので、精密検査の受診が勧められます。
アミノインデックス検査で検査できるがんは以下のとおりです。

男性:胃がん、はいがん、大腸がん、すい臓がん、前立腺がん
女性:胃がん、肺がん、大腸がん、すい臓がん、乳がん、子宮がん

検査は試験管1本分の採血のみなので短時間で終わります。結果がでるまでには、2週間ほどかかるそうです。

アミノインデックス検査の仕組み

番組では、アミノインデックス検査の監修をした山門實先生(三井記念病院総合健診センター特任顧問)が、その仕組みを解説していました。
山門先生によると、健康な人は、血液の中にある20種類のアミノ酸が同じ量とのことです。けれども、がんになると血液のアミノ酸の量が変化するそうです。
例えば、大腸がんの場合、量が減るアミノ酸もあれば、増えるアミノ酸もあるのです。

あさイチより

アミノ酸が減るのは、がん細胞が成長するためにアミノ酸をエネルギーとして使うからです。

また、アミノ酸が足りなくなるとがん細胞が、特殊なたんぱく質(HMBG1)を作り筋肉に作用します。そして、筋肉のタンパク質がアミノ酸に変えられてしまうのです。そのアミノ酸が筋肉から血液に流れるため、血液中のアミノ酸が増えると山門先生は説明をしていました。

がんの種類によって増減するアミノ酸が異なるので、1度の検査でいくつものがんの可能性を調べることができるのです。

あさイチより

アミノインデックス検査のデメリット

アミノ酸の量は、糖尿病など他の病気でも変化します。ですから、アミノインデックス検査でがんが発見できる可能性は、国が推奨しているがん検診に比べて低いです。ランクCの判定を受けて実際にがんがあるのは、多くても100人に1人程度。乳がんの場合、マンモグラフィでがんが発見されるのは100人中4.18人ですが、アミノインデックス検査の場合は100人中、0.49人です。またランクAやBでも、がんになっている場合はあるとのことです。

あさイチより

新しい検診方法の効果を検証する際にはリスクの高い人を集めやすいとのことです。ですから、アミノインデックス検査でがんが見つかった人数は、過大評価の可能性もあると斎藤先生は説明をしていました。手軽に受けられるのはメリットですが、国に推奨されるには、まだまだ課題が多いようです。

また、アミノインデックス検査は健康保険が適用されないので、費用(医療機関によって異なるも)は、国が推奨するがん検診に比べると高いです。番組で紹介されていたKさん(33歳女性)がアミノインデックス検査に支払った費用は24,000円でした。

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アミノインデックス検査の正式名称はAICS(アミノインデックスがんスクリーニング)といいます。検査についてさらに詳しいことを知りたい場合は、臨床アミノ酸研究会のホームページで確認してください。

がん征圧宣言の町「鳥取県南部町」の取り組み

鳥取県南部町では5年前に「がん征圧宣言」をして、がんによる死亡者0を目指す取り組みを始めました。これには、がん患者を減らすことで、医療費を減らすという目的があります。

がん征圧宣言前(2011年)の南部町のがん検診の受診者は、受診率が1番高かったのが大腸がん検診の35%でした。乳がん検診にいたっては約20%と決して高い受診率とは言えませんでした。
そこで南部町は、町民のがん検診に対する関心を高めるために、アミノインデックス検査を町民は1,000円で受けられるようにしたのです。すると5年間で高齢者を中心に2,484人が受診しました(南部町の人口は11,143人)。

アミノインデックス検査に補助を出すようにしたところ、南部町ではがん検診の受診率も増えました。とくに肺がん検診の受診率は15%以上も上がったのです。アミノインデックス検査を受けたことで、がん検診への関心も高まったのですね。

あさイチより

がん検診を受けない人には、検診を受けるのが怖かったり、不安だったりするからという理由があります。けれども、アミノインデックス検査は、がんのリスクを知るだけだと周知されているので、がん検診よりも受けに行くハードルが低いと感じる人もいるようです。実際には、がん検診もがんのリスクが診断されるだけなのですが、「がん検診はがんを発見する検査」と誤解している人は多くいるようです。

 

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J-START(マンモグラフィ+超音波検査)

国では、マンモグラフィに超音波検査を加えることで、乳がんの早期発見率が上がるかどうかの研究(J-START)を11年前からしています。これまでに40代の女性76,000人が協力しているとのこと。これまでの研究では、マンモグラフィでがんが見つかる確率77%、2つの検査を併用するとがんが見つかる確率が91.1%に上がることがわかっているそうです。
2つの検査方法を併用してがんの発見率が上がった分、死亡率を下げることができるかどうかを知るための研究が必要だと斎藤先生が解説をしていました。

mametisiki
斎藤先生は、がん検診についての正しい知識をまとめた本を執筆しています。

がん検診は誤解だらけ―何を選んでどう受ける (NHK出版生活人新書)
斎藤 博

まとめ

がん検診に対して怖いイメージを持っている人は多いと思います。けれども、国が推奨する検診を受診することで、がんだとしても治る可能性が高くなります。後から「あのとき検診を受けておけば良かった……」と後悔しないためにも、定期的にがん検診を受けるようにしましょう。


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