最近よく耳にするようになった「血糖値スパイク」という言葉。糖尿病の前段階と思っている人が多いようですが、血糖値スパイクは糖尿病だけでなく、心筋梗塞や認知症などの原因であることも最新の研究で判明したそうです。なんだか恐ろしい病気と関連性があるということで怖いイメージを持ってしまいますが、血糖値スパイクの段階であれば比較的簡単に予防・改善ができるそうです。先日の「あさイチ」では、その原因や対策を特集していました。
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血糖値スパイクと糖尿病の違い
血糖値スパイクと糖尿病は、どちらも血糖値の異常です。けれども、この2つには大きな違いがあります。
まず、血糖値スパイクの場合、食事から約1時間後に血糖値が急上昇して、一時的に基準値の140mg/dlを超え、また正常値に戻ります。下のグラフの赤い線が、血糖値スパイクの人の血糖値の変化を表しています。
糖尿病の場合は、血糖値が常に基準値以上の状態が続きます。
幸いなことに、血糖値スパイクは、糖尿病のように治療のために薬を飲む必要はありせん。生活習慣などを改めることで、改善・予防をすることができます。ですから、糖尿病に進行しないうちに、対策をするのが大切なのです。
健康診断で血糖値が正常でも安心できない理由
空腹時に血糖値を測定する健康診断や人間ドックでは、血糖値スパイクは調べられません。それは、血糖値スパイクは、食後の一時的な血糖値異常だからです。ですから、健康診断で血糖値が正常値でも安心はできません。日本には、推定1400万人以上も、血糖値スパイクの人がいると考えられているのです。
番組では、健康診断で血糖値が正常だった女性20人を対象に、血糖値スパイクの有無を診断しました。まず、食事前の血糖値を検査したところ、全員が110mg/dl未満の正常値でした。それから、全員が同じ食事(おにぎり2個と果汁入り野菜ジュース1杯)を摂り、その1時間後に血糖値を測定しました。すると、20人中9人の血糖値が140mg/dl以上という結果に。半数近くが、血糖値スパイクということが判明したのです。
血糖値測定器の発達で血糖値スパイクが発見されるように
近年、血糖値スパイクの診断がしやすくなったのは、測定器の発達のおかげとのことです。
最新式の血糖値測定器は、センサーがついている針を腕に刺して生活すると、1分ごとの血糖値を最長で14日間連続で測ることができるそうです。
「針を刺す」と聞くと、とても痛いのではと思ってしまいますが、痛みは感じないそうです。
この血糖値測定器は研究中のものなので、個人では入手することができません。2017年の春から、医療機関での取扱いが始まるとのことです。
現在、医療機関での血糖値スパイクの検査に「糖負荷試験」という血液検査があります。人間ドックで、追加料金を2000円ほど支払うと、この検査を受けることができるとのことです。
家庭で血糖値を調べる場合は、薬局やインターネットで購入できる「簡易血糖測定器」を使用します。値段は、5000円から1万円ぐらいです。
針は使い捨てになります。測定器本体は家族で共有することができます。家族の健康管理に一家に1台、血糖測定器を常備することを伊藤先生は勧めていました。
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間食をすると血糖値スパイクに?
下の画像は、間食の回数が多い人の血糖値のグラフです。黄色のマークが間食を表しています。
間食後の血糖値の変化を見てみると、少しは上昇するものの基準値内で収まっています。けれども、「間食は血糖値スパイクと関係なし」と安心はできません。
なぜかというと、糖を含む食品を頻繁に体に取り込むと、すい臓は、インスリンを分泌し続けます。すると、すい臓が、だんだん疲れてしまうのです。
インスリンには、食事で摂取した糖を、細胞内に取り込む働きがあります。
食事のときに、すい臓が疲れて、適量のインスリンが分泌されない状態だと、食物から摂取した大量の糖を、血液中から回収することができなくなってしまうそうです。それで、食後に血糖値が急増することになるのです。
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血糖値スパイクになりやすい人
間食の回数の多い人が、必ず血糖値スパイクになるわけではありません。
血糖値スパイクのなりやすさには、インスリンの「効き目」と「分泌のタイミング」が関係しているとのことです。
インスリンの効き目が弱い人
インスリンの効き目が弱い人は、血糖値スパイクになりやすいそうです。
血糖値スパイクに詳しい伊藤裕先生(慶應義塾大学医学部教授)によると、インスリンの効き目が弱いのは、肥満、極端に痩せている、肝臓の働きが悪い人だそうです。
肥満の場合、脂肪細胞が悪玉化して、インスリンの働きの邪魔をするホルモンをたくさん分泌します。それで、インスリンの効き目が弱くなるのです。
極端にやせている場合は、筋肉が少なくてインスリンが効く場所がないのが問題だそうです。
肝臓は、インスリンが分解した糖を取り込みます。ですから、肝臓の働きが悪いと、糖を取り込めなくなるので、血液中に糖が残ってしまいます。
インスリンの出るタイミングが遅い人
インスリンが分泌されるタイミングが遅いことも、血糖値スパイクの原因になります。インスリンの分泌が遅くなるのは、腸の働きが悪い人だそうです。便秘や下痢をしやすい人は、要注意。
インスリンを分泌するのはすい臓なのに、なぜ腸が関係するかというと……食べ物が腸に届くと、腸がすい臓にインスリンを分泌するようにと指令を出すからです。腸の働きが悪いと、なかなかその指令が出せないので、インスリンの分泌が遅くなってしまいます。すると、食後に血液中に糖分が溜まってしまい、血糖値スパイクになると番組で説明をしていました。
血糖値スパイクが引き起こす恐ろしい病気
糖尿病の予備軍として知られている血糖値スパイク。糖尿病に進行して合併症を発症すると、失明することや手足を切断しなくてはいけなくなることも……。それだけでも恐ろしいことなのですが、血糖値スパイクは、心筋梗塞、認知症、がんの原因にもなるそうです。
心筋梗塞と血糖値スパイクの関係
心筋梗塞は、動脈硬化により心臓の周りの血管がつまり、心臓の筋肉が壊死する病気です。国立循環器研究センターの調査によると、心筋梗塞など心不全の患者の約半分が血糖値スパイクの症状があることが分かったそうです。また、心不全を起こす人の3割が、糖尿病です。これらのことから、血糖値の異常と心不全には強い関係性があることがわかりますね。
健康な人の心臓には、太い血管が幾筋もあります。けれども、血糖値スパイクの人の血管は、動脈硬化が多発し、細くくびれた部分がいくつもあるのです。
血糖値が急激に高くなると、活性酸素が発生して血管の内側の細胞を傷つけたり、コレステロールを酸化させたりします。すると、免疫細胞が、傷ついた血管壁を治すために、血管の壁に張り付き、その中に入り込もうとするのです。それで、血管壁が持ち上がり、血管内部がせまくなるそうです。
認知症と血糖値スパイクの関係
伊藤先生によると、血糖値の急上昇で発生する毒性の活性酸素は、心臓の血管だけではなく、脳の血管にも悪影響を及ぼすそうです。また、活性酸素は、神経細胞にとっても害です。活性酸素のせいで、脳の機能が低下し、認知症を進行させてしまうこともあるとのことです。
がんと血糖値スパイクの関係
インスリンには、細胞を増やす働きもあります。血糖値スパイクになると、インスリンの働きの悪さを補うために、だらだらとインスリンが分泌されるようになってしまうそうです。それで、健康な細胞だけではなく、やっかいながん細胞も増やしてしまいす。
とくに閉経後の女性は、注意が必要だそうです。女性ホルモンには、がん細胞ができる原因の1つである「活性酸素」の働きを抑える効果があります。けれども、閉経をして、女性ホルモンが分泌されなくなると、活性酸素を抑制することができなくなってしまうのです。
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血糖値スパイクを改善・予防する5つの対策
血糖値スパイクは、簡単に予防・改善することができるそうです。番組では、5つの対策(食べ順に気をつける、ゆっくり食べる、食事を抜かない、食後の軽い運動、腸内細菌の活性化)を紹介していました。
【食べ順】野菜、肉、ごはんの順番で食べる
血糖値スパイクは、食後、急に血液中の糖分が多くなることで起こります。ですから、ごはんやパンのように、糖分を多く含む食品を食べるときは、注意が必要です。もちろん、糖分を含む食品を、全く食べてはいけないということではありません。食べる順番に気をつければ、血糖値スパイクを防ぐことができるそうです。
食事では、野菜を最初に食べるのが、血糖値の上昇を抑えるポイントです。野菜に含まれる食物繊維が、腸をコーティングして糖の吸収を遅くしてくれるからだと番組では説明していました。
また、肉をご飯より前に食べるのも、血糖値スパイクの予防になるとのことです。
肉に含まれる脂質やタンパク質が腸へ送られるときにはインクレチンという物質が分泌されます。この物質には、胃腸の働きを鈍くする効果があります。それで、肉の後に食べたものが、腸に届くまでの時間を遅くすることができるのです。
関西電力病院の研究によると、ご飯を最初に食べると、ご飯が腸にたどり着くまでの時間が30でした。けれども、肉の後にご飯を食べると、腸にたどり着くまでの時間が80分になります。倍以上、3倍近い差がつくわけです。
腸に糖が届くのに時間がかかると、糖が血液中に吸収されるのも遅くなります。それで、血糖値の急上昇を予防することができるとのことです。
ご飯やおかずを少しずつ順番に食べる三角食べは、血糖値スパイクの対策にはなりません。糖の吸収を緩やかにする野菜や肉を食べてから、ごはんや果物など糖分を多く含む食品を食べるのが大切だそうです。
食事はゆっくり、よく噛んで
血糖値スパイクを予防するには、食べ順も重要ですが、ゆっくり、よく噛んで食べることも、とても大切なことだそうです。それは、噛むことで、腸に食べ物がくるということを伝えているからなのです。
昼休みに、1人で食事をすると5分ぐらいで、さっさと食べ終えてしまいます。ですから、人と話をしながら、楽しく15分ぐらいかけて食事をするのが理想的だと伊藤先生が話していました。
時間がなくて、食事中の子どもを、ついつい急かしてしまう人も多いと思います。子どもの頃からの習慣を、大人になってから変えるのは大変です。血糖値スパイクの予防のためにも、子どもには、ゆっくり、よく噛んで食べる習慣を身につけさせてあげましょう。
食べ順、食べる速度を変えて血糖値を測定すると…
糖尿病治療の専門家、西村理明先生(東京慈恵会医科大学准教授)に、番組の調査で血糖値スパイクが判明した女性Hさんの5日間の血糖値データと食生活を分析してもらいました。すると、Hさんの食べ順に問題があることがわかりました(Hさんは、ご飯から食べ始める習慣があります)。
そこで、Hさんには、3日間同じような内容の食事を摂ってもらい、食べ順を変えて血糖値のデータを調べることにしました。
1日目は、普段通りの食べ方です。そして、2日目と3日目は、野菜を最初に食べ、1口30回ずつ噛んで食べます。
すると、野菜から先に食べ始めた日は、血糖値が抑えられていました。
Hさんの朝食に注目すると、野菜を最初に食べた2日目は、1日目よりも朝食後の血糖値の上昇が抑えられています。そして、3日目は、2日目よりもさらに血糖値の上昇が抑えられ、変化が緩やかになっていました。
1日、2日で、このように血糖値が改善されるのは驚きです。糖尿病になるかならないかの状態で、血糖値スパイクへの対策を始めることが、とても大切だと西村先生は話していました。
朝食を抜かない、1日3食
1日3食であれば、正常な血糖値を維持できる人も、朝食を抜くと昼食後に血糖値スパイクがみられることがあります。さらに、朝食も昼食も食べずに、夕食だけを摂った場合は、さらにスパイクが鋭くなっています。
食事の回数が減ると、血糖値スパイクになりやすいのは、食事と食事の間隔が長くなると腸が休んでしまって、インスリンが出るタイミングが遅くなってしまうからだそうです。朝食は、少しでも食べたほうが良いと伊藤先生は話していました。
食後に軽い運動(ちょこちょこ動く)
血糖値スパイクの人が、食後にじっとしていると血糖値が下がりにくくなります。けれども、軽く動くと、血糖値は、すぐに正常値に戻るとのことです。
食後15分から30分以内に軽く体を動かすと、消化のために胃や腸に集まる血液が、手や足の筋肉にも分散されるのです。すると、胃腸の動きが鈍くなり、糖の吸収が遅れるので、血糖値の上昇を抑えることができると番組では説明していました。
血糖値スパイクの予防に効果的なのは、掃除機、床磨き、風呂掃除、散歩などだそうです。皿洗いなど手だけを使う動作ではなく、足を使うことが大切だそうです。
お腹が痛くなるような運動は、栄養が吸収できなくなるのでやらないようにと西村先生が話していました。軽く動くというのがポイントです。
腸内細菌を活性化させる食品を食べる
すい臓にインスリンを分泌するようにという指令を、腸がタイミングよく出せるようにするには、腸内細菌のバクテロイデスを活性化させることが大切です。
そのためには、バクテロイデスが働きやすくなるように、水溶性食物繊維を摂取する必要があります。水溶性食物繊維を含む食品は、ごぼう、人参、にんにく、納豆、おくら、きのこ、海藻類(わかめ、ひじきなど)があるそうです。
また、玄米、大麦、雑穀米も水溶性食物繊維を含んでいるので、白米の代わりに食べるとよいとのことです。
反対に、糖の多い食品を摂取すると、バクテロイデスの数が減ってしまうので注意が必要だと伊藤先生が説明していました。
糖質ゼロ・低糖質の食品は血糖値の上昇を抑える?
近年、糖質制限ダイエットが流行っていることから、糖質ゼロや低糖質の食品が、たくさん販売されています。摂取する糖を減らすことは、血糖値を抑えることにつながります。ですから、糖質ゼロや低糖質の食品を摂ることは、血糖値スパイクの予防になるそうです。ただ、低糖質だからといって、食べ過ぎると逆効果に。また、糖質ゼロの食品には、脂肪分が含まれているので、摂りすぎると肝臓に脂肪がついて、インスリンの効き目が弱くなってしまいます。
血糖値が下がる糖質制限食のすべて (主婦の友生活シリーズ)
主婦の友社
糖質オフ!でやせるレシピ―お肉もお酒もOK! (食で元気!)
牧田 善二
糖質制限ダイエットの注意点
糖質を抑えることは、血糖値スパイクの予防につながります。けれども、無理なダイエットで痩せすぎて筋肉が減ると、血糖値スパイクが起こりやすくなるのです。さらに、リバウンドをすると筋肉が増えるのではなく、脂肪が増えるので、血糖値スパイクになりやすくなるそうです。
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まとめ
血糖値スパイクに気がつかずに、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞になっては大変です。「自分は大丈夫」と思わずに、まず、食事から1時間後の血糖値を測ってみてください。
そして、番組で紹介されていた予防・改善法を生活に取り入れ、血糖値スパイクにならないように気をつけましょう。