あなたは「尿酸値」を気にしていますか?
健康診断などで“高め”と診断された人は、食事の際にいちいち気にしてしまう数値かもしれません。この数値が高くなると「風が吹くだけで痛い」と言われるほどの激痛を伴う痛風を発症することがあります。
水をたくさん飲んだり食べたいものを我慢したりしてもなかなか下がらない尿酸値ですが、どこのご家庭にもある食品をとるだけでスッと下げることができるそうです。
今回は、尿酸に関する基礎知識や尿酸値を下げる方法を紹介していた『ガッテン!』をまとめておきたいと思います。
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尿酸値とは
まずは基本から見ていきましょう。
尿酸は人間にとってどのような意味があるのでしょうか。
人間と、ホワイトタイガー、マンドリル、サラブレッドの馬、ブタ、スローロリスなどの動物の尿酸値を比較してみると…
(人間の数値は正常値のほぼ真ん中で表してあります。)ガッテン!より
これらの動物の身体の大きさはバラバラですが、人間だけが突出して尿酸値が高いことがわかります。
この数値の違いは寿命の長さ違いとして現れるそうです。
類人猿の進化に詳しい総合研究大学院大学の颯田葉子教授によれば「尿酸は非常に抗酸化力が高いので、体の中の炎症を抑えるというようなことがあって、それで寿命が長くなったと考えられている」といいます。
哺乳類は尿酸を分解して体の外に捨ててきましたが、人類の祖先はその抗酸化力を活かせるように進化したというのです。
颯田氏によると「抗酸化力を手に入れたことが、人間が進化していく上で非常に意義のある大きな出来事であったと考えられる」といい、現在の科学では尿酸が人類の進化を支えた物質のひとつであると考えられているようです。
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痛風とは
血液検査の結果の中に「尿酸値」という項目があることがあります。
正常値は「2.1〜7.0mg/dl」とされていますが、それを超えて発作が起こるようになると、激痛を感じたり、またはそれがいつくるかわからない恐怖に悩まされたりするようになります。
体内で尿酸が増えすぎると、尿酸は血液中で結晶になってしまいます。
ガッテン!より
これが関節の中で固まってしまいます。
ガッテン!より
セメントのように関節の骨にこびりついた尿酸はどんどんこびりついていき、その欠片がポロッと落ちてしまいます。
ガッテン!より
周辺の免疫細胞はこれを敵と認識して攻撃を始め、炎症が生じます。
これが痛風です。
また、高尿酸が続くと腎臓の毛細血管を痛めつけてしまうため、慢性腎臓病になって人工透析をうけるリスクが5.7倍にもなるといいます。さらに、動脈硬化を起こして心筋梗塞を引き起こし、死亡するリスクが1.8倍になるそうです。
痛風は男性に多く、30代がもっとも尿酸値が高くなる年代だそうです。
ガッテン!より
尿酸値は高齢だから高くなるというわけではないのです。
痛風になりやすい食材
痛風になりやすい食材には、たとえば以下の様なものが挙げられるそうです。
ガッテン!より
共通点は「プリン体」が多い食品です。
プリン体というと、たまご系が良くないという話を聞きますが、言われているほど多くないものもあるそうです。たとえばプリン体が多い「あんきも」には100g中400mgほどプリン体が含まれますが、タラコは約120mg、イクラや数の子は約20mgしか含まれておらず、鶏卵に至っては0だそうです。
食品に含まれるプリン体の量については、痛風学会が出している一覧表がわかりやすく参考になります。
食品中のプリン体含有量 一覧表(PDF)
(公益財団法人 痛風財団より)
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高尿酸の原因
番組では、豪華な料理を食べた後や運動をした後に尿酸値がどう変化するかを実験で見るために、23歳の男性を被験者として血液検査を行いました。
しかし、実験前にこの男性の尿酸値を測ったところ、8.2mgとすでに正常値を超えてしまっていました。これは痛風を起こす可能性がある状態です。
男性はプリン体が多く含まれる食材をよく食べるわけでもなく、お酒も飲まないそうです。
高尿酸になる原因は「食べ物から2割、細胞から8割」だそうです。
食べ物からの影響は2割たらずで、尿酸値はもともとの身体のあり方に左右されるというのです。
そこで、被験者は身体を強くするために運動を行い、尿酸値がどこまで改善するかを実験していました。尿酸値対策として水分をたっぷり補給しながら、クライミングやダンス、ウエイトトレーニングをハードに行った結果、尿酸値は逆に10.9に上昇してしまっていました。
どうして尿酸値が上がってしまったのでしょうか。
たとえば動物の肉の細胞ひとつひとつのなかにはプリン体が含まれています。プリン体は細胞のDNAのいち部分、いわば部品です。そのお肉を私たちが食べれば、当然プリン体も体内に入ってきます。肝臓はプリン体を材料に尿酸を作り出すので、血液中に一定量の尿酸が常にあることになります。
しかし、このようにしてつくられる尿酸は、体内の尿酸の2割ほどに過ぎません。先程記した「食べ物から2割」の部分です。
残りの8割は、私たちの体内の細胞が新陳代謝するたびに放出されるプリン体を肝臓が尿酸に作り変えたものです。
これに加えて、激しい運動をすると筋肉の一部が壊れます。筋肉は細胞で出来ていますから、そこからもプリン体が出てきてしまいます。運動後の尿酸値の上昇はこのようなシステムによって起こるのです。
上昇した尿酸値は運動後すぐに元のレベルまで下がるので心配ないそうですが、今回の被験者のように普通に生活しているだけで尿酸値が高い人がいるのはどうしてなのでしょうか?
その原因を見ていきましょう。
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高尿酸の原因
番組では被験者を再検査していました。高尿酸と診断された人のための精密検査です。
最初に肝臓と胆のう、すい臓、腎臓、ひ臓、膀胱を超音波検査で調べていました。
次に行われた管理栄養士による食生活のチェックでは、朝食に菓子パンを食べる習慣がよくないこととして指摘されていました。甘いものも、プリン体を生み出すことがあるそうです。
次にガラス容器5本分の採血を行い、最後に1回分の尿を全部とる特別な尿検査を行い、精密検査が終わりました。
2日後に出た結果によると、この被験者の尿酸値が高くなっている原因は、尿酸の排泄がよくないことにありました。
本来は腎臓で濾過されて尿として出していかなければいけないのですが、この男性は正常の半分しか尿酸を排出できていなかったそうです。
尿酸値に問題がある男性数人が参加した実験で、食後の尿酸の尿への排泄量を調べて見ると…
ガッテン!より
一番上の正常な方はしっかりと排泄できていますが、他の方は十分に排泄できていないことがわかります。
尿酸値が高い人の9割は排泄に問題があるそうです。
原因の1つは肥満です。
肥満の人は、血糖値をコントロールするインシュリンという、すい臓から出るホルモンの効きがわるくなるそうです。異常を感じたすい臓はインシュリンをどんどん分泌するのでインシュリンがどんどん体内にたまってしまい、尿酸の排泄を邪魔してしまうというのです。
このため、痩せれば尿酸の排泄が良くなることもありますが、今回の被験者の男性はスリムな体型でした。
こういう人は、尿酸を排泄しにくい遺伝子を持っていると考えられるそうです。
いま注目されているのはABCG2という尿酸の排泄に関わる遺伝子で、成人男性の半数がこの遺伝子の変異を持っていると言われているそうです。強い機能低下を起こしている場合には痛風の発症リスクが22倍にもなるといいます。
尿酸の排泄をアップさせる食品
大阪市立大学医学部の蔵城雅文医師によると、尿酸の排泄を促進するには牛乳がいいそうです。
実験では尿酸の排泄量が平均で37%もアップしました。
ガッテン!より
牛乳に含まれるカゼインが胃腸で分解されてアラニンという物質になります。これが腎臓の“扉”を開けてくれるので、尿酸の排出が助けられると考えられているそうです。
アメリカで行われた47150人を12年間追跡した調査によると、低脂肪乳・無脂肪乳を1日コップ1杯飲んだ人の痛風発症率は43%も低かったそうです。
普通の牛乳よりも低脂肪のほうが高い効果をもたらしてくれるそうで、お腹がゴロゴロしないタイプの牛乳やヨーグルトなどの乳製品でもOKだそうです。(豆乳には尿酸値を下げる効果はあまり無いそうです。)
今回被験者となった男性が牛乳や低脂肪のヨーグルト等を1週間摂り続けた結果、尿酸値が8.2から6.6に下がっていました。
これはかなり下がった例だそうで、食生活全体まで気をつけたことが良かったようです。
尿酸値を下げるコツ
まずは肥満解消です。余ったインスリンが尿酸の排泄を邪魔しないようにします。
次にお酒です。ビールに限らず、アルコールはそれ自体が尿酸を作り出してしまうそうですから飲み過ぎには注意が必要です。
甘いものも尿酸をたくさん作ってしまうので、スイーツの食べ過ぎにも注意しましょう。
逆に、野菜は尿酸の排泄を助けるので、積極的に摂るようにすべきだそうです。
これにコップ1杯の低脂肪牛乳やヨーグルトを加えれば完璧です。牛乳はホットでも料理に混ぜて使ってもOKだそうです。
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痛風の治療
痛風専門医の大山博司氏によると「痛風を起こしているときは痛みをとる治療をする。痛みが落ち着いたらそこで薬を使うかどうかとなる」そうで、「尿酸を排出しにくい人には尿酸の排泄を促す薬を処方する」といいます。
しかし、痛風は合併症として尿路結石を伴うことが多い(健康な人に比べてリスクが5〜10倍になる)ため、そうなると排泄を促す薬は使いにくくなります。同じように腎臓が悪い人にも排泄を促す薬は適さないため、そういう人には尿酸の生産を抑える薬が処方されるそうです。
痛風の方は水を飲むことも大事です。
脱水状態になっていると尿酸値は上がりますし、尿路結石のリスクも上がりますから、水分補給を心がけましょう。
ただし、誤解も多いようですが、水を飲んでいれば尿酸値がどんどん下がっていくというわけではないそうです。
まとめ
それなりに健康的な生活を送っていても密かに痛風に近づいている可能性があるというのは、とても怖いことだと思います。
年齢や自覚症状の有無を問わず、乳製品や野菜を取り入れた食生活を心がけましょう。