先日の『チョイス@病気になったとき』のテーマは、「人間ドック」でした。
人間ドックについて多くの人がいだく疑問を5つにまとめて、わかりやすく解説していました。
その疑問とは次の5つでした。
費用が高くない?
どの検査を受ければいいの?
もっと安く受けられないの?
受けていれば安心?
なんのために受けるのか?
異常値があった場合には生活指導も行われるのが人間ドックの特徴のようです。管理栄養士の田村かおりさんは、(結果がすぐに出ない)健康診断と違い、人間ドックでは
結果を踏まえて栄養や運動などの指導ができるのが大きなメリット
だと指摘。
新潟の農家Nさん(60代男性)は、人間ドックを毎年受けることにより過去の数値との比較や推移を見ることができるため、年に1度を受けることにしているそうです。
1年前の血液検査で中性脂肪や腹囲の値に異常が見つかったNさんは、指導を受けて、毎日の体重の記録、1日1万歩歩くこと、食事の改善に取り組みました。この結果、1年後には中性脂肪や腹囲も基準値内になり、生活習慣病の予防の点で人間ドックを受け続けるメリットを実感したそうです。
「生活習慣病の対策と管理」
「動脈硬化の予防」
「がんの早期発見」
この3つが主な目的になるそうです。
今回の専門家は、人間ドックやがんの検査に詳しい、東京ミッドタウンクリニック健診センター長の森山紀之医師。人間ドックを受けているのは、受診が必要な人のうちのわずか3分の1なのだとか。目安として、男性は40代から、早くからがんにかかりやすい女性は30代から受けたいとのことです。男女で違いがあるのですね。
男性・・・40代から
女性・・・30代から
人間ドックの受診機関を毎年変えてもいいのか?という質問には、かまわないが、1度ひっかかった検査項目があり、経過観察と言われた場合には、翌年も同じところで受診するのがいいのではないかとのことでした。
費用が高くない?
人間ドック受診の一番のネックになりそうなのが、費用の高さ。森山医師によると、費用の平均は、
1日ドックで4万4,000円
2日ドックで6万8,000円
だそうです。しかし!
補助制度があるというのです。健康保険組合や共済組合に入っていると、そこから補助金が出ることがあるので、相談・確認してほしいとのこと。新潟のNさんの例では、1日ドックの費用3万9,000円のうち、市や国保連合会から2万円の補助が受けられ、自己負担は1万9,000円だったそうです。持ち出しは半額で済んだことになりますね。
受けられる補助をしっかり調べ、実際に支払う額がいくらになるのか確認すると、意外と高くないかも知れない、という結論です。
「上部消化管X線造影」と「上部消化管内視鏡検査」の比較
人間ドックでは、「上部消化管X線造影」と「上部消化管内視鏡検査」のどちらかを選択するようになっていること多いのだとか。
チョイス@病気になったときより
このようなとき、どちら選べばいいのでしょうか?
「上部消化管X線造影」は、バリウムを飲み、体を回しながらエックス線の撮影をするもの。
チョイス@病気になったときより
胃の様子ですが、黒く映っているのがバリウムで、胃がはっきりと映っています。
37歳のときに、このバリウムでの検査で異常が見つかったのはSさん(女性)。より詳しくチェックできる内視鏡検査にまわされ、胃がんのステージⅠAであることがわかったそうです。内視鏡の映像だと、素人でも一目で異常がわかりますね。
チョイス@病気になったときより
さてステージⅠAという言葉が出てきましたが、がんのステージにはどのような段階があるのか番組中には説明がなかったので、調べてみました。わかったのは、がんの部位によってステージの判断基準も違ってくるということ。ですので、胃がんのステージに絞って調べてみました。
ステージは、がんの深さ(粘膜だけなのか、より深く達しているのか)とリンパ節への移転(どれだけ遠くへ移転しているか)の度合いの組み合わせで決まるようです。もっとも早期のがんがステージⅠになりますが、同じステージⅠでも、リンパ節移転がなければⅠA、胃に接したリンパ節に転移があればⅠBとなります。またリンパ節移転がなくても胃の筋層までがんが達していればⅠBとなるようです。詳しくは次のページで確認してみてください。
⇒http://www.saechika.net/kbk/main1/gan2/ig-suteeji-dai.html
いずれにしても、SさんのステージⅠAというのは、もっとも早期のがんであることがわかります。
さて、この段階で見つかると、95%の患者は完治するとのこと。Sさんは手術を受け成功し、元気に過ごしていますが、検査していてよかったと語ります。
もうひとつの例は、「上部消化管内視鏡検査」(胃カメラ)で、さらに早期のがんを発見したMさん(男性)。それまではずっとバリウムの検査をしてきたので、たまには内視鏡をしてみようと思い立ったのだとか。内視鏡の映像には超早期の胃がんが映し出されました。バリウムの検査では見つかりそうにないものでした。
チョイス@病気になったときより
手術をすることにしたMさんですが、初期の胃がんなので内視鏡での切除で済んだとか。「内視鏡的粘膜下層剥離術」という手術だそうです。その方法は、
胃の中に内視鏡を入れ、
チョイス@病気になったときより
がんの周囲に特殊な液体を注射してふくらませ、
チョイス@病気になったときより
内視鏡の先端の特殊なナイフでがんを切除、
チョイス@病気になったときより
切除した部分を胃から取り除きます。
チョイス@病気になったときより
開腹しなくてもいいというのが、画期的ですね!体への負担も少なく、治りも早いそうです。
森山医師によると、バリウムでも早期がんは発見できるが、でこぼこがない超早期のがんまでは見つからないとのこと。また、内視鏡ではまだがんではないものの、がんのハイリスクになる「腸上皮化生」(ちょうじょうひかせい=胃の粘膜が腸の粘膜化すること)をも見つけることができるそうです。「腸上皮化生」がわかったら、ピロリ菌の駆除をしたり、毎年検査を受けるといった対策がとれるのです。
<胃の「X線造影」と「内視鏡検査」の比較、まとめ>
チョイス@病気になったときより
胃カメラのほうが精度は高いことがわかりましたが、のどへの麻酔か全身麻酔への抵抗感や、費用がかさむという面もあります。森山医師自身は、2つの検査を毎年交互に受けているのだとか。
検査を安く受けるチョイス
超早期がんを発見したMさんの内視鏡検査は、人間ドックではなく、新潟市が全国でもいち早く取り入れた内視鏡を含むがん検診で、費用は60歳以上なので無料だったというのです。この胃がん検診の取り組みにより、胃がんによる死亡率は新潟市で6割近く減ったというから驚きです。
今回のもう一人の専門家、国立がん研究センターがん予防・検診研究センター室長の濱島ちさと医師によると、全国ほとんどの自治体の住民検診で胃がん(エックス線)、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの5つは受診できるとのことです。胃の内視鏡検査も300の自治体で受けられるそうです。
費用が安くて済む自治体の検診も活用したいものです。
受けていれば安心なのか?
健康には自身があり、3年毎に受ける人間ドックでもずっと異常のなかったKさん(女性)。60歳になってからむくみやだるさが現れるようになったそうです。人間ドックで異常なしとされたものの、甲状腺の専門医を受診したところ、「甲状腺機能低下症」と診断されたのだそうです。甲状腺ホルモンを作る細胞が減っていました。40-50代がかかりやすく、女性に多い病気なのだとか。
人間ドックで甲状腺の異常を見つける検査は、超音波(エコー)検査と血液検査の2つですが、その血液検査にホルモンの検査項目は入っていないのです。
つまり、人間ドックですべての病気を見つけるのは不可能ということです。
人間ドックでは、甲状腺ホルモン検査は「オプション」になっていることが多いとか。ただし、このような病気は、症状が出てから受診しても、がんのように手遅れになることは少ないと、森山医師は指摘します。体に異常があれば医療機関を訪ねるようにとのこと。
この甲状腺ホルモン検査のように、人間ドックにはたくさんの「オプション」があります。
チョイス@病気になったときより
このオプションからどう自分に合ったものを選択するかが重要とのこと。例えば喫煙者の70代男性であれば、森山医師は肺のオプション検査2種、血液検査の肝炎ウィルス検査、前立腺のPSA検査を推奨していました。前立腺がんは、若い人はほとんどならないので、60歳を超えると追加してほしい検査だと言います。
40代女性では肝炎ウィルス検査、子宮の細胞診、乳房のマンモグラフィの3種と、乳腺が発達している場合は乳房の超音波検査を追加したいとのことでした。
結論としては、年齢や性別、生活習慣に基づいてオプションを選ぶべきということがわかりました。
まとめ
人間ドックのメリットや健康診断との違い、費用を抑える方法やオプションの選び方などがわかり、興味深い内容でした。
番組を見ながら思ったのは、人間ドックはどれぐらいの頻度で受ければいいのかということです。調べてみると、「受診頻度の公式」を提唱している医師がいました。(http://dock.cocokarada.jp/qa/02_23.shtml)
それによると、
100÷(年齢)=受けるべき間隔(小数点以下切り捨て)
だそうです。ざっくりいうと、50歳までは2年に1回、51歳からは毎年受診ということです。ただし50歳前でも人間ドックで異常があったときは、以降は毎年の受診をすすめています。
自分の健康を守るための人間ドックなので、番組の内容を参考にして、受けられる補助や自治体の検診も活用しながら、自分にあったものを適切な頻度で受診したいものですね。