頻尿と尿漏れの原因、治療、生活上の注意点~チョイス@病気になったときより

尿のトラブルに多くの人が悩まされています。

たとえば頻尿や尿もれは日本に約1100万人、夜間頻尿は約4500万人もいるそうです。

尿のトラブルについて紹介していた『チョイス@病気になったとき』では、街ゆく人に尿に関する悩みについてインタビューをしていたのですが、そのなかの声には…

「夜に尿意で何度も目覚める」
「漏らしてしまうので、いっぱいにたまらないうちにトイレに行くようにしている」

などの声が挙がっていました。

誰にも言えず、尿ケア用のナプキンなどを密かに使っているという人も多いようです。

今回は、尿に関する悩みの原因や解決法をまとめていきたいと思います。

 

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代表的なトラブル

尿に関する代表的なトラブルには「頻尿」「尿もれ」「残尿」があります。

 

・ 頻尿
寝てから起きるまでの間に8回以上尿意で目覚める状態。(7回以下でも
本人が困っている場合は頻尿とされるそうです。)

・ 尿もれ
くしゃみをしたときや、重いものを持ったときなど、自分の意志とは関係なく尿が漏れること。

・ 残尿
トイレに行ってもすっきりしなかったり、まだ出る気がして何度もトイレに行ったりするような状態。

 

40歳以上の人で、これらの症状に悩む人の数は…

昼間頻尿3300万人
夜間頻尿4500万人
尿もれ1100万人
残尿1200万人

こんなにいるそうです。

Yさん(61歳男性)も、尿のトラブルに突然悩まされるようになった一人です。

毎朝、会社から40キロ離れた工場に自動車を運転して行くのが日課だったそうですが、3年前、車中で突然激しい尿意に襲われたそうです。「急に来て、今すぐしたい、漏れちゃうというような感じになった」といい、その感覚は翌日も翌々日も現れたと話していました。

対策として水分を控えてみたりもしたそうですが、それでも1時間に1回はトイレに行きたくなり、常に公衆トイレを探しているような状態だったそうです。

睡眠中に襲ってくる尿意にも悩まされました。1時間おきに尿意を覚えるため、一晩に5回から6回も起きるようになってしまいました。

Yさんは「お酒の飲み過ぎが原因か?」と考えて飲酒を控えるようにもしてみたそうですが、数ヶ月後には昼間でも1〜2時間毎に尿意を催すようになってしまいました。

この状態のまま1年間我慢し続けましたが、このままではまともな生活が送れないと考えたYさんは泌尿器科を受診しました。

超音波を使って、排尿後に尿が残っていないかを確認する「残尿検査」と、膀胱と前立腺の状態を調べました。

担当した医師の高橋悟氏は、前立腺が大きくなったことで膀胱(ぼうこう)が過活動になり、すぐトイレに行きたくなる「過活動膀胱」であると診断を下しました。

 

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過活動膀胱

健康な状態では、尿が膀胱にたまっていっぱいになると、脳に信号が送られます。

すると脳から尿意の司令が出され、膀胱の筋肉が収縮して尿道の筋肉が緩み、尿が排泄されます。

しかし前立腺が肥大していると、尿道や膀胱が圧迫されて、溜まっていないのにたまったと判断してしまい、頻尿になってしまいます。

チョイス@病気になったときより

また、尿が出づらくなるため、膀胱は普段以上の力で出そうと活動的になります。

これが過活動膀胱です。

Yさんと健康な人の前立腺を比較すると…


右がYさん

チョイス@病気になったときより

大きくなっていることが確認できます。

通常、前立腺はクルミ大ですが、肥大化すると鶏卵くらいまで大きくなる場合もあるそうです。

肥大の理由はわかっていないそうですが、加齢によって男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることや、生活習慣病との関係などがわかってきているそうです。

50歳くらいから肥大化が始まり、50代で30%の人が、60代で60%、70歳以上だと80%以上の人が、大なり小なり前立腺が肥大しているそうです。

前立腺が肥大化すると、膀胱に尿がたまっていても尿を出せなくなる「排尿困難」や「尿閉」という状態になることがあります。

慢性的になると痛みは出ず、寝ている時におねしょのように尿が漏れる「溢流性尿失禁」(いつりゅうせいしっきん)になるそうです。

切迫性尿失禁

女性が過活動膀胱になると、前立腺がなくて尿道が短いため「切迫性尿失禁」になる場合が多いそうです。急に尿意が起こって我慢できずに漏らしてしまう病気です。

脳梗塞や脳出血、頚椎症など中枢神経に異常がある場合も、尿意のコントロールができなくなって過活動膀胱になり、切迫性尿失禁が起こることがあるそうです。

Yさんの解決法

Yさんは残尿があまりなかったため手術はせず、薬での治療が選択されました。

用いられた薬は「α1遮断薬」「β3作動薬」の2種類です。

α1遮断薬は、前立腺の筋肉を緩めて尿道を広げる作用があります。

チョイス@病気になったときより

β3作動薬は、膀胱の筋肉を緩めて膀胱そのものを広げる作用があります。

チョイス@病気になったときより

これで尿の出を回復させて膀胱の活動を抑え、尿の回数を減らします。

Yさんはこの治療のお陰で、尿の回数が夜に1回、昼3〜4回に減ったそうです。

「急なおしっこがなくなっただけでも助かる。よく眠れる」と話していました。

これらの薬の他に「PDE—5阻害薬」というα1遮断薬に似た作用の薬や、「5α—還元酵素阻害薬」という肥大化が激しい前立腺を小さくする薬もあります。

膀胱の収縮を防ぐ抗コリン薬が用いられることもありますが、唾液の分泌を抑える副作用や、腸の動きも抑えるため便秘になりやすいという副作用もあるそうです。

これらの薬は、1〜2週間で効くか効かないかわかるそうで、3ヶ月飲めば最大効果が引き出されるそうです。

手術

手術が必要になるのは、以下のようなケースです。

・ まったく尿が出ない「尿閉」を繰り返す
・ 尿路感染症を繰り返す
・ 血尿を繰り返す
・ 膀胱結石を合併している
・ 尿閉によって起きた腎不全を合併している
・ 薬による治療で改善が見られない

これらに該当する場合は、内視鏡を尿道から入れて、電気メスで肥大した前立腺をくり抜く経尿道的前立腺切除術(TURP)や経尿道的前立腺核出切除術(TUEB)という手術が行われます。

レーザーを使って焼き飛ばす光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)という方法もあるそうです。(どの手術も前立腺を切除するので、射精障害が生じることがあります。)

排尿に関する病気は命にかかわる病気ではないので「早期発見・早期治療」ではありません。

本人が生活の中で「困った」と感じた時が治療のタイミングです。

日常生活での注意

排尿に関する悩みのある方は、以下のようなことを日常生活で気をつけるべきです。

・ 水分を摂りすぎない
・ カフェインやアルコールを控える…利尿作用があるため
・ 便秘を防ぐ…便秘になると腸が膨らんで膀胱が刺激されるため
・ 「膀胱訓練」をする

「膀胱訓練」というのは、尿意を少し我慢して尿を貯められる量を増やすことです。

5〜10分我慢することを毎回繰り返して、その時間を少しずつ伸ばしていくと訓練になるそうです。(ただし、前立腺肥大症や膀胱炎、泌尿器のがんがある方は、医師に指示を仰ぐようにしてください。)

排尿間隔が2〜3時間になると日常生活に不便を感じないと言われているそうですから、その時間を目指して訓練していきましょう。

女性の過活動膀胱対策

女性は体重の減量が有効だそうです。

減量すると膀胱の圧迫が軽減されるためで、適切な食事療法と運動療法で体重を5〜8%減らすと明らかに症状が良くなるという確実な研究結果が出ているそうです。

女性の尿トラブル

事務職のIさん(58歳)は30代の頃から、重いモノを持ち上げたりクシャミをしたりする際に、ときどき尿もれするようになってしまいました。

症状は徐々に悪化していき、50代に入った頃からは、少し駆け足をしたり階段を昇り降りしたりするだけでも漏れるようになってしまったそうです。

それからは尿漏れパッドが欠かせなくなり、お尻が隠れる服しか着れなくなってしまいました。

Iさんは「人に言えないし、なんて情けない…」という気持ちになっていたそうですが、新聞に掲載されていた同じ症状の人の体験談を読み、病院で診てもらうことを決心しました。

そこで受けたのが「尿失禁定量テスト」です。

特別な尿漏れパッドを装着して、どのくらい尿が漏れているかを測定するテストです。

最初に水を500cc飲んで、膀胱に水が溜まっている状態にします。

歩行や階段の昇り降りなどの動きを30分間繰り返し、椅子に座る・立つの動作を10回、強く咳き込む動作を10回、腰をかがめて床に置いたものを拾う動作を5回、流水で手を洗う動作(水の冷たさだけでなく水の音でも尿意を催す人がいるため)を1分間行います。

このテストを行った結果、Iさんは50gの尿が漏れていました。

さらにX線検査をしたところ、お腹に強い力が入ることで尿もれが起こる「腹圧性尿失禁」であることがわかりました。

骨盤の下には、膀胱などの内蔵をハンモックのように支えて、尿道を締める役割をしている「骨盤底筋」という筋肉があります。

チョイス@病気になったときより

この筋肉が緩むと尿道を締める力が弱まるだけでなく、尿道自体も傾いてしまいます。

チョイス@病気になったときより

この状態で腹圧がかかると、弱い腹圧でも漏れてしまうのです。

担当した高橋氏が「今まで診た患者の中で3本の指に入るくらい重症だった」と話すほどだったため、手術をすることになりました。

TVTテープというメッシュ状のテープを体内に入れて、傾いた尿道をしっかり支えます。


チョイス@病気になったときより

手術は20分程で終了します。

術後のIさんは乗馬ができるまでに回復しました。「生活の質が大変良くなって、ほぼ完璧に戻った」と話していました。

女性の尿失禁はこの腹圧性尿失禁が約5割を占めているそうです。

その他は過活動膀胱の切迫性尿失禁が約2割、両者が同時に起こる混合性が約3割となっているそうです。

骨盤底筋が緩む原因

出産や加齢、肥満、閉経等が原因として挙げられます。
(閉経に関しては、女性ホルモンが急激に低下するため筋肉が薄くなって弱くなると考えられているそうです。)

男性もなる可能性が

男性が腹圧性尿失禁になると、「排尿後尿滴下」が起こることが多いそうです。尿を出し終わったと思ったのに直後に尿が漏れ出てしまう現象です。

男性で骨盤底筋が弱ると、早い人では40代でこの症状が出ることもあるそうです。

TVT手術について

費用は10〜12万円ほどで、この手術を1回すれば再発することはないそうです。

ただし、以下のような制限もあります。

・ 妊娠・出産予定の方は避ける
・ ステロイド剤を飲んでいると感染症を起こしたり膣壁からメッシュが露出したりするリスクが増えるので医師と相談する
・ 術後1ヶ月は激しい運動や自転車にのること、重いものを持つことを控える
・ 膀胱を圧迫しないように肥満に注意する

薬での治療

腹圧性尿失禁も、薬での治療が試みられることがあるそうです。

「β2刺激薬」という尿道括約筋の収縮力を高める薬が用いられます。

ただし効果は限定的なので、軽度の人がこの薬を使いながら骨盤底筋訓練をして緩みを改善していく、というように、治療の一環として用いられるそうです

副作用として手足の震えや動悸などが出る場合もあるとのことでした。

骨盤底筋について

骨盤底筋が弱ると、尿のトラブル以外にも弊害が引き起こされる場合があります。

・下がり腸
全長7〜9メートルもある腸は、上からはブランコのように両端が固定されているだけで、骨盤底筋が下でハンモックのように支えています。
骨盤底筋がゆるむと腸全体が下がってしまい、冷え性やむくみ、肌荒れなどの不調が生じるそうです。

・出産時の苦痛
骨盤底筋を鍛えておくと出産時のいきみがうまくできるようになり、さらに切迫早産の予防にもつながるそうです。

・スタイルの悪化
骨盤底筋が弱ると下腹部が出てお尻が大きくなる“洋ナシ型”の体型になってしまうそうです。
骨盤底筋を鍛えることはスタイルを良くすることにもつながるのです。

【参考】
「下がり腸」チェック法と改善ストレッチ
「骨盤底筋」を鍛えて安産力をグングン高めよう!
「洋ナシ体型」は卒業!骨盤底筋エクササイズで引き締め

骨盤底筋体操

骨盤底筋の瞬発力と持久力をつける目的で行われる体操です。治療にも予防にもなるそうです。
お腹を出したり引っ込ませたりするのではなく、肛門を中心にお腹の中に引き寄せて下ろすという動きになることを注意して行います。

・瞬発力
仰向けに寝て、膝を軽く立てます。

チョイス@病気になったときより

意識としては、肛門の辺りをグッと上の方(頭の方向)へ持ち上げて、下ろすイメージで動かします。お腹は動かさないで骨盤底筋だけを引き上げて下ろす運動を5回行います。リズミカルに動かすことがポイントです。

・持久力
瞬発力の運動と同じ姿勢で行います。
肛門や尿道をしめて5秒間止めます。
この時も頭の方へ引き上げて、肛門がお腹の中に吸い込まれるようなイメージで行います。力を入れる時は息を吐きながら行うのもポイントです。

両手両膝を床につけた姿勢や椅子に座った姿勢、テーブルに手を付けた姿勢で行ってもOKだそうです。

チョイス@病気になったときより

いちばん大切なのは毎日やることで、1日60〜80回を2〜3ヶ月続けると効果が出てくるそうです。

これだけで6割の人に改善が見られるそうですが、改善しない場合は泌尿器科を受診してみてください。薬を飲みながら体操を続けてみて、それでもダメなら手術を検討することになります。

 

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まとめ

尿に関するトラブルはある程度年齢を重ねると当たり前に出る症状であることや、人に言うことが恥ずかしいということもあって、なんとなくそのままで居る人が多いという特徴があります。

治療をすれば必ず改善するので、「困った時が病院に行くべきタイミング」ということで病院を受診し、適切な指導を受けるようにしましょう。


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