予防できる認知症~脳血管性認知症~主治医が見つかる診療所より

高齢社会が深まるにつれ、認知症に対する研究も深まってきています。
認知症にはいくつかタイプがあり、その中の「脳血管性認知症」というタイプの認知症は、知識があればかなりの確率で未然に防ぐことができるそうです。
今回は、脳血管性認知症の特徴や最新の予防法について紹介していた『主治医が見つかる診療所』を参考に、脳血管性認知症についてまとめていきたいと思います。

 

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脳血管性認知症の方の日常生活

脳血管性認知症は、脳の血流が詰まったり破れたりすることで脳細胞の一部が死滅し、発症するタイプの認知症です。

番組では脳血管性認知症の患者さんの1日に密着していました。

Iさん(65歳男性)は11年前に脳血管性認知症を発症し、現在は奥さんに介護されながらお二人で暮らしています。奥さんはIさんが発症したあとに仕事を辞めて、今は年金と障害者手当で生活しています。

会話はほぼ単語でしか話すことができず、自分から話したり動いたりすることはできない様子でした。

症状は徐々に進行しており、現在では1時間前の食事も覚えておくことができません。さらに、次第に歩けなくなってきており、尿を漏らすようにもなってしまっているそうです。認知症で脳の機能が低下すると、「歩く」などの体を動かすことまで難しくなるのです。

取材に訪れた日の午後1時ころ、月に3回通っているリハビリのためにお二人は外出しました。

話すことが困難になった方が集まって近況を報告する会に参加したのですが、Iさんはすでに話すことが難しくなってしまっているので、主に奥さんがお話をしていました。しかし、歌で発声練習を行う時間には、Iさんが結婚式で歌った曲をみんなで歌う番になると、Iさんは笑顔になっていました。完全に記憶がなくなっているわけではないのです。

奥さんは「私が動けるうちは外に」と話していました。これは脳を刺激するためで、相撲についての話をしたり、お孫さんと会ったりなど、いろんな工夫をしているとのことでした。

帰宅後、Iさんはよく話すようになりました。脳血管性認知症には、時間によって症状が変化するという特徴があります。

それでもやはり、飲み込むことが難しくなってしまったIさんのために、奥さんは夕食のメニューすべてにとろみをつけていました。

たとえば、ハンバークは柔らかく煮込み、チーズでとろみをつけるなどの工夫が必要だそうです。食事の一口目は奥さんが食べさせてあげる必要があるのですが、その後はフォークを使って自分で食べることができていました。食事には1時間ほど時間をかけていました。

 

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脳血管性認知症について

認知症予防の第一人者である鳥取大学医学部の浦上克哉医師は、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いについて、

「認知症なので(両者に)物忘れはあるが、脳血管性認知症にはアルツハイマー型ほど強い物忘れはない」

と説明していました。また、

「一番大きな特徴は運動障害。アルツハイマー型では運動障害は一般的にはないが、脳血管性認知症には言語や歩行障害、嚥下困難などが現れる」

とのことです。

人間の記憶について、上山博康医師は以下のように説明していました。

「記憶はたまねぎのようになっていて、幼い時の記憶はコアにあり、だんだんとかぶさってくる(ように記憶が重なっていく)。最近のことは忘れるが昔のことは覚えていることを「逆行性健忘」という。」
Iさんが、結婚式でうたった歌で笑顔になったのもこうした脳の仕組みのためだったと考えられます。

脳血管性認知症の原因と特徴

Iさんは脳血管性認知症と診断される前に“前触れ”があったそうです。

ハウスクリーニング製品をリースする会社で営業課長をしていたIさんは48歳のときに医師から「高脂血症」と告げられたそうです。今でいう「脂質異常症」です。

「生活改善をするように」と医師から言われましたが、営業という仕事柄、取引先への接待で毎晩のように外食をし、飲酒をしていたため、「仕事だから仕方がない」と考えてそのままにしてしまったそうです。

その翌年、Iさんに異常が出ました。息子さんがIさんを迎えに行って缶コーヒーを買ったときに、Iさんは自分で缶のフタを空けることができなかったそうです。

さらに、車で出勤するときに異常なほど大回りしてから車を出すなど、小さな異常が立て続けに出たそうですが、その時奥さんは「歳をとったな」と思っただけで、まさか病気だとは思わなかったそうです。

しかしその日の午後、Iさんは仕事の電話をしているときに簡単な言葉が出てこなくなり、直前まで使っていた携帯電話がどこにあるかもわからなくなってしまったそうです。異変に気づいた同僚がIさんをすぐに病院へ連れて行くと、脳梗塞であることが発覚しました。

そのまま2ヶ月間入院し、投薬治療を経て退院しましたが、言葉に障害が残ったため退職を余儀なくされました。

その後、クリーニングの配達業をはじめたIさんでしたが、半年経った頃から車をガードレールにぶつけるなど再び異変が現れるようになりました。

このとき、Iさんは自分が車をこすったこと自体を覚えていませんでした。それが何度か続くと次第に元気がなくなり、家に閉じこもるようになってしまいました。

心療内科に行くとうつ病と診断され薬も処方されましたが、薬を飲んでもうつ傾向の症状は改善されなかったそうです。

それから約5年経った頃、Iさんは以前一度だけ訪れたことがある取引先の方のお宅を真夜中に訪問するという行動をとってしまいました。

病院へ行くと「脳血管性認知症」と診断されました。

脳血管性認知症は、Iさんのように脳梗塞を起こした後に再び脳の血流が悪くなって、脳細胞の一部が死滅して発症することがとても多いそうです。当時はまだ「認知症」とすら呼ばれていなかった時代だったので、ご家族も認知症の可能性が頭に浮かばなかったそうです。

浦上氏はIさんが脳血管性認知症になった原因について

「脂質異常症があって動脈硬化が脳の血管に起き、脳梗塞を起こした。それから脳血管性認知症へと進展していった」

と説明していました。

Iさんは車をこすったことを忘れていましたが、これも脳血管性認知症に特徴的だそうです。

普通の物忘れなら他人から指摘されると「そうだった」となりますが、認知症による物忘れの場合は指摘されても思い出せないのです。

これは本人が隠そうと思っているわけではなくて、完全に忘れてしまっているのです。

うつ的な傾向も認知症である場合があるので、注意が必要です。
心療内科医の姫野友美医師は、うつ病と脳血管性認知症の初期症状の違いについて、

「うつ病の患者さんも忘れっぽいが、本人も忘れたことは覚えていて、“忘れてしまった。なんて自分はだめなんだ…”と、そのことでさらに自分を責める。一方、脳血管性認知症の場合は、忘れたことを忘れてしまうので、他責的になっていく」

と説明していました。

南雲吉則医師は

「脳血管性認知症の特徴としてはまだらに症状が出てくる」

と指摘しました。

「ある行為はできるがある行為はできない、とか、今日は調子が良いが今日はおかしい、など。自分でも非を認めたくないし、周りの人たちも今日だけの問題なのかなとなって、病気の発見が後手に回ってしまうのがこの病気の特徴」

と話していました。

丁宗鐵医師は飲酒との関連を指摘しました。

「脳血管性認知症の場合、飲酒後に症状が増幅されていることが結構ある。普段と同じ量しか飲んでないのに昨晩のことをまったく覚えていないということもある」

といいます。

 

認知症の種類

認知症には多くの種類があります。

・ アルツハイマー型認知症
・ 脳血管性認知症
・ レビー小体型認知症
・ 前頭側頭型認知症
・ 若年性認知症
・ アルコール性認知症
・ 正常圧水頭症
・ まだら認知症

など

このうち、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種は「四大認知症」と呼ばれています。
全認知症のうち、アルツハイマー型認知症が55%と圧倒的で、次いでレビー小体型認知症15%、脳血管性認知症10%、前頭側頭型認知症2.5%と続きます。

・アルツハイマー型認知症
異常なタンパク質が脳にたまって神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮することで発症します。女性に多いという特徴もあります。

・レビー小体型認知症
レビー小体は、神経細胞に出来る特殊なたんぱく質です。これが脳の特定の場所に異常に集まりすぎると正常な働きが妨げられ、レビー小体型認知症を発症します。
こちらは男性患者の方が多いという特徴があります。

・前頭側頭型認知症
前頭葉や側頭葉が委縮して発症しますが、原因はまだわかっていないそうです。
初期には物忘れなど認知症らしい症状は出ないのですが、万引きや痴漢、暴力などの反社会的行動が見られるようになり、対人関係を維持するのが難しくなっていくという特徴があります。

脳血管性認知症の予防法

アルツハイマー型認知症には前段階として「軽度認知障害」があることはよく知られています。脳血管性認知症にも似たように前段階(予備群)があり、それを「VCI」といいます。
浦上氏によれば、

「この時点で対応しておけば進行を食い止めたり、遅らせたりすることも可能」

だそうです。つまり、脳血管性認知症は予防できるということです。

鳥取県倉吉市では、浦上氏が中心となって認知症予防に関する最新の取り組みを行っています。
番組で取材をした日に検査を受けていた76歳の女性はまず、「頸動脈のエコー検査」を受けました。

主治医が見つかる診療所より

頸動脈に超音波を当てて映像化し、動脈硬化の進行度を診ます。
健康な人の頸動脈は…

主治医が見つかる診療所より

このような感じですが、動脈硬化が進行した人の頸動脈は…

主治医が見つかる診療所より

脂質の塊であるプラークができて、血管が狭くなっています。

脳につながる頸動脈を見れば、脳の血管の状態を推測することができるというわけです。

今回検査を受けた女性は、わずかに動脈硬化を起こしていました。このくらいの年齢だと動脈硬化が全くない人のほうが珍しいため、年齢相応ということで食生活の改善で対処すれば問題なしとアドバイスされていました。
普段から頸動脈のエコー検査で動脈硬化を調べるようにしておけば、このように早期に対処することができます。

頸動脈のエコー検査には、もうひとつのメリットがあります。

浦上氏によると「アルツハイマー型認知症も血の巡りを診るのが重要になる」といいます。氏の経験では、いきなりアルツハイマー型認知症を発症するよりも、VCIが引き金になったり進行を促進したりすることが約7割もあるそうです。

脳の血流を悪くする原因である動脈硬化を検査することは、認知症全般の予防につながるのです。

頸動脈のエコー検査は、一般的には1年に1回受けると良いそうで、コレステロールが高かったり糖尿病があったりする人は半年に1回受けるべきだそうです。

血液検査で異常があると言われても「まぁいいや」と考えてしまいがちですが、実際に写真で自分の動脈硬化を見ると、習慣を変えようという気にもなる人が多いそうです。

 

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脳の血流をあげるには

脳神経細胞は毎日たくさん死んでいっています。ただし普段活躍している神経細胞が死ぬわけではなくて、使っていない細胞がどんどん死んでいっています。

浦上氏によれば

「漠然と脳の血流を増やし、血の巡りを良くするということではなくて、普段使っていない神経細胞を使ってあげるのがいい」

と指摘していました。

例えば利き手でボールを投げても脳の血流はあまりアップしないそうですが、逆の手で投げると普段あまり使わない脳細胞が動いて、脳の血流はよくなるといいます。

いつも利き手を行っている動作を逆の手で行うだけで血流がアップするということで、番組では「家の鍵を利き手でない方の手であけてみる」ということが紹介されていました。これだけのことですが、1日1〜2回やってみるだけで効果があるそうです。

また、絵を描いたり楽器を弾いたりなどの芸術活動は、脳の血流アップにとても効果的だそうです。

たとえば塗り絵などが挙げられます。最近では大人向けの塗り絵が販売されているそうです。

認知症予防研究専門家の西野憲史医師が2010年に発表したデータによれば、20〜90代の110名に光トコグラフィーという機器を付けて、無地の紙に筆で色を塗るという行為と、花の絵が描いてある上に塗り絵をする行為をしてもらった場合、ただ色を塗った場合は血流量がほとんどアップしなかった一方で、塗り絵の場合は血流量がアップしたそうです。

何色に塗ろうかと考えたり、はみ出さないように手を動かしたりするため、脳への刺激が強いようです。

脳の血流アップについて秋津嘉男医師は

「脳細胞はどんどん減っていくが、残った細胞同士がいろんな方向にくっつけば脳は活性化される。家族内で1日1回クイズ大会を行うのもよい」

と話していました。

 

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まとめ

今回は「予防できる認知症」として、脳血管性認知症を特集いたしました。
仮にIさんがこの病気の存在を予め知っていれば、進行を止められたかもしれません。自分のためにも家族のためにも、今回ご紹介した知識を覚えておくとよいでしょう。


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