手足のしびれの意外な原因~対処法と予防法~主治医が見つかる診療所より

体の一部に「しびれ」を感じることはありますか?

先日の『主治医が見つかる診療所』では、あるクリニックで開かれている「フットケア外来」を取材していました。その日外来を受診していた38歳の女性は、営業で外回りをしているため1日に1万〜2万歩も歩いているそうで、外反母趾の部分がじんじんと痺れたりするようになってしまったそうです。

 

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この外来では、診察を終えると「義肢装具士」という義足などを作る国家資格を持つ人が、足の型をとります。

主治医が見つかる診療所より

竹内一馬医師によると、これは「靴のインソールをつくるため」に行っているそうです。病院でインソールを作るというのは意外な感じもしますが、竹内氏によると「靴が合っていないことが原因で足が痛んだり痺れたりしている方も多い」といいます。そのような状況を放っておくと歩けなくなってしまったり、全身の筋肉や骨まで衰えていったりするため、患者の足にあった靴やインソールを作ることは重要なのです。

 

健康な人の足は下図のようにアーチ状になっています。

主治医が見つかる診療所より

しかし、この女性の足は平らになってしまっていました。

合わないハイヒールで歩き続けたために本来なら体重のかからないはずの部位が靴底にあたり続けるようになってしまい、痺れが出るようになっていたのです。

主治医が見つかる診療所より

このような人の靴に足裏のアーチを矯正する中敷きを入れれば、痺れと痛みを改善させることができます。

製作期間は1ヶ月ほどかかるそうですが、フットケア外来や足の外来、足の外科、靴外来などで足に病気の原因があると診断された場合は保険が適用されるため、費用は1万円ほどで済むそうです。

この女性はオーダーメイドの中敷きを着けると「土踏まずの部分が気持ちいい。楽になる」と話していました。

 

竹内医師は「痺れや痛みは大事なサイン」と指摘していました。

「足は第二の心臓。歩けなくなってしまうと健康寿命が短くなってしまう。脚にいつもとは違う痛みやしびれが出たら、全身のどこかに不具合が出ているというサイン」なのだそうです。

このサインを見逃さないために、今回は手足のしびれについて特集していきたいと思います。

 

 

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しびれを見過ごすと…

しびれに詳しい千葉一裕医師は「しびれは危険な病気のサインである可能性がある。放っておくと痺れがとれなくなったり、神経の麻痺、痛みといった症状が次々と出てきて、最悪の場合には排泄ができなくなったり、歩けなくなったりなどの大きな症状が出てくる」と解説していました。

 

日本靴医学会で評議員も務める野口昌彦医師は、靴の正しい履き方をレクチャーしていました。

「適切なサイズの靴を履き、かかとの方をトントンと床にあてて、かかとと靴をぴったりと合わせる。それから紐を先の方からきっちりと結んでいき、足首が動かないようにして履く。」

このように履くことができず、靴の中で微妙に足が動いてしまうような状態だと、次第にさまざまな障害が出て来る可能性があります。

 

しびれが進行し、歩けなくなる寸前まで

手足にしびれを感じているのにそのまま放置したために重い障害が残ってしまう人が、近年急増しているそうです。

番組に登場したピアノ教師のAさん(56歳女性)も、その一人です。

数年前に突然、手のしびれでピアノが弾けなくなってしまったそうです。本人によると「鍵盤を押すだけで痛くて痛くて。触れるだけで痛かった」といい、次第に両手に電気が走るようなしびれが出るようになりました。

しかし、毎回時間が経つとしびれが消えるため、あまり深刻には考えていなかったそうです。というのも、Aさんは以前に椎間板ヘルニアを患ったことがあり、その時に足がしびれるという経験を一度していました。当時は半年間、接骨院でリハビリをするだけで治ったため、「今回もその後遺症のようなものかな?」と考えて深刻には捉えていなかったのですが、これが間違いでした。

約1ヶ月後には、洗濯物を干すときにそれが濡れているか乾いているかを指先で感じることが出来なくなりました。その一方で、調理の際に冷蔵庫に入れていた冷たい肉に触れると、手のしびれと痛みを感じるようになってしまったそうです。この頃からAさんは「椎間板ヘルニアではないかもしれない」と思い始めましたが、しびれはあっても手足が動き、生活が出来ないほどではなかったため、我慢してしまいました。

その後、しびれはどんどん強くなっていき、本人の話では「正座したあとに立てない状態がずっと続いている感じだった。足は足首から先が全部しびれて、手は右の小指以外の9本の指が痺れていた」という状態にまでなってしまいました。

そして最初の異変からわずか3ヶ月で、杖がなければ歩けない状態にまでなってしまいました。

 

Aさんは整形外科を受診し、MRI検査を受けました。

その結果、「頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)」と診断されました。

Aさんの不調の原因は、首にあったのです。

下図はAさんの首の画像です。

主治医が見つかる診療所より

重要な神経が通っている「脊髄」の一部が圧迫されて細くなっています。

首の骨や軟骨が変形して脊髄が圧迫され、神経が細くなってしまうことで、痺れや麻痺が引き起こされます。

手術を担当した千葉医師によると「加齢が原因。この病気は年齢が上がるほど(50歳以上から)急激に増えてくる」といいます。人間の頭は平均5キロ(ボウリングの11ポンド)もあるため、年齢を重ねた分だけ負担がかかり、変形しやすくなるのです。

 

頚椎症性脊髄症には、徐々に進行するという特徴があります。

悪化すると完治させるのが困難になり、手遅れになってから来院する人の中には、手が使えないためにご飯を自分で食べられなくなったり、歩行困難が深刻化して寝たきりになったりする人もいるそうです。長期間にわたって圧迫され続けて損傷がひどくなった神経は、手術で圧迫を取り除いても感覚は元に戻らなくなってしまうのです。

幸い、Aさんはピアノを弾くことも普通に歩くこともできるまでに回復しましたが、左手には軽いしびれが残っているそうです。

 

・頚椎症性脊髄症について

重要なのは早期発見ですが、我慢してしまう人も少なくないそうです。

千葉氏によると、「しびれが軽いうちは、病院に行こうと思わない人が多い。特にご高齢の患者さんは、年だからしょうがないと考えて行かない人が多い」と話していました。

 

頚椎症性脊髄症には「短期間で症状が進むことは稀」という特徴もあって、非常にゆっくり進行していくそうです。厄介なことに、脊髄はゆっくりと圧迫されると異変が出づらく、症状が出る頃にはかなりのダメージを受けてしまっているそうです。

Aさんのように冷たいものを触って痛みを感じるのは、神経が傷んできて出る症状のひとつだそうです。

 

頚椎症性脊髄症について、秋津嘉男医師は「一口に“しびれ”といっても種類はいろいろあるので、病院で診てもらう際は“こうする時にこういう症状が出る”と具体的に伝えることが大事」と話していました。

また、中山久徳医師によると「頚椎を患っている人には、遠近両用の眼鏡を使っているひとが多い」といいます。「遠近両用眼鏡では、近いものを見るのはレンズの下の方で見るので、パソコンの作業などを長時間続けると、頭を上げて無理に後ろに首を反らせる姿勢が続くため、頚椎に負担がかかって発症する。随時ストレッチを入れてリラックスさせることが大切」だそうです。

 

厄介なのは、最初は小さなしびれでも、いずれ複合的な障害に発展してしまうという点です。しびれで出歩くことが少なくなると筋肉が衰えていき、やがて寝たきりになることもあります。

頚椎症性脊髄症は健康寿命を短くするという事も覚えておきましょう。

 

 

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頚椎症性脊髄症を見分けるポイント

頚椎に原因があってしびれが出ている場合は、首を動かすと手足にしびれが出たり強くなったりするため、座った状態で首をゆっくりと後ろに反らした時に手足にしびれが出た場合は、神経が圧迫されている可能性があります。

また、シャツのボタンがとめにくくなったり、字がうまく書けなくなったり、箸が上手に使えなくなったりなども、初期のしびれの症状かもしれません。

 

簡単なチェック法もあります。

手をまっすぐ前に伸ばして、グーパーの動きを素速く繰り返します。

10秒間に20回以上が目安になります。

片手ずつ行い、指を完全に伸ばしてからしっかり握る、という点を意識して行いましょう。

回数の少ない方の手で20回以上行えれば問題ないと判断できるそうです。

 

千葉氏は「頚椎症性脊髄症は腰の病気ほどは多い疾患ではないので極端に心配する必要はないが、しびれが続いたり悪化していたりするようなら早めに病院へ」と話していました。

 

頚椎について

頚椎というのは「椎骨」と呼ばれる7つの小さな骨が積み重なってできている、首の骨です。頭を支える役割だけでなく、この骨の中を通っている神経の束である「脊髄」を守る役割もあります。

この脊髄が首の下で枝分かれして全身に向かって伸びていくので、頚椎の中で圧迫されたりすると全身の様々な場所で痺れや痛みが生じるのです。

頚椎は非常にデリケートなので、日常生活のさまざまな動作や習慣、行動でいつの間にか負担をかけていることがあります。

 

パソコンやスマホ

長時間うつむくような姿勢を続けていると、頚椎に非常に負担がかかります。

16号整形外科の山田朱織院長によると、「うつむくだけで、頭部の重さの約3倍もの負荷が首にかかる」といいます。

頸椎は本来、前方に向かって緩やかなカーブを描いているのですが、パソコン作業などで猫背の姿勢を続けていると首が前方に突き出る『ストレートネック』になってしまいます。

ストレートネックになると首や肩のコリや痛みからはじまり、やがて「頸椎症性神経根症(しんけいこんしょう)」という病気になり、腕にしびれや痛み、脱力などが起こってしまうかもしれません。

 

自動車の運転

東京脳神経センターの松井孝嘉理事長によれば、運転の際の姿勢が悪いと、“ドライブ首”と呼ばれる状態になることがあるそうです。

ハンドルにシートを近づけすぎて前かがみなると猫背になって首に負担がかかります。また、シートを倒しすぎると、前を見るために無意識に首を起こそうとするため、首に負担がかかります。

 

以上のような動作に限らず、悪い姿勢を続けることは頚椎に負担をかける可能性があり、将来的に重い病気につながるかもしれないということを覚えておくと良いでしょう。

 

参考:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%B8%E6%A4%8E

https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK0302I_T00C13A4000000?channel=DF140920160919

https://ovo.kyodo.co.jp/news/life/a-987910

 

 

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足の裏に感じたしびれ

子どもに歌や踊りを教える仕事をしているTさん(47歳女性)は、34歳のときに体に異変が現れました。仕事中、「急に左足の裏に、ぴりっと痺れるような痛みが出た」といい、「正座して立つときのようにジーンと痺れるような違和感」が左足の人差し指と中指の付け根の部分にだけ出たそうです。

しかし、極端に痺れるわけではないので、そのまま4年間放置していました。

痛くなることが日に日に増えてきていき、歩くだけで足の裏に痺れと痛みが襲うようになったので病院に行くと「椎間板ヘルニア」と診断されそうですが、治療を開始してもまったく治らなかったそうです。3ヶ月後には2軒目の病院で診てもらいましたが「ちょっと原因がわからない」と言われてしまったそうです。

再び我慢をはじめてから1年ほど経ったころ、家族と音楽のライブで立ち見をしていた際に今まで感じたことのない激しい痛みを感じ、まともに歩くことができなくなってしまいました。

これをきっかけに訪れた3軒目の病院で「モートン病」と診断されました。

 

モートン病について、Tさんの治療を担当した羽鳥正仁医師によると「足の裏の神経が繰り返しの衝撃によって炎症を起こす病気で、足の指に限局した(狭い範囲に限られた)しびれが特徴」のある病気だそうです。悪化すると神経がコブのように固まった「神経腫」ができ、激痛に襲われるようになります。

Tさんはこれを手術で摘出しました。

主治医が見つかる診療所より

術後2週間くらいで痛みもしびれもほとんどなくなったTさんは「今はもう本当に外に出るのが楽しい」と話していました。

 

モートン病の原因

足の裏に負担がかかる姿勢や歩き方を続けていることや、足に合わない窮屈な靴を履いていることなどが原因になるそうです。

野口医師によると「Tさんの経過は典型的。足の先の細い神経なのでレントゲンには映らず、初期はMRIを撮ってもわからない」といいます。

 

しびれが生じる場所は人差し指と中指の間か、中指と薬指の間が多いそうです。

 

モートン病について、南雲吉則医師は「神経腫というのは、タコや魚の目のように刺激が加わっているとそこにどんどん細胞が増えていくことで塊になってできる。患部のところを押すと、それより抹消の部分がしびれるという特徴がある」と解説していました。

先端に消しゴムがついている鉛筆など弾力のあるもので人差し指〜薬指の辺りを押してみて、そのあたりを押したときだけしびれや痛みを感じる場合は、モートン病の可能性が高いということになり、広い範囲でしびれや痛みを感じる場合は違う病気が考えられるといいます。

いずれも、長期間収まらない場合は足の専門医がいる整形外科を受診するようにしましょう。

 

足を健康な状態に保つ

野口医師は「足のアーチが重要なので、普段から鍛えるようにすべき」と指摘していました。そのために紹介されていたのが「タオルギャザー」という運動です。

タオルを1枚床に敷いて、椅子に座って行います。

主治医が見つかる診療所より

かかとを床につけて、指でタオルを手前の側に引き寄せます。それから指を上げて、またタオルを掴んで引き寄せる、という動きを繰り返します。

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足の指を大きく開くよう意識することが重要です。

1日1回タオル1枚を手繰り寄せるようにしてみてください。

 

丁宗鐵医師は、この運動について「足の裏には漢方では湧泉(ゆうせん)というツボがある。ここを刺激することにもなるので、疲労回復にもいい」と話していました。

姫野友美医師は「足の指は体のバランスをとる際にとても重要な働きをしている。しっかりと指が開くというのはとても重要なので、その目的で5本指ソックスや5本指ストッキングを履くようにすると良い」と勧めていました。

 

まとめ

最後に、上山博康医師が重要な指摘をしていました。

 

「成人病(高血圧や高脂血症、高血糖など)の解消方法は運動しかない。しかし足がダメになったら対処できなくなり、それらの病気が進んでしまう。さらに怖いのは、出歩かないことによって孤立してしまうこと。これはうつ病や認知症などにつながる」

 

足の病気は、それ自体が他の病気の原因にもなりますし、病気を進めさせてしまうことにもなるのです。

しびれが出たら油断せずに、専門医がいる病院で診てもらうようにしましょう。

 


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