頭痛で悩まされている人は多いですね。現代病と言ってよいくらいにさまざまな頭痛で多くの人が悩まされています。
今回は、先日NHKで放送されていた頭痛に関する番組(きょうの健康 漢方 もっと知りたい「頭痛 タイプ別治療」)を中心にまとめることにします。なお、番組の内容を中心にまとめていますが、それ以外の情報も含めてまとめています。
内容は漢方薬と西洋薬、双方を使い分けながら頭痛に対処していくというものです。もちろん頭痛には危険な病気が隠れている場合もありますから必ず医師と相談の上で対処していくようにしましょう。
ゲスト:山田和男(東京女子医科大学教授)
山田先生は臨床精神薬理学の専門ですが、日本頭痛学会の代議員もされていて漢方の専門家でもあります。
山田先生の著書の一部
まず、頭痛は大きく分けて2種類あります。
一次性頭痛と二次性頭痛です。
一次性頭痛の方が頻度としては圧倒的に多いのですが、中には病気の一つの症状として頭痛が表れている場合もあり、それを二次性頭痛と呼んでいます。頭痛を引き起こす病気としては、脳卒中や脳腫瘍、髄膜炎など、命にかかわるような重大な病が知られています。頭痛が気になる人は面倒がらずに医師の診察を受けるようにしてください。
頭痛の治療ですが、これは大きく2種類あり、“急性期治療”と“予防治療”と呼ばれています。
急性期治療は頭痛の痛みを抑える治療で即効性のある西洋医学の薬が処方されます。
一方予防治療とは頭痛が起こらないように毎日継続する治療、ケアのことで、西洋薬の他に漢方薬を処方される場合もあります。漢方薬というとなんだか頼りないような印象を持たれる方もいらっしゃいますが、多くの方が漢方薬を毎日飲むことで片頭痛などの予防に成功しています。西洋薬は即効性がありますが強い眠気などの副作用もあります。医師と相談しながら使い分けるのが理想です。
では、一時性頭痛と二次性頭痛を個別に見ていきます。
一次性頭痛
これは頭痛の中でも頻度が高い方の頭痛で、片頭痛などが含まれます。片頭痛持ちの人はみなさんの周りにも何人かはいらっしゃるのではないでしょうか。
一般的に、一次性頭痛は片頭痛と緊張型頭痛の二種類に分類されます。
片頭痛
一説によると、日本人の約8%がこの偏頭痛に悩まされていると言われています。頭痛は脳の血管が広がることが原因で起こると考えられています。疲れた時や寝不足の時に起こりやすく、頭部の一部または全体にズキズキ、ガンガンといった言葉で形容されるような強い痛みが襲います。症状のひどい場合になると吐き気や下痢をともなうこともあり、寝込んでしまうことも珍しいことではありません。
また、人によっては目の前にジグザグ様の光が見えるといったケースもあるようです。
これだけいろいろと症状が出てくるわけですから長引きそうなものですが、片頭痛の場合は一晩寝たらすっかり治まるということが多いのも特徴です。寝たら治るのでそのままにしてしまいがちなんですね。
この偏頭痛、病院に行くと治療対象として対応してもらえ、トリプタン製剤という薬を処方されることが多いようです。このトリプタン製剤は脳の血管を収縮させる作用のある薬で、片頭痛などには一定の効果が認められた西洋薬です。錠剤や注射、点鼻スプレーなどがあり、激しい痛みがありすぐに対処したい場合には点鼻スプレーや注射が用いられます。90%以上に効果があるといわれています。
ただし、片頭痛の場合は対処療法的に薬に頼ってみても、また片頭痛を繰り返すということが少なくありません。また、鎮痛剤にばかり頼ることになっても体にはよくありません。
そこで予防治療としての西洋薬を処方されることもあります。
具体的にはアミトリプチリン、バルプロ酸ナトリウム、ロメリジン、プロプラノロールといったものです。なお、これらの中には妊婦が使用すると胎児に影響が出る可能性があるものもありますので、妊娠している方や妊娠している可能性がある方は診察時に医師に相談するようにしましょう。
これらの薬を飲むことで片頭痛を抑える可能性が広がりますが、これらの薬には眠気などの副作用もあります。仕事をしている人はちょっと悩ましいところですね。
そこで登場するのが漢方薬です。漢方薬は効き方こそゆるやかですが、西洋薬にあるような副作用がほとんどないのが大きなメリットです。片頭痛の予防だと、呉茱萸湯、当帰芍薬散、五苓散といった漢方薬が処方されます。
緊張型頭痛
次に緊張型頭痛です。このタイプの頭痛も非常に多く、一説によると頭痛の中で最も患者数が多いと言われているそうです。
緊張型頭痛は、肩や首の部分がひどく凝っており、後頭部から首筋にかけて圧迫感を伴って痛みます。片頭痛ほど激しく痛むわけでなく、寝込むまではいかないのですが、痛みが長引くケースが多いようです。
このタイプの頭痛の治療は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という薬が処方されることが多いようです。よく効くといわれていますが、長期間にわたり服用すると胃腸や腎臓を傷める危険があります。また月に10日~15日以上服用することで薬物乱用頭痛になるとも言われています。
薬物乱用頭痛とは頭痛薬を飲み過ぎることで引き起こされるまた違ったタイプの頭痛です。一般的には市販薬の飲み過ぎが原因の場合が多いといわれていますが、医師から処方される薬でも薬物乱用頭痛になりえます。
ほぼ毎日頭痛になっている、頭痛薬が効かなくなってきた、起床時から頭痛がする、といった場合にはこの薬物乱用頭痛が疑われますので医師に相談してみてください。
さて、緊張型頭痛の話に戻ります。
緊張型頭痛も予防的治療が行われます。痛みの原因にアプローチして取り除く治療や生活習慣や生活態度を見直すことで頭痛が発生しにくい環境を整えていきます。
この場合に処方される漢方薬としてはストレスが多い人向けの柴胡桂枝湯や冷え性なのにのぼせてしまう人向けの桂枝茯苓丸などがあります。
二次性頭痛
二次性頭痛とは背景に病気が隠れているタイプの頭痛を指します。頭痛が症状として現れる病気というのは、たとえば脳卒中や脳腫瘍、髄膜炎などです。このタイプの頭痛はそもそも病気が原因ですから病気治療を行うことになります。
ただし、脳卒中の後遺症としての頭痛の場合は漢方薬を処方するなどの対処がされることがあります。処方される漢方薬は釣藤散、八味地黄丸、牛車腎気丸などです。
以上、頭痛についてみてきましたが、自己対処する場合は頭痛のタイプがどのタイプかを把握できてないとかえって症状を悪化させる場合があります。
例えば、緊張型頭痛は首や肩のコリが原因です。対処として風呂などで体を温めて血流を良くしてあげると症状が和らいだりします。
対して、片頭痛は脳の血管が拡張して炎症を起こすことが原因だと考えられています。故に、片頭痛の場合は血管を収縮させるような方向で対処しなければなりません。
もし緊張型頭痛に対する対処を片頭痛に対して行うと拡張した血管をさらに拡張させることにもなりかねません。血管の拡張が痛みの根本原因なのに、その血管をさらに拡張させるような対処をしてしまうとよくなるどころかさらに頭痛は悪化しかねません。
つまりは頭痛に悩む人はまずは医師にかかってどのタイプの頭痛かを見極める必要があるわけです。くれぐれも自己判断で対処しないように気をつけましょう。