のどの老化とのどトレ~むせる・せき込む・誤嚥~あさイチより

「食事の最中によくむせるようになった…」
「風邪でもないのに、急に咳き込む…」
「さらっとした飲み物が飲み込みづらい…」

これらは喉の筋力の衰えによるものかもしれません。
喉は30代から衰え始め、年齢を重ねると大きな病気を引き起こすきっかけにもなります。
通常、食べ物や飲み物は食道を通って胃に運ばれますが、喉が衰えてしまうと空気の通り道である気管に誤って入ってしまうことがあります。(これを誤嚥といいます。)
誤嚥を繰り返していると「誤嚥性肺炎」という肺炎が引き起こされることもあり、年間約8万人の高齢者が誤嚥性肺炎で亡くなっています。
さらに、誤嚥は喉の衰えだけでなく40代から発症しやすくなる小さな脳梗塞によっても引き起こされることがあります。
今回は、様々な衰えが原因となる誤嚥について詳しく解説していた『あさイチ!』を中心に、誤嚥に関する情報をまとめていきたいと思います。

 

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日常生活の中の違和感から

Hさん(37歳女性)は最近、薬を飲むときに喉に違和感が出るようになったそうです。「冷え性改善のために飲んでいる漢方(粉薬)を飲むときに、喉に引っかかることが多い。飲み込みたいのに喉が動いてくれない感じ」と話していました。食事の際にも、むせるような咳が出るそうです。

タバコは吸わず、お酒もたしなむ程度しか飲まないHさんは喉の不調の原因が思い当たらなかったため、番組ではHさんとともに専門医の元を訪ね、診断を仰ぎました。

耳鼻咽喉科の浦長瀬昌宏医師は、「嚥下トレーニング外来」という、飲み込む動作の訓練を専門に行う外来を、全国で唯一開いている専門医です。

浦長瀬氏はまず、内視鏡を使ってHさんの喉の中を調べました。腫瘍や感染症などの有無を確認したところ、多少の炎症はありましたが大きなトラブルはありませんでした。
次に、内視鏡を入れたまま唾液を飲み込んで喉の動きを確認しました。こちらも異常はありませんでした。
浦長瀬氏はこの結果から、「喉の筋力の衰えによる症状」と診断を下しました。浦長瀬氏によれば「40歳くらいになってくると喉の筋力が衰えてきてしまう」そうです。

下図は顎のあたりにある筋肉を説明した図です。

あさイチより

飲み込む動作を行う際はこの筋肉が収縮して、軟骨などでできている「喉頭」を上げます。
喉頭の中には「喉頭蓋」と言うフタがあり、飲み物や食べ物を飲み込む際にはこのフタが気管を塞いて、食べ物や飲み物を食道の方へとスムーズに送りこんでいます。
しかし、喉の筋力が衰え始めると喉頭が上がりにくくなってしまいます。フタが閉まるタイミングが遅れたり、しっかりと閉まらなくなったりしてしまうため、気管の方に飲み物などが入っていくことがあります。
これを吐き出そうとする反応が、「むせる」という反応なのです。

筋肉は年齢とともに少しずつ衰えていくため、自分でも気づきにくいという特徴があります。さらに年齢を重ねて飲み込む力が大きく衰えると、自分の唾液すらきちんと飲み込めなくなってしまうこともあり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

 

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飲み込むトレーニング

しっかり飲み込めるようになれば唾液も飲み込めるようになります。唾液の中には免疫物質も含まれているので、喉の中をきれいにすることにもつながります。

元プロの歌手である玉澤明人氏はボイストレーナーとして活動しており、喉の飲み込む力を鍛える教室も開いています。玉澤氏のトレーニングを1ヵ月ほど続ければ、高齢者でも飲み込む力が回復するといいます。

トレーニングを始める前に、まずは喉仏の位置を確認します。(男性は出ているのでわかりやすいですが、女性はこの確認作業が必要になります。)
首の付け根あたりから徐々に指を上げていきます。

あさイチより

1つ目の出っ張りを取りすぎると凹みがあります。その上にあるもう一つの出っ張りが喉仏です。
唾液などを飲み込んだ瞬間、この骨が指から逃げて上のほうにすっと上がると思います。その感じをつかむことが最初のステップです。

トレーニングは、喉仏を指で触れながら水を1口飲みこみます。
飲みこむ際に喉仏が1番上に上がったところで、意識して力を入れ続けて、喉仏が上がったまま3秒間キープします。
このようにキープをするときに使うのが先ほど出てきた筋肉なのです。喉仏の上の奥のあたり(舌の根元の奥あたり)にこの筋肉があることをイメージして行います。
キープする時間は3秒→5秒→10秒と伸ばしていければ良いそうで、まずは5秒を1回として、1日6回くらい行うようにしましょう。

唾液が上手に飲み込めなくて喉に唾液が溜まってしまっていた人も、このトレーニングをしっかりやると…

あさイチより

1ヵ月くらいで上手に飲み込めるようになりました。

人間は1日700回ほど飲み込む動きをしていますが、それでも加齢によってだんだんと弱っていきます。
しかし、こういったトレーニングをして筋肉を鍛えれば、絶対にむせない飲み込み方ができるようになります。

浦長瀬氏によると、最初は飲み込むときに何気なくのどを触ってみたり、「どうやって流れているのかな」というふうに思ったりすることからはじめるとよいそうです。
ちなみに、トレーニングの際は食べ物で行って誤嚥してしまっては大変なので、必ずお水で行うようにしましょう。

 

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誤嚥性肺炎について

誤嚥性肺炎は自分ではなかなか気づきづらいという特徴があるため、年間8万人の高齢者が、誤嚥性肺炎が原因で亡くなっています。
今年、誤嚥性肺炎と診断されたNさん(70代女性)はウォーキングが趣味で、5年前からはジムに通い始めるなど体力には自信のある方でした。
Nさんが今振り返ると、異変は2年前から現れていました。
ウォーキングコースである歩道橋に差し掛かったとき、1段登るごとに息が切れてしまったそうです。とりあえず1番上までは行こうと考えて頑張ってのぼりましたが、のぼりきった途端に苦しくて座り込んでしまったそうです。
その他にも咳や微熱などの症状があったため病院を受診すると、風邪と診断されたそうです。処方された薬で一旦は症状が治まったものの、薬をやめるとまたすぐにぶり返すという状況が2年も続いたそうです。
おかしいと思ったNさんは病院を渡り歩き、五件目でようやく誤嚥性肺炎と診断されたそうです。Nさんは、運動をしっかりしている自分が肺炎になったことが不思議でしょうがなかったと話していました。

Nさんが驚いたのは肺炎という病名だけではありませんでした。
診察した医師によると「肺炎を起こした箇所以外にも、肺炎の跡が複数見つかった」といいます。体調を崩していた2年の間に何度も肺炎を繰り返していた可能性があるのです。
Nさんに肺炎の自覚がなかったことについて、浦長瀬氏は「体の中の免疫で菌をやっつけようと戦う際に発熱するが、高齢になると免疫が落ちるので熱は出づらくなる。微熱もなかなか出なかったためわかりづらかったのだろう」と分析していました。

ではなぜ、病院に行ってもわからなかったのでしょうか?
浦長瀬氏によると「たとえレントゲンを撮ったとしても、肋骨や心臓に隠れてしまって小さな誤嚥性肺炎は映らないことがある」といいます。必要に応じて血液検査やCT検査をしないと誤嚥性肺炎はわからないそうです。
自分で察知する目安としては、高齢者の場合、熱が出ないのに咳が1週間以上続く場合は風邪では無いので、肺炎も疑うべきだそうです。

誤嚥は、睡眠中に気づかないうちに唾液を誤嚥してしまうこともあります。雑菌を多く含んだ唾液が気管の中に入ると肺の中で炎症を起こし、誤嚥性肺炎を発症します。これを繰り返すうちに重症肺炎になって命を落とすことも多々あるのです。
寝ている間に誤嚥していることを自覚するのはほぼ不可能です。
この誤嚥は、脳の病気が原因で引き起こされることもあるそうです。

脳梗塞と誤嚥

Nさんにも脳梗塞がありました。

あさイチより

髪の毛ほどの太さしかないごく細い血管が詰まるラクナ梗塞というものです。自覚症状がほとんどないそうで、日常生活には全く問題がない脳梗塞です。40〜50代から始まるといわれており、60代になるとおよそ半分の人にラクナ梗塞が起こりますが、必ずしも治療が必要になるわけではありません。

しかし、Nさんの場合は梗塞が起きた場所に問題がありました。
脳の中の「せき反射」をコントロールする部分の血管が詰まっていたのです。せき反射とは、誤嚥したときに脳に瞬時に指令を出して、異物をせきで吐き出す反応です。Nさんはこれが機能しなくなったため咳が出ずに誤嚥するようになってしまったのです。
Nさんの担当医がこれまでの誤嚥性肺炎患者の脳を調べたところ、ほとんどの人にラクナ梗塞が見つかったそうです。

誤嚥性肺炎の予防法

予防するには以下の2点が重要になります。

・せき反射を増やす
・唾液の雑菌を減らす

せき反射を増やすには、葉酸を摂ると良いそうです。葉酸はビタミンB群に属する物質で、脳のドーパミンを生成するのに役立ちます。せき反射はドーパミンを介して起こるため、有効なのです。
葉酸の摂取方法として医師がおすすめしていたのがスムージーです。

あさイチより

葉酸はウナギやレバーなどにも含まれていますが、加熱すると濃度が落ちてしまうので注意しましょう。

唾液の雑菌を減らすには、やはり歯磨きが有効です。1回5分の歯磨きを1日4回(毎食後と寝る前)行います。フロスも用いて行うようにしましょう。

年齢とともに増える声の不調

Jさん(42歳女性)は長男を保育園に迎えへ行ったとき、走りだした子供を呼び止めるために声をかけたところ、「おばあちゃんの声かと思った」と言われてしまったそうです。また、カラオケでも高い声が出ずに持ち歌が歌えなくなったそうです。

番組では、20年以上様々な年代の患者を診察しながら年齢と声の関係を研究してきた中村一博氏が開いている「音声外来」をJさんと共に訪ね、Jさんの声が低くなった原因を探っていました。
Jさんの鼻からカメラを入れて声帯を見たところポリープなどは見つからなかったため、中村氏は声が低くなった原因を「加齢」と特定しました。

40代の中盤くらいになると女性ホルモンが減少してきます。
すると声帯の粘膜の潤いが減ってカサカサになるため、声のツヤがなくなってしまいます。さらに筋力の低下によって声帯を引っ張る力や閉じる力が弱まり、高い声が出せなくなったりかすれてしまったりするのです。
中村氏は「楽器に例えるなら、だんだん弦の劣化が起こってきて、弦を張る力が衰えていくイメージ」と説明していました。

下図は女性の年代ごとの声の高さの平均を示したグラフです。

あさイチより

この通り、徐々に下がっていきます。
そして残念なことに、声帯は年齢に打ち勝つのが難しい場所で、仮に女性ホルモンを投与しても声が20歳の頃に戻ることはありません。
しかし、声帯を鍛えることはできます。

・声の若返り法
椅子の背もたれにもたれかからないように、姿勢よく座ります。
それから、両手で座面を握ります。

あさイチより

座面を引っ張り上げるように力を入れながら、短く声を出します。
こうして声帯を閉じる筋肉を鍛えることで、かすれた声が治ります。1回5秒の発声を10回1セットとして1日5回〜10回行えば、ひと月くらいで効果が出てくるそうです。

このトレーニングは声帯を閉じる訓練なので、声の高さは毎日歌うことでトレーニングすることが最も有効だそうです。

最後に、お酒とタバコは声帯の天敵なので控えるようにしたほうがよいそうです。
お酒を飲むとお酒の代謝のために体の水分が使われるため、声帯の潤いがなくなります。すると声帯のツヤがなくなって声の張りがなくなります。
タバコは炎症を起こしてしまうため、声帯が少しずつ太くなっていきます。すると声が低くなってガラガラしてしまいます。タバコをやめるとそれなりには戻るそうですから、気になる方は禁煙を検討してみましょう。

その他の喉のトラブル

・かすれ声になる、声が出ない
「機能性発声障害」を発症すると、かすれ声になったり声が出なくなったりしてしまいます。ストレスなどの心因性で発症した場合は、見た目には異常が無いにも関わらず声が出にくくなってしまいます。思春期から30歳前後が好発年齢ですが、小児でも発症することがあるそうです。
また、「胸部大動脈瘤」という、心臓から上半身につながる太い血管の壁にできるコブが、反回神経という神経を圧迫して声帯に麻痺を引き起こす場合もあります。

・のどに激痛が出る
のどが痛い時は通常風邪を疑いますが、のどにだけ強い痛みがある場合は「急性喉頭蓋炎」である可能性もあります。原因のほとんどは、インフルエンザ菌B型(インフルエンザウイルスとは別物)の感染によるもので、重症のものだと喉頭蓋が気道を塞いで窒息死してしまうこともあるそうです。
内科を受診すると風邪と診断される可能性があるため、のどにだけ強い症状が見られる場合は耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

参考:
万病のサイン 声の異変を見逃すな! 「年のせい」とは限らない
機能性発声障害の原因や治療法
「急性喉頭蓋炎」

 

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まとめ

喉の不調は、喉に直接の原因がある場合も脳に問題がある場合も「老化現象である」という共通点があることがわかりました。
これに逆らうためには、悪い生活習慣をやめてトレーニングをするという基本的なことが対策になります。
喉に気になる症状のある方は、今回ご紹介した情報を参考にしてみてください。


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