潰瘍性大腸炎を劇的改善!便移植療法の事例と便バンク~その原因、腸にあり!より

 

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私たちの健康維持に関して、最近は「腸」の働きが注目されることが多くなってきました。腸は体全体に大きな影響を与える器官だと言うことが、だんだん分かってきましたね。その「腸」に起こる様々な症状の中で、『潰瘍性大腸炎』と言うとても恐ろしい病気があります。あまり聞きなれない名前の『潰瘍性大腸炎』ですが、原因もまだよく分かっていない難病だそうです。その『潰瘍性大腸炎』の実例と、最新の治療法について「その原因、腸にあり!」で詳しく紹介していました。

大腸がんのリスクも高くなる

『潰瘍性大腸炎』とは一体、どのような病気なのでしょうか。
藤田保健衛生大学の大宮直木医師によりますと
「自分の大腸の粘膜を自分で攻撃してしまっている状態です。免疫が過剰に働いているとか、腸内細菌の影響とか、さまざまなことが複雑に絡み合って発症すると言われています」

つまり、大腸の粘膜が炎症を起こして、潰瘍やただれができてしまう状態です。このような状態になった大腸の粘膜は正常な機能を失ってしまい、水分を吸収できずに下痢や血便、さらに炎症による発熱や腹痛、そして大量出血による貧血、食欲不振による体重の減少などさまざまな症状が現れると言われています。

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その原因、腸にあり!より

そしてこの病気の原因については、現在はまだ明らかにはなっていないそうです。
そのため治療法も基本的には投薬治療が中心の対処療法となり、決め手となるような治療法はまだ確立されていない、国の難病指定の病気です。

さらに恐ろしいのは、この病気を長年わずらっていると、大腸がんのリスクが高まると指摘されていることです。

大宮医師は次のように話していました。
「一番心配なのは大腸がんとの合併です。命に危険を及ぼすような状態になることもあります」

さらに近年ではこの病気を発症する人が増加傾向にあることも分かってきたようです。

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その原因、腸にあり!より

日本における患者数は16万人以上。毎年おそよ1万人が発症していると見られます。
治療法もまだ確立されていない難病が、いつ私たちの身に起こるかもしれないと言う恐ろしいデータです。

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『潰瘍性大腸炎』はさまざまな原因が考えられるそうですが、最近の研究からは「遺伝性」もあるのではないかと指摘されているようです。同一の家族内での発症もこれまでに認められていて、欧米では20%の患者の家族に“炎症性腸疾患”があったとされています。ただし遺伝性についても現段階では明快な結果は出ていないとのことです。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/62

原因が究明されていない病気と言うことで、万が一発症した場合のことを考えると、とても不安になりますね。そこで番組ではこの『潰瘍性大腸炎』を発症した実例と、その最新の治療法を紹介していました。

 

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オーストラリアでの実例

発症したのはオーストラリアに住む運送会社のトラックドライバーAさん。
両親と同居し、ガールフレンドもいる、普通の22歳の男性。

初期症状から悪化まで

ある日突然の激しい腹痛に襲われたAさん。その時の腹痛はすぐに治まり、Aさんは放っておいてもそのうちに治るだろうと考えていたそうです。
しかし、腹痛は頻繁に起こるようになり、痛みも日に日に悪化。
さらに原因不明の下痢も発症するようになったと言います。

この頃のAさんは仕事が忙しかったこともあり、市販の下痢止めや痛み止めを飲んでなんとかしのいでいましたが、この後さらに恐ろしい異変が起こります。

ずっと続いていた下痢に、血が混じるようになったと言うのです。
症状はさらに進行し、貧血や食欲不振、体重も数か月で10キロも減ったそうです。

やがて貧血によるめまいのため、トラックの運転もできなくなり、Aさんは仕事を失ってしまいました。

先端医療病院での診察結果は

Aさんの症状は治まることがなく、ついにオーストラリアの先端医療病院を受診。
すぐに内視鏡検査が行われ、その結果……

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その原因、腸にあり!より

『潰瘍性大腸炎』だということが分かったそうです。

Aさんは潰瘍性大腸炎の悪化が原因で大腸の動きが停止し、腸全体が炎症を起こしていたそうです。そのため大腸の内部にガスや毒素がたまってしまい非常に危険な状態になっていたそうです。
すぐに薬を処方されたAさんは、毎日2回服用し続けました。すると、4か月後には仕事に復帰するまでに回復したそうです。

しかし、Aさんは再び激しい腹痛に襲われ、病院を受診すると、潰瘍性大腸炎が再発していたことが分かりました。

実は潰瘍性大腸炎が恐ろしいのは、いったん症状が良くなったと感じても、数か月から数年のブランクを経て、ふいに再発することが多いと言うのです。

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その原因、腸にあり!より

最新の治療法、キーワードは「便」

オーストラリアで潰瘍性大腸炎を発症したAさん。
薬での治療を続けて快方に向かっていたと思われていました。
しかし症状が出てから1年が経ち再発。
そこでオーストラリアではまだテスト段階だった新たな治療法を試すことになりました。

それは…

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便移植とは他人の便、具体的には他人の腸内細菌を患者の腸に入れる治療法を言います。
実は便の中には食べ物のカスだけではなく、腸内細菌が3分の1も含まれているそうです。

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その原因、腸にあり!より

健康な人の便に含まれる腸内細菌を、患者の大腸に移植し定着させて腸内環境を改善すると言うのです。

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その原因、腸にあり!より

「便移植」は2013年にオランダのアムステルダム大学で、腸炎の治療に対し絶大な効果を発揮したと言う例が報告され、それから一気に世界中の注目を集めている最新の治療法だそうです。

Aさんは持病のあった両親ではなく、ガールフレンドから便の提供を受け、なんとその後は再発もなく健康に過ごしていると言うことです。

 

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日本国内での「便移植」に密着!

この「便移植」は、日本では2014年に臨床研究が始まったばかりで、現在は国内5か所の病院で実施されているそうです。

これが日本国内で行われている「便移植」!

それでは「便移植」とはどのように行われるのでしょうか。
国内5か所のうちのひとつ、藤田保健衛生大学病院で実際に行われた便移植に、番組が密着取材をしていました。
移植を受けるのは8年前に潰瘍性大腸炎と診断されたBさん。
普段は症状を抑えるためにステロイド剤が手放せないと言います。
そこでBさんの妻が便の提供者=ドナーとなることで、便移植を受けることになりました。

ドナーの検査

ドナーとなる人は事前に以下の項目の検査を受けます。

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その原因、腸にあり!より

これは感染症やウィルス、腫瘍などの病原体までも便と一緒に患者に移植してしまわないように、事前に細かくチェックするための検査です。

もしこれらの検査で異常が見つかった場合は、ドナーになることはできないそうです。

便の採取

腸内細菌は時間が経つにつれ空気に触れて死滅してしまうため、便は移植を行う直前に採取する必要があると言われています。
使用する便はおよそ100グラム程度。

患者は自分の腸内をきれいに掃除

移植を受ける患者は、投与される腸内細菌が定着しやすいように、腸管洗浄剤を2リットルも飲み、自分の腸内細菌をかぎりなくゼロにして準備するそうです。

内視鏡で便移植

移植には内視鏡が使われます。

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その原因、腸にあり!より

なんと、およそ20分で移植は終了。
その日のうちに帰宅することもできると言います。

ただし、現段階ではまだ便移植が潰瘍性大腸炎に対する絶対的な効果は保証されていないため、移植を行った後も、DNAレベルで患者の腸内細菌の状態を確認し続けることが大切だと言うことです。

 

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「便」が切り開く未来の医療?

このように医療の分野では「便」が治療の材料としても注目されるようになっています。
さらに番組では「便」の新たな可能性を紹介していました。

アメリカのボストン大学で始まった研究

2012年にマサチューセッツ工科大学の学生が、世界初の便に関するある施設を作ったそうです。
それは便を集めて冷凍保存する「便バンク」

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その原因、腸にあり!より

ここでは一般から募集した人に対して、100項目以上にも及ぶ精密検査を行い、腸内バランスが整った優秀なドナーを選出し、移植が必要な患者に提供すると言うのです。
この便バンクに保存されている便は、応募人数のわずか3%
選び抜かれた健康優良な便はひとつ40ドルで買い取られ、550を超える欧米の病院で役立たれているそうです。

潰瘍性大腸炎と言う病気について、気になることや注意すべき点など、詳しいことは書籍でもたくさん紹介されています。

「潰瘍性大腸炎と上手に付き合う本-病気を理解して上手に付き合えば大丈夫」石川秀樹(三雲社)

「実験医学 2016年4月号 Vol.34 No.6 明かされる“もう一つの臓器” 腸内細菌叢を制御せよ!~宿主との相互作用のメカニズムから便移植の実際、バイオベンチャーの動向まで」福田真嗣(羊土社)

まとめ

国が難病に指定している『潰瘍性大腸炎』。一度発症すると完治する方法が未だに分かっていない恐ろしい病気です。しかしこの病気に対する新しい治療法が「便」の中の腸内細菌に見つかったと言うことですね。健康のバロメーターとして目視する程度だった便ですが、その中に残っている腸内細菌が、他の人の難病治療に用いられるとは! なかなか信じがたい気もしますが、それだけ腸内細菌に対する研究は日進月歩で進められていると言うことですね。

 


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