ビタミンD~欠乏症の恐怖と効率的な摂取方法~ガッテン!より

いま日本では「ビタミンD不足」が静かに進行しています。
ビタミンDが不足すると骨がスカスカになるなど、さまざまな不具合が体に生じます。
今回は、ビタミンD不足について特集していた『ガッテン!』を中心に、役立つ情報をまとめてご紹介していきます。

 

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日焼けとビタミンDの関係

1970〜80年頃、日本では子どもたちの「日焼け大会」が開催されるほど、日焼けは“健康の象徴”でした。

80年代にも女性に「小麦色ブーム」が起きるなどしていましたが、1985年ごろに「オゾンホール」の問題が取り上げられるようになったころから「色白がいい」とされる時代に変わりました。
オゾン層は地球を取り囲んでいる層で、太陽からの紫外線を吸収しています。85年頃からオゾン層の穴であるオゾンホールが問題となり、人びとの紫外線への意識が高まって、小麦色ブームが終わったと言われているそうです。

そして、この変化と関連して、人体に関する意外な変化も起きました。

ガッテン!より

このグラフは、20代女性の血中ビタミンD濃度を示したグラフです。
赤は1980年、青は2016年のデータで、緑の点線を下回ると不足状態とされているのですが、約35年で急激に低下し現在では多くの人がビタミンD不足状態に陥っていることがわかります。
これは、人びとが日焼け対策をとるようになったためです。
紫外線が皮膚の中にあるコレステロールに届くとビタミンDが生成されるのですが、日焼け対策をとることによってビタミンDの生成も遮られてしまいます。

骨が専門であり、様々なビタミンD欠乏の症例を見てきた岡崎亮教授(帝京大学ちば総合医療センター)は、近年の調査から「日本人のおよそ5割がビタミンD欠乏状態」と推定しています。

 

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ビタミンDの働き

ビタミンDには、骨と血液中のカルシウム濃度を保つ働きがあります。
ビタミンDをたっぷり摂っていれば少ないカルシウムでも効率よく吸収することができるのですが、カルシウムだけを摂っていてもカルシウムはあまり吸収されません。
岡崎氏が担当した低カルシウム血症の若い女性は、よく調べてみると単にビタミンDが欠乏していただけだった、ということもあったそうです。(低カルシウム血症になると手足が絶えずしびれたり、口の周りがピクピクしたりするなどの症状が現れます)
この方は日頃から日傘をさすなど徹底した日焼け対策をとっていたため肌が真っ白だったそうで、さらに菜食主義者でビタミンDが含まれる食品をあまり摂っていなかったため、ビタミンDの血中濃度の基準である20を大きく下回る6か7ほどしかなかったそうです。

 

岡崎氏は特に若い人のビタミンD不足を危惧していました。
というのも、若い人はほとんどがビタミンD欠乏状態と見られているからです。
たとえば、ビタミンDの値が低いほど骨密度が低くなります。若いうちはなかなか骨粗しょう症にまではなりませんが、ビタミンD不足が長期間続くと、歳をとるにつれて骨粗しょう症や骨折のリスクがどんどん上がっていってしまいます。

もちろん、若者以外でも大きな危険があります。
家にこもりがちな高齢者は骨がもろくなって転倒の際の骨折リスクがあがりますし、ビタミンD摂取量が低い乳幼児は全身性の痙攣が起きたり骨の健全な成長が妨げられたりする可能性が出てきます。

成長期の人なら骨が十分に成長しないため、将来の骨粗しょう症のリスクが上がります。
妊婦の方も注意が必要です。赤ちゃんの成長のために大量のカルシウムが必要になるなかでビタミンDが足りないと、食事からカルシウムを吸収できず、自分の骨を多く分解してしまいます。すると産後に骨密度が低下して、骨折リスクが上がります。
さらに、ビタミンDは筋肉や免疫細胞、脳や腎臓など、さまざまな場所でさまざまな働き(筋力を上げたり免疫の働きを維持したり)をしているので、全身的にさまざまな異変が出る可能性も高まります。

 

日焼けと病気の問題

日光を浴びる必要があることは理解できても、多くの人が日焼けと皮膚がんの関係も知っているため、戸惑ってしまうと思います。
岡崎氏によれば、一般的に10〜15分の日光浴であれば、皮膚がんの問題はないとされているといいます。岡崎氏もビタミンDが不足気味だそうで、移動の際は外を歩いて腕だけでも日光を浴びるようにするなどの工夫をしているそうです。

日本皮膚科学会も、日光浴後に肌が赤くなるほどの日光浴には注意が必要としながらも、日光浴の必要性を訴えています。

ビタミンDを生成するという観点から必要な日光浴の目安は、正午前後なら半袖で15分程となり、これなら皮膚がんのリスクもないそうです。
ただし、日焼け止めを塗ってはいけませんから、注意してください。

 

部分的に日光浴をする

だったら焼けても大丈夫な部位にだけ日光を浴びるようにするのはどうか、ということで、番組では手の平と足の裏だけ日光浴をする実験を行っていました。
顔や体は衣服や帽子で完全防備し、手の甲や足の甲には日焼け止めをぬった上で、部分的に20分間の日光浴を行いました。(20分としたのは日差しのあまり強くない4月に実験をしたためだそうです。)

ガッテン!より

結果、部分的に日光を浴びただけでもビタミンDの血中濃度は上昇しました。
どうしても日焼けしたくない人には、有効な方法かもしれません。

「部分的に日光浴するのは現実的じゃない…」

「日焼け止めをぬらない生活なんて、無理!」

という方は、ビタミンDがたくさん含まれる食品を摂るようにするしかありません。
次はビタミンDが多く含まれる食品などを見ていきましょう。

 

ビタミンDと食品

アメリカのオリンピックチームの専属栄養士であるロブ・スキナー氏によれば、選手への栄養指導などでもビタミンDに注意しているそうです。
下の画像はアメリカ代表選手に提供している料理の一例です。


ガッテン!より

この料理にも使われているマッシュルームなど、キノコにはビタミンDがたくさん含まれています。
もっとも注目すべきは牛乳です。アメリカでは牛乳やシリアルなどのビタミンD入りの製品が多く売られているそうです。
日本でも一部では発売されているようですから、探してみると良いかもしれません。

新潟大学医学部中村和利教授は、食事とビタミンDの関係について新潟県で調査しています。そのなかで、村上市の方たちの血中ビタミンD濃度に特徴があることを見つけました。

ガッテン!より

日照時間は冬場ガクッと減りますが、村上市の方は1月のビタミンD血中濃度が上がっています。
ということは、ビタミンDを食材から摂っているということになります。
さらに調べてみたところ、鯉のぼりが「鮭のぼり」だったりするこの地域の特産品であるが影響していることがわかったそうです。
さけの切り身1きれには、食事からとるビタミンDの2日分以上が含まれています。海面近くのプランクトンが日光を浴びてビタミンDをつくると、それを食べた魚もビタミンDが豊富になり、それを食べた鮭もビタミンDが豊富になるそうです。

ビタミンDはサンマやアジ、サバなどの青魚にも多く含まれます。
舞茸や干し椎茸、エリンギなどのきのこ類にも多く含まれ、さらにビタミンDは日光で生成されるため干しきのこには特にたっぷりのビタミンDが含まれているそうです。

 

ビタミンDについて

最後に、ビタミンDに関するもう少し深い知識をご紹介します。

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・脂溶性ビタミンである
ビタミンは水溶性と脂溶性に分けることができます。(水溶性は水に溶けやすい性質であることを、脂溶性は脂に溶けやすい性質であることを意味します。)
ビタミンDは後者に該当するので、油脂と一緒に摂取する事で吸収率が高くなります。

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・ビタミンDにはD2とD3がある
ビタミンD2は植物に、ビタミンD3は動物に多く含まれ、人ではビタミンD3の方がより重要な働きを果たしています。
米誌「リーダーズダイジェスト(Reader’s Digest)」では、毎日1000 IU(国際単位)のビタミンD3の摂取を推奨しているそうです。

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・冬は長い時間太陽を浴びる必要がある
北海道札幌、茨城県つくば、沖縄県那覇で実験を行ったところ、7月に10μgのビタミンDを生成するのに必要な日光浴時間は10~20分であったところが、12月では札幌139分、つくば41分、那覇14分の日光浴が必要であったそうです。
それでも紫外線が皮膚に有害となるのはその約2倍〜3倍の時間浴びた場合なので、心配する必要はないようです。

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・かぜやインフルエンザの予防にも有効
医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に掲載された研究によると、ビタミンDのサプリメント摂取によって、英国で300万例以上のかぜやインフルエンザの罹患を減らすことができたそうです。
サプリの効果は、毎日もしくは毎週摂取した方が、1カ月に一度大量に摂取するよりも高く、また、もともとビタミンD不足の人の方が効果的だったそうです。

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・ビタミンDとカルシウムを摂ったからといってがんが防げるわけではない
アメリカの研究班が、閉経後の55歳以上の女性を対象に、ビタミンD製剤とカルシウム製剤を4年間飲み続けることで、がん全体に対して(悪性黒色腫以外の皮膚がんを除く)予防効果があるかどうかを検証したそうです。
結果、ビタミンD製剤とカルシウム製剤を飲むグループと、偽薬を飲むグループとの間に有意な差は見られなかったそうです。
健康に対するポジティブな影響がある物質ではありますが万能ではないということですから、誇大広告などには気をつけましょう。

参考:
水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン
ウィキペディア ビタミンD
がんも怖いけど、日焼け避ける方がずっと体には悪いかも(ギズモード)
ビタミンDのサプリ、かぜ・インフル予防に有効=英研究(ウェッジ)
ビタミンDとカルシウムでがんを防げるか?(MEDLEY)

 

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まとめ

若い人の多くに栄養欠乏状態があるということは、長い目で見るととても怖いことだと思いました。
普段から日焼け止めを使っている人がそれをやめるのは現実的ではありませんから、ビタミンDが多く含まれる食品をしっかりと摂るように心がけてみましょう。


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