寝起きが悪い~目覚めを良くする方法~ガッテン!より

多くの人が睡眠に悩みを抱えています。「なかなか寝つけない…」「何度も目が覚めてしまう…」など様々ですが、今回は「目覚めの悪さ」についてです。

一日のはじまりが重い気分でスタートするとつらいですし、遅刻にもつながりかねません。そんな事態を避けるために、多くの人が以下の様なことを睡眠前に考えます。

「90分間隔で浅い眠りが訪れるので、そのタイミングで目覚めるようにアラームを設定すれば目覚めが良くなる」

この“90分周期説”は今や常識になっていますが、実は誤った知識です。
このよう誤りを正し、正確な知識を知っていただくために、睡眠について特集していた先日の『ガッテン!』を中心に、睡眠に関する情報をまとめていきたいと思います。

 

スポンサーリンク

 

睡眠に関する誤解1…90分周期説

睡眠には、深い眠りである「ノンレム睡眠」と、浅い眠りである「レム睡眠」があることはよく知られています。
そして、この両者が90分サイクルで交互に起きているというのが常識になっています。

ガッテン!より

番組で様々な国の方に街頭インタビューを行っていましたが、全員がこの知識を共有しており、「90分サイクル説」は世界中で常識となっているようでした。

番組では、睡眠中に体が示す本当の状態を見るために、被験者の体中にセンサーを装着して体の変化を見ていました。
被験者の男性2人が90分の4倍である6時間睡眠を行いましたが、翌朝の目覚めはとても悪そうでした。その日、ジムで激しい運動をして体を疲れさせてから睡眠をとってみても、翌朝の目覚めは悪そうでした。
この実験で得られた2人の睡眠の状態を示したのが下図です。


ガッテン!より

レム睡眠が赤で示されているのですが、その出現周期は人によって異なることがわかり、さらに同じ人でも日によって周期が変わっていることがわかります。

睡眠評価研究機構代表の白川修一郎氏は「90分サイクルで起床すればいい、というのは都市伝説。人によってレム睡眠の起こるサイクルというのはバラバラで、同じ人でも日によって変わる」と話していました。

それならばなぜ、「90分周期説」は世界中で広まってしまったのでしょうか?
30年前にレム睡眠の周期を調べたデータがあります。

ガッテン!より

この調査では90分周期でレム睡眠が起こるケースが最も多かったため、90分周期説が広まったと考えられています。
しかし実際は、グラフを見るとわかる通り、90分周期の前後にも相当なサンプル数が存在しており、睡眠の周期にはばらつきがあることがわかります。

 

スポンサーリンク

 

睡眠に関する誤解2…レム睡眠は浅い眠り?

レム睡眠は浅い眠りであると認識されていますが、それにも誤解があるそうです。
1967年に行われた実験で、睡眠中に音を鳴らしてどれくらい反応できるかを見たそうですが、「深い」とされているノンレム睡眠のときは10%の人が音に反応できたのに対し、「浅い」とされているレム睡眠のときは6%の人しか反応できなかったそうです。

ガッテン!より

レム睡眠は眠りが「浅い」にも関わらず、音に気づきにくいのです。

江戸川大学の福田一彦氏の協力のもと、睡眠の状態と目覚めの関係をあらためて実験してみると、被験者の男性が深いノンレム睡眠で寝ているタイミングでアラームを鳴らしたときには15秒後に目を覚ましましたが、浅いレム睡眠のタイミングで鳴らしたときには15秒経っても目を覚ましませんでした。

この現象について、福田氏は「レム睡眠の間はたいがい夢を見ている。脳は活発に動いているが夢の世界に入り込んでいるため、外からの情報は遮断されている」と説明していました。こういったわけで、レム睡眠の状態の方がアラームの音に気づきにくくなっており、だからこそその状態の時に無理にアラームなどで起こそうとすると、目覚めは悪くなるのです。

 

スポンサーリンク

 

目覚めるべきタイミング

では、いつ起きれば目覚めがよくなるのでしょうか。
実は、番組で最初に行った実験の中で、音に90%も反応できるタイミングがあったそうです。

ガッテン!より

黄色で示してあるのが、音に90%反応できた睡眠状態です。

ガッテン!より

周期的でなく、長さもまちまちであることがわかります。

白川氏によるとこの状態の時は「かなり目覚めに近い状態」だそうです。「電車で居眠りをして、降りる駅が近づくとぱっと目が覚める。ああいう状態。なんとなく外に意識を向けている状態」と説明していました。

しかし、「自分はいま目覚めやすい状態だ」と自分で気づくことはできませんし、周期的に起こる性質のものでもないため、逆算してアラームをセットしておくことができません。

こうした特徴からこれまではどうすることもできませんでしたが、近年ではスマートフォンの目覚ましアプリで、音に90%反応できる「スッキリ起きられる状態」を感知してアラームを鳴らしてくれるものが登場しています。

スッキリ起きられる睡眠状態のときには「体動(睡眠中に体が動くこと)」が頻繁に起きることがわかっており、しかもその状態は朝方になると増えることも知られているため、設定した時間内にスマホのセンサーで振動や音を察知し、そのタイミングでアラームを鳴らすことで、スッキリと目覚めることができるというものです。(すべての目覚ましアプリにこの機能がついているわけではないので注意してください。)

ただし、スッキリと目覚めるには睡眠時間を最低でも6時間以上確保することが必要になりますから、睡眠時間にも注意してください。

 

スポンサーリンク

 

アプリ無しでスッキリと目覚める方法

スマートフォンを持っていない人でも、スッキリと目覚めるための工夫は可能です。

世界最高峰の睡眠研究機関であるアメリカのスタンフォード大学「睡眠生体リズム研究所」の所長を務める西野精治氏は、30年以上睡眠の覚醒に関する研究を続けてきた専門家です。

アプリがない場合どうすればいいかを西野氏に尋ねると、音量を調節できる目覚まし時計を勧めていました。アラームを、耳を澄ましていなければ聞こえないくらいの音量に設定しておくことで、眠りが深いうちは聞こえず、気持ちよく覚醒できる状態になると聞こえてきて、気持ちよく目覚めることができるというのです。
西野氏によると、「起きたい時間の20分前に設定しておくといい」とのことでした。

実際に、目覚めが悪くて悩んでいる人に試してもらったところ、毎日目覚めまで30分以上かかっているというUさん(30代女性)は、普段なら二度寝三度寝しているそうですが、気持ちよく1回で起きられるようになったそうです。

音量を調節できない場合はスピーカー部分にテープを貼るか、厚手のバスタオルで覆うなどをして音量を調節してみましょう。
アラームに気づかずに遅刻することを避けるため、起きたい時刻に大音量のアラームをセットしておくことも忘れずにしておきましょう。

目覚めたあとは、朝の光を浴びて朝ごはんを食べることで睡眠のリズムは整うそうです。

 

スポンサーリンク

 

目覚めやすさは遺伝子も関係している

番組で取材していたアメリカの89歳の女性は、物心ついたときから毎朝3時に起きてきたそうです。理由があってそうしているのではなく、自然と目が覚めるのだそうで、これまで1度も目覚まし時計を使ったことがないそうです。娘さんもお孫さんもそうした生活を送っているそうです。
この方は先祖代々「早起き家系」だったそうで、同じような早起き家系の発見が世界中で報告されてきているそうです。
早起き家系には、昨年のノーベル賞で話題になった「時計遺伝子」が関係していると考えられています。細胞内には時計遺伝子が存在し、その違いが「朝型」「夜型」に関係していることがわかり始めています。

時計遺伝子を知れば健康になる

時計遺伝子とは、概日リズム(約24時間周期で変動する生理現象)の形成に関わる遺伝子につけられる総称で、十種類以上の遺伝子が確認されています。

睡眠には体の恒常性を維持する働きが影響しているため、まずは疲労を回復させる目的で、深いノンレム睡眠が睡眠の前半に多く現れます。このように睡眠中の状態の変化には恒常性が影響を及ぼしているのですが、約24時間周期の安定した体内リズムの管理は時計遺伝子の働きによって支えられていることがわかりつつあります。

時計遺伝子は脳の視床下部だけでなく、心臓や血管、内臓、皮膚など、体中のほとんどの細胞に存在しています。
この遺伝子の働きで「時計タンパク」と呼ばれるタンパク質が作られます。これが一定量以上溜まると今度は時計遺伝子に働きかけて自身の合成を抑制します。そして細胞内の時計タンパク量が一定以下になると再び合成が始まります。この繰り返しで生じる時計タンパクのアップダウンの周期が約24時間となっているため、体内時計と呼ばれるものができているのです。

山梨大学医学部名誉教授の田村康二氏によると「脳内の体内時計を“親時計”とすれば、他の体の細胞が持つ時計は“子時計”で、親と子は常に連携し合っている」といいます。その意味からも朝決まった時間に食事を摂ることは重要で、「朝に親時計が活動的なリズムを刻み始めると、それが子時計に伝わって血圧を上げるなど、活動的になる。こうして、体全体が統一されたリズムに整っていく」のだそうです。

近年注目されている長寿遺伝子と時計遺伝子との関連性も注目されています。
長寿遺伝子は時計タンパクの流れをよくする働きがあると考えられています。長寿遺伝子も全身の細胞に存在しており、放出するたんぱく質によって細胞内のミトコンドリアの動きを助けて老化の原因となる活性酸素の放出量を減らしてくれるので、規則正しい生活を心がけて時計遺伝子の働きを正常にしておくことは老化の抑制にもつながります。

長寿遺伝子を働かせるのは、カロリー摂取の制限と5大栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラル)のバランスの取れた摂取、適度な運動などの基本的な生活習慣だそうですから、生活リズムを保つことと同時に心がけることができれば、老化防止という観点では完璧です。

参考:
睡眠科学でも超重要! 時計遺伝子の発見にノーベル賞
睡眠科学でも超重要! 時計遺伝子の発見にノーベル賞

 

スポンサーリンク

 

まとめ

目覚まし時計の音量を小さくする、という工夫は目からウロコでした。
遺伝子レベルで決まっている部分もあって、人によっては朝起きることがとても大変なことではありますが、目覚まし時計の工夫や目覚ましアプリを利用して、スムーズに目を覚ますことができる日を増やしていきましょう。


スポンサーリンク

コメントは受け付けていません。