先日の『みんなの家庭の医学』では、腰痛の原因として最近発見された「タイトハム」(太ももの裏の筋肉「ハムストリングス」が硬くなった状態)の特集をしていました。番組では、検査の結果でタイトハムが原因の腰痛だと診断された40代の女性2人を例に、タイトハムが腰痛の原因であることを突き止めた西良浩一先生(徳島大学大学院運動機能外科教授)がその仕組みや短期間で腰痛を改善させる10秒ストレッチについて説明をしていました。
西良先生は腰痛治療の専門家として、これまでに約5万人の患者を腰痛から救ったそうです。その中には多くの有名アスリートもいます。西良先生の著書には、先生のこれまので研究・経験を元に7種類の腰痛の原因とその改善方法がまとめられています。
腰痛完治の最短プロセス セルフチェックでわかる7つの原因と治し方
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8割以上の腰痛患者は原因不明(非特異的腰痛)
日本人の腰痛患者数は2,800万人(推定)で40代以上では40%以上の人たちが腰痛に悩んでいるそうです。これまでは、病院で検査を受けて腰痛の原因を特定することができたのは約15%の人たちで、残りの85%の人たちは原因不明の非特異的腰痛で有効な治療方法はないと考えられていたとのことです。
みんなの家庭の医学より
番組が行った街頭インタビューでも「腰痛は改善することができない」とのあきらめの声が多く聞かれました。
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太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)が腰痛の原因になる理由
ハムストリングスとは?
ハムストリングスは太ももの裏(大腿骨の裏)にある筋肉で骨盤の下と膝の裏側をつないでいます。この筋肉は、歩くときや走るときなどにひざの屈伸をするときに重要な役割を果たすそうです。
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正常なハムストリングスはゴムのように柔らかく、よく伸びます。この筋肉が正常なときに前傾姿勢をすると骨盤が前に傾くので、腰椎や腰に負担がかかることはないそうです。
ハムストリングスが硬くなる理由
ハムストリングスは他の筋肉同様、加齢や運動不足によって硬くなります。また、日々の生活で骨盤後傾(ソファーに深々と座っているときのような姿勢)を何度もすることによってもハムストリングスは硬くなると西良先生は説明していました。
正しい姿勢で座っているときはハムストリングスは骨盤に引っ張られていて、刺激が与えられています。けれども、骨盤後傾の姿勢では、骨盤に引っ張られないので筋肉に刺激が与えられないそうです。筋肉に刺激が与えられていない状態が続くと、血の流れが悪くなって筋肉のなかの酸素が足りなくなります。そのときに筋肉の神経が緊張した状態になって筋肉が収縮して硬くなってしまうと番組では説明していました。そして、このハムストリングスが硬くなった状態をタイトハムと呼ぶとのことです。
みんなの家庭の医学より
番組では、エラストグラフィ(超音波を使用して筋肉の硬さを調べることができる)という医療機械を使用して良い姿勢と骨盤後傾の姿勢で座ったときのハムストリングスの硬さを測定していました。
みんなの家庭の医学より
画像のグラフからわかるように、良い姿勢で座っているときも、骨盤後傾の姿勢で座っているときも座り始めはハムストリングスが硬くなります。良い姿勢で座っている場合は、その後ハムストリングスがやわらかくなって、その状態が持続されます。けれども、骨盤後傾の姿勢で座っている場合は、1度ハムストリングスはやわらかくなりますが測定を始めてから10分後に硬くなり、その後も硬い状態が続いています。
日常的にハムストリングスを硬くする姿勢をしていると、ハムストリングスが恒常的に硬い状態になってしまうとのことです。
ハムストリングスと腰痛の関係
西良先生によるとタイトハムが多くの人の腰痛の原因になっているそうです。タイトハムの状態になると、前傾姿勢になったときにハムストリングスが伸びないので骨盤が傾きません。そのため、骨盤の代わりに腰椎が曲がってしまうとのことです。
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この状態が続くと、椎間板に炎症が起きたり、腰周辺の筋肉に疲れが溜まったりして腰が痛くなると西良先生が説明していました。
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簡単にタイトハムを検査する方法
番組ではタイトハムかどうかを自分で簡単に検査する方法が紹介されていました。
①かかとを揃えて、つま先をこぶし一つ分広げて立ちます。
②ひざを伸ばした状態で息を吐きながら、転倒に注意してゆっくり前屈をします。
この前屈検査で手の指先が床に着けばハムストリングスは硬くなっていない正常な状態、指先が床上から15cm以上離れている場合は、ハムストリングスに異常があり(レッドカルテ)、指先が床上15cm未満の場合はハムストリングスは要注意(イエローカルテ)の状態だそうです。
番組では、長い間原因不明の腰痛に苦しんでいる40代から50代の男女10人にこの前屈検査を受けてもらいました。
その結果、10人中3人は正常、5人はイエローカルテ、2人はレッドカルテでした。
レッドカルテだったのは、指先が床上16.2cmだった腰痛暦24年のKさん(44歳女性)と指先が床上20cmだった腰痛暦5年のYさん(45歳女性)です。
番組でKさんとYさんを各自の自宅で取材した結果、Kさんはパソコンやスマホを使うなど自宅で座っている時間の8割以上が骨盤後傾の姿勢で、Yさんはテレビを見ている間の40分間をはじめ自宅で座っている時間の9割以上が骨盤後傾の姿勢だったそうです。
KさんとYさんの腰痛
Kさんは同じ姿勢で長くいた後で立ち上げるときに腰が痛むそうです。マッサージへ行っても腰痛は改善しなかったとのことです。特に掃除をするのがつらく、床の拭き掃除はしないようにしていると番組の取材に答えていました。
Yさんは、特に階段の上り下りをするときに腰が痛み、1階から2階へ洗濯物を運ぶときや階段に掃除機をかけるときには途中で休憩をしなくてはいけないと番組のインタビューに答えていました。
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タイトハムが原因の腰痛を改善する10秒ストレッチ
番組ではハムストリングスをやわらかくして、短期間で腰痛を改善することができる西良先生が推奨する10秒ストレッチを紹介していたので、そのやり方をまとめておきます。
①ひざの高さほどの椅子に浅めに座ります。
②座った後、足の指がひざのちょうど下になるように位置を調節します。
みんなの家庭の医学より
③手で足首を後ろからつかみます。
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④③の状態のまま、胸と太ももをつけて頭を下げます。
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⑤④の状態のまま、ひざを伸ばします。ひざの裏が「イタ気持ちよい」と感じる状態を10秒間保ちます。
このストレッチを1度に2セット、1日2回(朝晩)に行うと良いそうです。
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レッドカルテの2人が1週間10秒ストレッチを実践した結果
番組では前屈検査でレッドカルテ(ハムストリングスに異常があり)のKさんとYさんに、西良先生推奨のストレッチを朝晩2セットずつ1週間続けてもらい、腰痛が改善するかどうかを確かめました。
この10秒ストレッチはハムストリングスをやわらかくする即効性があり、ふたりとも実行した後は柔らかくなっているのですが、ストレッチ後しばらくすると筋肉が硬い状態に戻ってしまいます。が、それを我慢して続けることによって改善されていくとのことです。
1週間経過した頃にはKさんは、しゃがんでも腰が痛くなったそうです。ストレッチを始める前は、腰が痛くて掃除中に何度もため息をついていましたが、ストレッチを1週間続けた後では、腰痛がなくなり床の拭き掃除も楽にできるようになっていました。1週間で徐々に腰の痛みがなくなったそうです。前屈検査では、以前は床上16.4cmでしたが、1週間のストレッチの後では床下3.5cmまで指先が届くようになり、ハムストリングスは正常な状態に戻ったそうです。検査後のインタビューでKさんは、すごい、すごいと喜びを爆発させていました。
Yさんも、1週間のストレッチの後で腰の痛みを感じなくなったとのことです。ストレッチをする前は、洗濯物を持って階段を上がるときや階段に掃除機をかけるときには、とても腰が痛く休憩が必要でしたが、1週間のストレッチの後では、とても楽に階段の上り下りができるようになったそうです。以前の前屈検査では、床上20cmでしたが、1週間のストレッチの後では床上3cmまで前屈ができるようになっていて、1週間でタイトハムがかなり改善されました。検査後のインタビューで、Yさんは1週間でこれだけ違いがあるのであれば、ストレッチをこれからも続けていきたいと笑顔で語っていました。
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まとめ
番組で紹介された2人の女性が朝夕2回ずつの簡単なストレッチを1週間続けただけで、長年悩んでいた腰痛が大幅に改善されたことに驚きました。前屈運動によって行うタイトハムの検査も自分で簡単にできるというのが、あきらめていた腰痛改善に向けての第1歩を踏み出す良いきっかけになりそうです。腰の痛みに悩んでいて、病院に行っても腰痛の原因が分からなかった人は、番組で紹介された検査とストレッチを試してみる価値がありそうですね。