今回の『主治医が見つかる診療所』では、太りにくい食べ方について特集していました。
番組の冒頭では、ダイエットに関する話題でよく取り上げられる「糖質制限ダイエット」と「1日の食事回数」について取り上げられていたので、まずは見ていきましょう。
糖質制限ダイエットはいいの?わるいの?
糖質制限ダイエットは、砂糖などの糖質や、ごはん・パンなどの炭水化物を制限するダイエットとして有名です。
このダイエットを推奨する秋津嘉男医師は、
「日本人は糖質とりすぎ。(摂るべき量が)100としたら150〜200摂っている。健康でスリムな人は糖質制限ダイエットをやるべきではないが、糖質は3分の2くらいにしてちょうどよい」
と、推奨する理由を語っていました。同じく糖質制限を推奨する姫野友美医師は
「脂肪がついてしまう一番大きな原因はインスリンという血糖値を下げるホルモンで、脂肪をためる働きをする。これを分泌させるのが糖質(なのでおすすめのダイエットである)」
と話していました。
一方で、注意を促す意見としては、上山博康医師から「糖質を一切とらないのはよくない。ちょっと食べることが重要」という指摘がありました。
ほどよく糖質を摂るのが良い、ということであるようです。
食事回数、長生きしたいなら1日1食?3食?
これもさまざまな意見があり、賛否両論です。
多くの医師は3食を推奨しており、中山久徳医師は
「健康で長生きするのが目的のはず。そのためには運動能力を保っておきたいので、タンパク質、カルシウム、マグネシウム…など様々な栄養素が必要になる。1日1回の食事で全てが吸収されるわけではない」
と話し、丁宗鐵医師は
「食事回数はその人の体質と年齢によって決めるべき。成長期や成人は3食でいいが中高年なら2食、高齢なら1食など変えていくべき。」
と話していました。
一方で南雲吉則医師は
「体内の遺伝子には、満腹のときに発現する長寿の遺伝子は存在しない。人間は空腹を生き抜いてきたから、(空腹のときに)若返り遺伝子や若返りホルモン、長寿ホルモンが出る。空腹も、バランスをとる意味で必要」
と主張していました。
以上のように、糖質とダイエットの関係、食事法などについては、さまざまな見解が存在し、続々と新しい研究成果が出てきています。
ここからは、常識をくつがえすような食事法・おやつの食べ方などを見ていきましょう。
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自分の太りやすさを知る
まずは、ご自身が太りやすい生活習慣をとっているかどうかを把握しておきましょう。
以下の10項目のうちいくつ当てはまるかをチェックしてみてください。
・ 食事を3食とることが少ない
・ 朝食は抜くことが多い
・ 早食いである
・ 食事は炭水化物がないと気がすまない
・ 野菜を食べることが少ない
・ 特に夕食に量を多く取ってしまう
・ 夕食の時間は遅いことが多い(21時以降)
・ お酒を飲むときに何かつまんでしまう
・ 寝る前につい間食をしてしまう
3〜7項目当てはまる場合は“イエローカード”だそうです。太りやすい食習慣をしているので修正すべきだそうです。
8項目以上の場合は“レッドカード”です。メタボリックシンドロームの危険があるので、食習慣を変える必要があるそうです。
では、どのように食習慣を変えていけばいいかについて参考になる情報を見ていきましょう。
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ご飯を食べても太らない方法
ダイエットの天敵と考えられている炭水化物ですが、身体にとっては必要な栄養素でもあります。
炭水化物はおもに糖質と食物繊維でできています。糖質は脳や神経回路のエネルギーとなるので、不足してしまうと脳の働きが悪くなってしまいます。また、糖質の摂取量がゼロになると、体内で糖質を合成しようとして筋肉のタンパク質を分解してしまうので、筋力が低下してしまいます。
しかし、摂りすぎると太ってしまうのも事実です。しかも、食事の中でカットするのが難しいので悩ましいのですが、同じ量の炭水化物を摂っても太りにくくなる方法があるそうです。
その食べ方のカギを握るのは、「レジスタントスターチ」という物質です。
レジスタントスターチは、岐阜大学教授で農学博士の早川享志氏が著書『快腸でんぷん健康法』に記して話題になりました。
早川氏によると「炭水化物には“快腸でんぷん”であるレジスタントスターチが含まれているので、それをうまく取り入れるようにするとよい」そうです。
レジスタントスターチはでんぷんの一種です。
通常のでんぷんは胃などで消化されて腸で吸収されますが、レジスタントスターチは胃で消化されにくい性質があり腸まで届くので、便秘を予防するなど食物繊維と同じような働きをするそうです。
そんな“快腸でんぷん”が、ごはんにある工夫をすることで増加するというのです。
レジスタントスターチを増やす方法
早川氏の昼食のお弁当を見てみましょう。
しっかりとお米を食べていることがわかります。
しかし、普通とちょっと違うのは、お弁当を冷蔵庫で保存していたことです。
なんと、ご飯を冷たくするとレジスタントスターチが増加し、結果的に太りにくくなるというのです。
でんぷんは体内で消化されやすいのが特徴ですが、冷やされることで構造が変化し、一部が結晶構造をとることによって、消化されにくい「レジスタントスターチ」に変化するのです。
早川氏によれば「科学的には低温のほうが良いのだが、凍るといけないので、4度くらいがいい。冷蔵庫は3〜6度。30分ほど冷やすとレジスタントスターチが増え始め、2時間も冷やせば効果が期待できる」ということです。
食べるタイミングについては、「冷蔵庫から出してすぐは冷たい。これを食べることに抵抗がある方は、室温に戻して食べてもレジスタントスターチには問題がない」とのことでした。
白ご飯100gに含まれるレジスタントスターチは約0.3gですが、炊きたてご飯を常温に放置して観察したデータでは、2時間で1.6倍以上増えることがわかっているそうです。
早川氏のもとで学んでいる学生さんも、冷蔵庫にお弁当を入れていました。ある学生さんは「炭水化物を抜く人もいると思うが、私は気にすることなく食べるようにしています」と話していました。
冷たいご飯はちょっと…という方は、例えば冷やし中華や冷製パスタなどにも応用できる方法なので、取り入れてみてはいかがでしょうか。
注意すべきなのは、いったん冷蔵保存しても温めるとふたたび普通のでんぷんに戻ってしまう点です。つまり、レンジでチンをしてしまうと意味がないのです。
どうしても「温かいご飯を食べたい」ということであれば、朝食に温かいご飯を食べて、残りを常温に置いておいて冷やしていってそれをお弁当にしても、ある程度はレジスタントスターチが増えるそうです。
冷えたご飯はあまりガツガツ食べられないので、食べる量自体が減るという利点もあります。
以上のことを踏まえると、太りにくい3食のご飯の食べ方は、以下のようになります。
稲毛病院(千葉県)の整形外科医・佐藤務医師も、患者さんに冷やしたご飯を勧めているそうです。
その理由として、佐藤氏は「炭水化物はメンタルにもいい。脳の栄養素であるトリプトファンとヒスチジンなどはお米にも多く含まれている」と指摘していました。
トリプトファンは心を穏やかにする脳内ホルモンの原料となり、ヒスチジンは神経機能の維持に用いられます。
以前はひざの悪い患者にダイエットを指導する際に糖質制限を勧めていた佐藤医師でしたが、炭水化物を抜いた一部の患者にうつ傾向が出てしまったそうで、それ以降は炭水化物を上手に取る方法として、炭水化物を冷やす方法を勧めることにしたそうです。
さいごに、丁宗鐵医師が、お米を冷やして食べることに関する注意点を挙げていました。「温かいご飯は消化が良い。冷やしたご飯は胃腸の丈夫な人にはあっているが、弱い人には温かいご飯がオススメ」とのことでしたので、胃腸の弱い方は注意しましょう。
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おやつを食べても太らない方法
いつもと同じおやつを食べても、あることを気にするだけで太りにくくすることができるそうです。
女子栄養大学副学長で栄養学の権威である香川靖雄医師によると、「身体には、夜寝て朝起きて昼間活動するというリズムがある。それに合わせて食事も摂らないと、健康が保てない」6といいます。これを「時間栄養学」というそうです。
そして、食べる時間に気をつけるだけで、おやつを食べても太らないというのです。
人間には、体内時計という生体リズムをコントロールする機能があります。これを利用して、太りにくい時間に食事やおやつを食べればよいのです。
太りにくい時間をつくっているのは「Bmal1(ビーマルワン)」というタンパク質です。これが作用すると、食物のエネルギーが脂肪として合成されるようになります。
Bmal1(ビーマルワン)は午後4時からだんだん増えてきて深夜12時頃にピークになり、朝になったらだんだん下がってくるという性質を持っています。人間は、昼に活動してエネルギーを消費し、夜間には翌日に活動するためのエネルギーを蓄えようとする仕組みになっているのですが、この働きを支えているのがBmal1(ビーマルワン)なのです。
そして、Bmal1は昼12時頃にはほぼ活動していないので、午前10時〜午後3時に摂ったおやつは脂肪になりにくいのです。
この活動を裏付けるデータがあります。
朝型の食事と夜型の食事のどちらが太りやすいかを調べる実験です。
健康な女子大学生33人におにぎり2つ、ゆでたまご、バナナという合計500Kcalの食事を(上の画像の時間に)1日3回摂ってもらい、発生したエネルギー量を比較しました。
結果は、午後1時と午後7時の食事から発生するエネルギー量はほとんど変わらないのですが、夜型の人が深夜1時にとった夜食は、朝型の人が朝7時にとった朝食と比べてエネルギーの発生量が4分の1しかないことがわかりました。
つまり、夜食から得たエネルギーのうちの4分の3は、体内で熱にならずに脂肪になってしまったのです。同じ内容の食事を摂っても、朝食で摂ると元気になりますが、夜食で摂ると肥満につながるというわけです。
同じものを食べても食べる時間を変えるだけで、これだけ大きな違いが生じてしまうのです。
時間栄養学
朝食から夕食までが12時間で収まっていれば、 体は持って生まれたリズムで動いていると考えられます。
生体リズムが乱れて代謝がスムーズでない人の場合、12時間以内を意識して実践するだけで減量につながることもあります。
また、夜遅い時間の夜食は摂取したエネルギーが使用されず、 脂肪として蓄積されやすくなるため、夕食は就寝の2〜3時間前に軽めにとるというのがおすすめです。
朝:昼:夜の食事でエネルギーの量の理想的な配分費は、3:3:4。
夕食がどうしても21時以降になってしまうというような場合には、 17〜18時ごろに軽い食事をとることで、昼からの長い血糖低下を防ぐとともに、夜食を多く摂取してしまうことによる肥満も予防できます。
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太りにくい油
「油を摂ると太る」というイメージがありますが、「オメガ3」の油には太りにくくする作用があります。オメガ3はコレステロールを下げたり中性脂肪を下げたりなど脂肪燃焼に関係する働きがあり、さらには高血圧を予防する効果もあるそうです。
オメガ3は体内で合成できないので、意識的に適量を摂るようにすると太りにくくなるのです。
逆に摂取量が不足すると、以下のような病変を引き起こすことも知られているようです。
オメガ3について
栄養学的に必須なω-3(オメガスリー)脂肪酸は、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。
(中略)
DHAの摂取は血中の中性脂肪(トリグリセライド)量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある。アルツハイマー型痴呆やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。
オメガ3が含まれる油として代表的なものに「エゴマオイル」と「アマニオイル」があります。エゴマオイルはシソ科の荏胡麻の種を絞った油で、アマニオイルは亜麻の種を絞った油です。
積極的に食事に取り入れていきましょう。
まとめ
お米の温度を変えたりおやつを食べる時間を変えたりするだけで、こんなにも身体への影響が変わるというのは驚きです。
番組内で丁医師が指摘していたように身体には個人差がありますから、ご自分の身体と相談しながら今回紹介された知識を生活に取り入れてみて下さい。