呼吸を減らしてストレス、冷え性、不眠、高血圧を改善~ガッテン!より

普段は無意識に行っている「呼吸」ですが、あることを意識するだけで、体にさまざまな良い変化を起こすことができます。たとえば冷え性改善や肩こり解消、血圧低下など、様々な健康効果が得られるのです。

今回は、呼吸をより良いものにする方法やその健康効果について詳しく紹介していた『ガッテン!』を中心に、情報をまとめていきたいと思います。

 

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1分間の呼吸回数

成人の平均呼吸回数は(吸って吐いてを一回と数えて)1分間に約15回です。
呼吸回数は特殊な器械で計測することができるのですが、この回数について、京都の介護福祉施設で最新研究を行っている東京有明医療大学の高橋康輝准教授は「呼吸の回数が減ると良い」と話していました。普段の呼吸の回数が減ると体に良い変化が起こるそうで、高橋氏は全国で1,000人以上の人にアドバイスをし、成果を上げてきたそうです。

番組が施設を取材した日も、呼吸を改善することで効果があったという人がインタビューに答えていました。

「目覚めがすごく悪かったが、スッと起きられるようになった。」
「冷え性で足にカイロを入れているくらいだが、体がポカポカしてきて熱くなってきた。」
「肩こりがなくなって、疲れもなくなってきた。」

3番目にインタビューを答えていた方は、肩こりがなくなっただけでなく、血圧が上137あったものが110台まで下がったそうです。
さらに、参加者のほとんどの人が「ストレスが減った」と答えていました。

 

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呼吸をコントロールする

25,000人以上を対象に、呼吸と血圧を調べた有名な調査があるのですが、血圧を測定する際に1分12回のペースで呼吸すると、そうでない時に比べて血圧がほぼ確実に低下するという結果が出たそうです。平均で8.13も下がったというのです。

呼吸と脳

呼吸回数を減らすと体に良い変化が生じる秘密は、脳にあります。
脳の中には「呼吸中枢」という呼吸を司る場所があります。その近くには「扁桃体」というストレスを検知する場所があるので、呼吸の数を減らすとストレスを感じにくくなるのです。

番組では、呼吸の回数を減らしたときの脳の様子を見るために、忍者の奥義を伝承している方に「息長(おきなが)」という呼吸の回数を極端に減らす技をやってもらい、その時の脳の状態をMRIで撮影していました。

ガッテン!より

赤い部分は活動が活発になっていることを、青い部分は活動が低下していることを示しています。
通常、MRIに入ると不安を感じるので赤い部分が増えるのですが…

ガッテン!より

息長をしている人の脳の扁桃体の部分は青くなっています。
呼吸の回数を減らすことでリラックスできているのです。

扁桃体はストレスを検知する場所で、不安や恐怖や怒りといった感情を生み出します。「自分は今、危険な状況下にある」と扁桃体が感じると、逃走したり怪我に備えたりするために体を“危険モード”に切り替えます。すると呼吸数の増加や血圧の上昇、心拍数の上昇、交感神経も興奮などの変化が体に生じます。これは本能なので、止めることができません。
しかし、呼吸だけは自分で制御することができます。

扁桃体が“危険モード”に入っているときでも、呼吸を抑えることによって扁桃体の隣にある呼吸中枢が扁桃体に作用して、“危険モード”を終わらせてくれるのです。

扁桃体について

扁桃体は脳の「大脳辺縁系」の中にあって、恐怖や不安、怒りなどに反応します。
精神科医の西多昌規氏によると、扁桃体は睡眠不足によっても過剰反応するそうで、「寝不足だと扁桃体が活性化する一方で、扁桃体と神経で結ばれていて、その活動を抑制する前頭前野の機能が低下する。その結果、扁桃体が怒りに“ハイジャック”される」といいます。

扁桃体が怒りや不安を長時間に渡って反応していると、うつ病や不安障害などの病気が引き起こされることがあります。扁桃体において不安・恐怖と判断されると、その情報は各部位に伝達されて不安症状が発現するため、扁桃体への情報入力を阻害する「GABA(γ一アミノ酪酸)」や「セロトニン」を脳内に増やす薬が治療に用いられます。

心身の不調が続く場合はこれらの症状である可能性もあるため、精神科や心療内科を受診しましょう。

参考:
“キレる大人”嫉妬・スマホ・睡眠の脳科学
向神経薬の基礎知識と臨床応用

海外では「普段の呼吸回数を抑えることでストレスを抑える」取り組みが広く行われています。
たとえばアメリカでは、のべ2千万人が呼吸を減らすトレーニングを受けています。
これだけ多くの人がトレーニングを受けているのは、911のテロがきっかけだそうです。社会の中に不安や恐怖が広がったことが影響した結果、トレーニングを受ける人が急増しましたが、コロンビア大学のリチャードブラウン博士らのチームが指導するトレーニングを6週間続けただけで、ストレスが平均30%も減ったそうです。

博士が注目している体の変化は、腸に起こる炎症の減少です。
腸に炎症を抱える人たちに呼吸回数を減らすトレーニングを指導したところ、体内から炎症を示すタンパク質が15%も減少したそうです。
腸内の炎症は薬で治療するのが非常に困難なのですが、呼吸をゆっくりにしたおかげで症状が大きく改善したそうです。博士は「深く息をするだけで体中すべてが強くしなやかに変わっていく」と話していました。

呼吸の回数を減らす方法

肺は柔らかい袋状の臓器で筋肉ではないので、自分で縮んだり膨らんだりすることができません。肺を収縮させて呼吸を可能にしているのは、横隔膜と肋骨の間にある肋間筋という筋肉です。
東京有明医療大学学長の本間生夫氏は呼吸について、以下のように解説していました。

「肋間筋が収縮すると胸郭が広がる。すると肺が広がるので 息を吸うことができる。
このような仕組みのため、胸の筋肉が硬くなってくると浅い呼吸になる。」

このような仕組みで成り立っているため、ストレッチなどを行って呼吸に使う筋肉を普段から柔らかくしておくことで「ストレスに負けにくい体」にすることができます。

まずは、吸う筋肉のストレッチから行います。
手を前に伸ばしながら、鼻から息を吸います。

ガッテン!より

それから、息を吐きながら手を戻していきます。(吐くときは鼻でも口でも構いません。)

ガッテン!より

一度に行うのは2〜3回で良いそうですが、思い出した時にやるという感じで1日に何回も行うようにしましょう。

次に、吐く筋肉のストレッチを行います。
おしりの上で軽く手を組み、顎を上げ、息を吐きながら、斜め下に思い切り伸ばしていきます。上体は動かさないようにします。

ガッテン!より

息を吸う筋肉は胴体の上の方に多く、吐く筋肉は下の方(腹筋あたり)に多いので、これらのストレッチをする際はその位置も意識しながら行うようにすると効果的です。

このストレッチは効果が確認されており、3ヶ月続けると呼吸回数が1分あたり平均0.8回減少したという報告があります。
小さな変化に聞こえるかもしれませんが、1日あたりにすると1,000回以上も呼吸回数が減ることになります。これだけ呼吸の回数が減れば不安が緩和されて自律神経が良くなるため、免疫も高まります。

このストレッチには、「横隔膜が柔らかくなる」という効果もあります。
普通の人の場合、大きく息をしても横隔膜は上下に2〜3センチほどしか動きませんが、鍛えたダイバーの方などは10センチ以上も動きます。
横隔膜が柔軟なほど呼吸の回数は減っていきます。

 

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鼻呼吸の大切さ

ストレッチの解説の中で「息を吸う時は鼻から」とありましたが、これはとても大切なことです。
広島大学大学院医学部の竹野幸夫氏によると、「鼻とその周りの副鼻腔でたくさんの一酸化窒素が作られる。一酸化窒素は血液の流れを良くして、血液循環の調節に大きな役割を果たしていると考えられている」といいます。
一酸化窒素は、血管の筋肉に作用して毛細血管を広げる働きを持つ物質です。
さらに、鼻歌を歌うと一酸化窒素が増えるという最新研究もあるそうです。番組で検証してみると、毛細血管を流れる血液の量が口呼吸のときの2倍になっていました。
こんなことも習慣にするといいかもしれません。

鼻呼吸と一酸化窒素

血管を拡張させて血圧の上昇を抑える一酸化窒素(NO)は、鼻粘膜から常に放出されています。鼻呼吸を行えば、口から息を吸うよりも一酸化窒素をより多く含んだ空気が肺に送られ、気道と血管が広がります。
さらに、一酸化窒素が鼻の奥にある嗅神経を刺激すると、嗅神経から脳内の視床下部へと刺激が送られ、ここから血管拡張の指令が全身に送られるため、動脈硬化の予防にも繋がるといいます。
これ以外にも、鼻呼吸には以下のようなメリットがあります。

  • 吸い込んだ空気が肺に入る前にいらないものを取り除き、温めて湿気を与える
  • 心拍数を下げる
  • 酸素が全身に効率的に行きわたる
  • 動いている筋肉にたくさん酸素が送られるので、疲労物質の乳酸が減少する

睡眠中に口呼吸になっていると睡眠の質が低下するため、口に低アレルギー性のテープを貼るなどするのも良いそうです。

参考:
「鼻呼吸」に変えるだけで痩せて健康になる
寿命をのばすワザ百科

まとめ

今回は呼吸が体調に及ぼす影響についてご紹介してまいりました。
呼吸を減らして扁桃体を“だます”ことで健康になる、というのは面白いですね。
ストレッチを習慣にして、より健康な体を目指しましょう。


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