「最近、疲れやすくなったなぁ…」
年齢を重ねていくと、こんな風に感じる人も多いのではないでしょうか。
スタミナをつけようと、肉を食べたり運動したりしているのにあまり変わらないという方は、もしかするとそのやり方に問題があるのかもしれません。
というのも、スタミナアップの鍵は筋肉量などよりも細胞内にある「ミトコンドリア」という存在にあるというのです。
そこで今回は、ミトコンドリアについて特集していたNHK『ためしてガッテン』を参考に、効果的なスタミナアップ方法をまとめておきたいと思います。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]ミトコンドリアとは
まずは、ミトコンドリアがどのようなものであるかを理解しておきたいと思います。
ミトコンドリアは細胞内に存在する器官で、一つの細胞に数百〜三千個存在しています。
ためしてガッテンより
今では私たちの体の一部となっていますが、もともとは別の生き物でした。
16億年前、ミトコンドリアの祖先は海の中でバクテリアとして存在していました。
あるときにそれが他の生物の体内に入り込んでしまったことで「真核生物」(身体を構成する細胞の中に細胞核がある生物)が誕生し、その結果、ミトコンドリアは真核生物の細胞を構成する一部として存在するようになったのです。
細胞内のミトコンドリアは取り込まれた酸素や糖、脂肪を「ATP」という物質に変換しています。
ATPは筋肉を動かしたり脳の神経伝達を助けたりする体内のエネルギー源で、蛍やホタルイカの光の源としても知られています。
ためしてガッテンより
この物質が1日にのべ50キロも体内で生成されては消費されているのだそうです。
このように大切な働きをするミトコンドリアですが、加齢によってその数が減っていってしまいます。それにつれてATPの生成量も減り、疲れやすくなるというわけなのです。
ある実験では、遺伝子操作によってミトコンドリア量を減らしたラットと通常のラットに同じ負荷の運動をさせると、ミトコンドリア量の多い通常のラットの方が長時間走り続けることが出来たのだそうです。
ためしてガッテンより
このようにスタミナと密接に関わっているミトコンドリアですが、番組ではミトコンドリアを増やす“スイッチ”が紹介されていました。
その“スイッチ”を理解して運動すれば、歳を重ねてもスタミナをアップさせることが出来そうです。
ミトコンドリアを増やす“スイッチ”
信州大学の能勢博教授は中高年の体力アップを研究しています。
最初に研究したのはウォーキングで、250人に毎日1万歩のウォーキングをしてもらい、5ヶ月後の体の変化を調査しました。
さぞ健康になっているだろうと思いきや、血圧が若干下がった以外は他に目立った変化がなく、持久力はむしろ下がってしまったといいます。
しかし、「インターバル速歩」という通常歩き3分と早歩き3分を交互に繰り返すウォーキング法を取り入れると、被験者たちの血圧は大きく下がり、持久力もアップするという結果が出ました。
ためしてガッテンより
これはなぜなのでしょうか。
日本医科大学の太田成男教授によると、「ミトコンドリアはエネルギーが足りないと感じたときに増える仕組みが体にはある。」とのこと。
つまり、人間は「しんどい」と感じた瞬間にミトコンドリアを増やす“スイッチ”がオンになるということなのです。
ブドウ糖や脂肪があるかぎり、ミトコンドリアは同じペースでATPを作り続けます。
ところが運動が激しくなって人間が「しんどい」と感じるあたりでATPの生成が追いつかなくなり、身体は一時的にATP不足に陥ります。これを酵素が察知するとミトコンドリアが分裂を始めて個体数が増え、結果的にATPが増えるというわけなのです。
ミトコンドリアが増えてATPをつくる余裕が出た状態で、私たちは「スタミナがついた」と実感することができるのです。
運動をする際に注意すべきポイントとしては、ATPが足りなくなるのは「しんどい」と感じる運動を始めてから1分経ってからなので、1分間「しんどい」状態を続けることが必要です。「しんどい」と感じたところで満足して動きを緩めてしまってはいけません。
ちなみに太田教授によると「見た目でもミトコンドリアの多寡はわかる。姿勢がいい人にはミトコンドリアが多い。」と述べていました。姿勢を維持する筋肉にはミトコンドリアが多いからなのだそうです。
ですから、1分間背中をぴんと伸ばし続けることもミトコンドリアを増やす効果があるそうです。
日常の中でスタミナアップ
番組に登場したYさん(中年男性)は通勤、退勤を徒歩でしているのですが、これをちょっと工夫して、通常歩きと早歩きを1分間隔で交互に繰り返しているのだそうです。職場に着いてもエレベーターは使わず、6階のオフィスまで階段を一段抜かしでのぼって行っていました。
次に登場したTさん(中年女性)も、買い物に行く際にストップウォッチを持参して「インターバル速歩」を実施。家の中ではやさしいスクワットも実践していました。
ためしてガッテンより
こうした、少しだけ「しんどい」と感じる運動を日常生活の中に取り入れて、週あたりで合計60分行うことを継続していくと…
1週間で汗をかきやすくなって夏バテ防止につながり、
2週間で体重が1キロ減少し、
1ヶ月で歩くのが楽になり、
2ヶ月で身体が疲れにくくなる
…というのです。
ちょっとの工夫でこれだけの効果ですから、やらない手はありませんね。
ただし、夏の暑い時間帯に早歩きなどをすると熱中症の危険もあるので、朝夕の涼しい時間に行うようにしましょう。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]ミトコンドリアを増やす食事法
ミトコンドリアの数を増やすために、太田教授は「カロリー制限」を推奨していました。
1日の消費カロリーから25%を引いた食事を食べ続けると、3週間後にミトコンドリアが30%ほども増加する例も紹介されていました。
カロリー制限をすることで「長寿遺伝子」のスイッチがONになり、活発化した長寿遺伝子の働きによってミトコンドリアが増えるのだそうです。
長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)
サーチュイン遺伝子は飢餓やカロリー制限によって活性化されるが、この他に赤ワインに多く含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールによって活性化される。このことは高カロリー食マウスを使った実験でも確認された。ただし、グラス一杯の赤ワインに含まれるレスベラトロールの量は実験に使われた投与量の0.3%に過ぎず、これは人間の体重に置き換えると1日にボトル100本前後飲まなくてはならなくなり、赤ワインでサーチュイン遺伝子を活性化するのは非現実的である。
また、身体はカロリー制限されるとエネルギーが足りないと感じるためにミトコンドリアを増やそうとする、という働きもあるそうです。
ただし、やせ過ぎの人や65歳以上の人がカロリー制限をすることは控えたほうがよいそうなので、ご注意ください。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]ミトコンドリアの働きを促す食べ物
ミトコンドリアの働きを助ける栄養素も紹介されていました。
ためしてガッテンより
「タウリン」はミトコンドリアを増やすのに必要な栄養素で、「ビタミンB群」と「鉄」はすでに存在しているミトコンドリアの働きを促す栄養素だそうです。
以下に、これらの栄養素を多く含む食材をまとめておきます。
タウリンが多く含まれる食物は…
※100mgあたり
真だこ 900-1670g
イカ 700mg
カツオ 160-830mg
ぶり 180-670mg
あじ 230mg
さんま 180mg
イワシ・サバ 170mg
サーモン 55mg
まぐろ 32mg
サザエ 1500mg
ホタテ 670-1000mg
牡蠣 70-1180mg
しじみ 32mg
はまぐり 550mg など
ビタミンB群が多く含まれる食物は…
100gあたり
豚レバー 3.6mg
牛レバー 3.0mg
焼き海苔 2.3mg
やつめうなぎ1.7mg
青海苔 1.6mg
わかめ 1.5mg
ソーセージ1.4mg
キャビア 1.3mg
アーモンド1.1mg など
鉄が多く含まれる食物は…
[sc:アドセンスレスポンシブ ]100gあたり
たにし 19.4mg
煮干し 18.0mg
干しえび 15.1mg
削り節 9.0mg
どじょう 5.6mg
あゆ(焼き)5.5mg
しじみ 5.3mg
赤貝 5.0mg
ほっきがい4.4mg
このわた 4.0mg
エスカルゴ(水煮缶詰)3.9mg
あさり 3.8mg
くさや 3.2mg などビタミネより
まとめ
ただ運動をしたりトレーニングを積んだりしても、スタミナが増すわけではないことがわかりました。
「しんどい」を1分以上続ける運動法や適切な食事法など、ミトコンドリアを意識して疲れにくい身体を目指しましょう。