毎年、春先になるとマスクが必需品で、日によっては目を覆うゴーグルタイプの眼鏡をかける。洗濯物は部屋干し、外出先から帰宅すると衣服をすぐに着替えてパタパタとホコリを払う。
花粉症に悩む方の中にはこうした経験をされている方も少なからずいらっしゃいます。
しかし、ここ数年、こうしたわずらわしさから解放される方が増えてきているそうです。花粉症に劇的に効果がある治療法が普及しつつあるからです。
花粉症の根治が期待できる舌下免疫療法
その治療法とは『舌下免疫療法』。
舌下という名称からも連想できますが、この治療法は舌の下側にアレルゲンとなる花粉をほんの少し混入させた液体(エキス)をつけることで徐々に体をアレルゲンに慣らしていくという治療法です。
劇的な効果と書きましたが時間的に劇的なのではありません。むしろ治療期間は長期に及ぶとされ、一般的には2年~3年程度は治療に取り組む必要があります。
では何が劇的なのか?
それは効く割合が劇的に多いということです。一説によればこの療法により症状が改善した人は8割以上。試した人の多くが効果を実感できている療法なのです。
従来の花粉症治療では、アレルゲンである花粉に体が反応しないようにする根本的な治療法ではなく、かゆみや鼻水などの症状を抑えることに主眼が置かれた対症療法が主体でした。これはこれで多くの人を助ける治療法ではありますが、薬を休むと同じ症状が再発しますので、同じ薬を常用し続ける必要があります。しかし、同じ薬を続けていれば、やがてはその薬の効果も悪くなり、より強い作用がある薬にするか、違う薬を処方してもらうかしなければなりません。いずれにしてもこれは大きな欠点でした。
しかし、舌下免疫療法は花粉への反応そのものをなくしてしまいますから根治の可能性も期待できる夢の治療法だといえます。
[sc:アドセンスレスポンシブ ]副作用も軽微
アレルギー対象の物質を取り込む治療法ですから強い副作用を心配する声もあります。しかし、実際にはごく微量から始めますから副作用も軽微です。
臨床試験では約1割の人に副作用が出たものの、それは口やその周辺にかゆみや腫れが出て15分から1時間程度で治まるという程度のものなのだそうです。それも体が徐々に慣れていきますから、花粉症シーズンにマスクとゴーグル常用で過ごさなければならない不便を考えると大したことはないと割り切る人がほとんどのようです。
ただし、初回服用時にはアナフィラキシーショックが起こる可能性もあるそうなので注意が必要です。もっとも、初回服用は病院で行うはずですから万一の時でも十分に対応は可能なはずです。
舌下免疫療法薬「シダトレン」
シダトレンとは、舌下免疫療法用に鳥居薬品が開発した薬です。保険適用になっており、病院でこの治療法を受けるとなるとシダトレンが処方されるはずです。
処方は二週間単位で、最初のうちは少しずつ増量されて体を慣れさせるようになっています。
また、注意点もあります。
・激しい運動をしない(服用前後2時間)
・お酒を飲まない(服用前後2時間)
・入浴しない(服用前後2時間)
・冷蔵庫で保管する
激しい運動はともかく、お酒や入浴といったものに制限が入るということはやはり朝に服用するのがよさそうです。
シダトレンの効果はスギ花粉限定
シダトレンは数ある花粉の中でもスギ花粉限定の薬で他の花粉に対するアレルギーには効きません。よって、花粉症というくくりだけでなく、スギ花粉アレルギーであるかどうかの確定診断が必須になります。
また、治療を始めるタイミングですが、花粉症シーズンではなく花粉が飛散してない時期にスタートさせる必要があるそうです。
舌下免疫療法の一番のデメリット
デメリットと書きましたが、ハードルといった方が適切かもしれません。シダトレンを服用した舌下免疫療法の最大のハードルはその治療期間の長さにあります。
2年~3年の間は来る日も来る日もこのシダトレンを服用しなければなりません。
治療を始めていきなり効果が出るものではありませんから、最初の花粉症シーズンはちょっと期待外れかもしれません。「こんなものか」と、人によっては不信感を持つこともあるでしょう。
そういった状況を乗り越え、数年間、毎日服用する。これができるかどうかが花粉症を根治させることができるかどうかの最初の分岐点といえます。
続けるには生活リズムの中に取り込むことが必要でしょう。
どんな人が治療を受けている?
やはり花粉症のせいで生活の質が著しく落ちている人たちがこぞって治療を受けているようです。ただ、症状がきつい人ばかりかといえばそうでもありません。比較的軽症な人であっても、今後のことを考慮して早めに受診する人もいるようです。
例えば若い女性。
花粉症というのは妊娠中にひどくなるケースが多いそうです。ホルモンバランスが崩れる上に赤ちゃんに栄養を補給しなければなりませんから母体の免疫力が下がってしまうわけです。
しかし、花粉症がひどくなっても、妊娠中に使用できる薬は限られています。そのため、妊娠中に花粉症が悪化してもただただ耐えるしかないという状況に陥ることもありえます。
そうならないために、症状としては軽くても妊娠してないうちに治しておきたいという理由から若い女性が治療するケースがあるのだそうです。
他にも受験を控えた中高生の治療も目立つようです。受験シーズンは花粉症シーズンと重なりますから受験当日に花粉症に悩まされないためにも、、、という配慮のもと、受診をするのでしょう。
今後はさらに治療法も進むでしょうし、花粉症が治る病気になる日も近いのかもしれません。