ひざの痛み・変形性膝関節症の原因と治療法~チョイス@病気になったときより

ひざを痛めてしまうと、日常生活の様々な場面で支障が出てきます。
にも関わらず、「歳のせいだから」と思って治療を半ば諦めている方も多いと思います。
そんな方のために今回は、ひざ痛を解消して運動を再開したり、正座をしたりするための方法を紹介していた『チョイス』をまとめておきたいと思います。

 

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あなたも「変形性ひざ関節症」かも!?

驚きの数字があります。
痛みを伴っていない人も加えると、50歳以上の日本人の2人に1人が「変形性ひざ関節症」に罹っているというのです。

高知県のSさん(75歳男性)は、5年ほど前から左ひざに違和感を感じるようになりました。趣味はゴルフなどのスポーツという活動的なSさんは、登山をしているときに痛みを感じました。「下山する時に痛かった。左足で踏ん張った時に痛みを感じた」といいますが、筋肉痛程度に考えていたので病院へはいかず、その後もウォーキングなどの運動を継続していたそうです。
しかし、2年ほど前からひざが腫れるようになってきたため整形外科を受診し、2週間に1回は関節液を抜くために通院することになってしまいました。頻度は次第に1週間に1回になり、やがて日常生活でも痛みが生じるようになってしまったため、Sさんは高知大学医学部附属病院で精密検査を受けました。
診断した池内昌彦教授は「軟骨が部分的に消失している状態でした」と話していました。

下図は正常な人のひざとSさんのひざのX線写真を見比べたものです。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

軟骨はX線写真では写らないので、骨と骨の間にある隙間を見て軟骨の状態を推測するそうです。Sさんのひざのほうが、隙間が狭いことがわかります。これは軟骨が消失していることを意味します。
なめらかな軟骨は足を動かす際に上の骨と下の骨が直接当たらないようにするクッションのような役割を果たしています。しかし加齢などですり減っていくと、体重を支えるクッションがなくなることになり、痛みを感じるようになります。これを「変形性ひざ関節症」というそうです。
軟骨がすり減ると「滑膜」というひざにある膜が、すり減った軟骨を除去するために関節液を過剰に分泌することがあるそうで、これがいわゆる「ひざに水がたまる」状態だそうです。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

Sさんの状態がまさにこれでした。

池内氏によると、変形性ひざ関節症の患者数は約2400万人で、そのうち男性が約800万人、女性が約1600万人となっているそうです。50歳を超すと2人に1人が罹患しているとも言われています。

 

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変形性ひざ関節症の原因

変形性ひざ関節症の原因には、以下のようなものがあります。

・ 加齢
・ 筋力の低下
・ O脚(X脚)
・ 肥満

軟骨は4ミリほどの厚さをしています。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

軟骨は白い色をしているそうですが、模型では水色で表現してあります(この軟骨と軟骨の間に半月板があります)。
歳を重ねるとその分ひざを動かす回数も増えるので軟骨がすり減っていき、さらに軟骨の質自体も低下していくそうです。軟骨はすり減ってしまうと自然には再生しないので、加齢が大きな原因になるのです。

また、体を動かすたびにひざに衝撃が加わっていますが、筋肉はその衝撃を吸収してくれています。筋力が弱まるとそのぶん衝撃が軟骨に直接加わってしまうので、筋力の低下も変形性ひざ関節症の原因となります。
O脚については、重心がひざの内側になる一方、外側は負荷がかからないので、軟骨の内側だけがすり減りやすくなってしまいます。X脚になる人は珍しいですが、同じ理由で軟骨がすり減りやすくなってしまいます。
肥満については、体重が重いのでひざへの負荷が余計にかかることになります。実は歩くという行為だけでも体重負荷の2〜3倍の負荷がひざにかかっているそうです。階段の昇り降りでは3〜4倍、ジャンプをすると7倍の負荷がかかっていますから、体重が大きいほどひざへの負担も大きくなります。さらに、脂肪細胞(特に内臓脂肪)から出る「アディポカイン」という物質が全身に炎症を起こすことが近年の研究からわかってきました。この物質が関節で炎症を起こすと軟骨が壊れやすい状態になるので、その意味でも肥満はひざに悪いのです。

・関節水腫
関節水腫とは、軟骨がすり減っているときや、激しい運動をしたときなどに起こる、関節に水がたまった状態のことです。
ひざに水がたまったら、水を抜いてからヒアルロン酸や炎症を抑えるステロイドなどの薬液を注入して治療します。他にも飲み薬として消炎鎮痛薬(炎症を抑える薬)や解熱鎮痛薬(頭に作用して痛みを感じなくさせる薬)を用いたり、貼り薬タイプの消炎鎮痛薬が用いられたりするそうです。

 

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変形性ひざ関節症の治療

Sさんは骨切り(こつきり)術という手術を受けました。
SさんのX線画像です。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

O脚になってしまっている(赤線)のを矯正(黄線)し、骨と骨の間の隙間を開けることを目的とした手術です。
まず脛骨(すねの骨)の一部を切って、くさび状に広げます。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

広げた部分に人工骨を入れて固定します。金属製のプレートとスクリューでしっかりと固定して終了です。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

画像ではなんとなくしかわかりませんが、しっかりとO脚が矯正されました。
Sさんは手術直後から痛みがなくなり、半年後にはゴルフを再開できるようになったそうです。今では登山を再開するためのトレーニングをしているそうです。

骨切り術は50〜70歳代の人、またはO脚(またはX脚)の人を対象に行われます。手術時間は1時間半程度で、入院は1ヶ月程度で済むそうです。
下図がこの手術で用いるプレートです。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

人によっては痛みが完全になくなるわけではないそうですが、軽くはなるそうです。
術後の生活に制限はありません。退院後もリハビリやトレーニングを継続すれば正座や激しい運動もできるようになります。
関節症を放置して変形が大きくなってからこの手術をしても良くはならないそうですから、早い段階で病院を受診しましょう。

・人工関節置換術
人工の関節に置き換える手術もあります。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

傷んだ関節の表面を平坦に切ってから、人工関節を上下に設置します。人工の軟骨は、20年くらいはもつそうです。
対象は、軟骨が消失している人や関節全体の変形が強い人で、痛みが強くて日常生活もままならないという60〜65歳以上の高齢の人になります。入院は3週間ほどで、リハビリが必要になりますが、2〜3ヶ月で長い道を歩いたり旅行を楽しんだりすることができるそうです。
ただし、正座など和式の生活を出来るようになるわけではないそうです。また、術後は感染症に気をつけなければいけません。これは術後何年経っても注意し続ける必要があるそうです。たとえば、巻き爪で爪に膿ができてしまった場合、菌が血液にのって人工関節が入っているひざへ行き、そこで繁殖して化膿することもあるそうです。人工物を入れた部分には繁殖が起こりやすいそうなので、今まで以上に注意する必要があります。

 

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他にもある、人工関節の手術

変形性ひざ関節症を患ったOさん(81歳女性)は、「単顆(たんか)型人工関節置換術」という手術を受けてから正座もできるようになりました。
池内氏によると「Oさんのようにひざの内側だけ悪い人が全部人工関節に取り替えてしまうと健常な部分も取り除いてしまうことになる」そうで、これを避けて、内側だけ局部的に人工関節に取り替える手術が、この単顆型人工関節置換術です。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

一部だけ人工関節が入っているのがわかります。
耐久性は全置換術の方が優れているそうですが、単顆型人工関節の耐久性が近年向上したそうで、採用されることが増えたそうです。(ただし、やはり耐久性の問題から若い人には積極的には勧められないそうです。)
この手術を受けられるのは、全置換術に比べて軽症(もともと和式の生活が出来る程度)の人に限られるそうです。もろもろの条件が揃わないと受けることができない手術なので、主治医としっかりと相談する必要がある、とのことでした。

ひざの検査方法

池内氏によると、変形性ひざ関節症になっていても「歳のせいだ」と考えて放っておく人が多いそうです。早めに整形外科を受診して、様々な治療の選択肢の中から適切な治療を受けるのが大事です。
検査法には以下のようなものがあります。

・ X線…骨の隙間を見て軟骨がどのくらい残っているかを推測する検査。
・ MRI…軟骨を直接見ることができる検査。
・ 関節液の検査…関節リウマチなど別の病気が原因で関節液がたまることもあるので、原因をしっかりと調べるための検査。

さらに、軟骨がすり減りやすいかどうかを早期に調べることができる最新のMRI検査もあるそうです。
その検査では、片ひざに約30分かけて検査を行います。それからMRIマッピングという、軟骨のプロテオグリカンという物質を映し出すことができるソフトを用いて軟骨を詳しく調べます。
プロテオグリカンは軟骨の機能に重要な物質で、軟骨の中に水を引きつける作用があります。年齢や変性で軟骨が減ってしまうとこの物質も減ってしまうので、軟骨に水をためておけなくなり、機能が落ちてしまいます。
下図は正常な軟骨の画像です。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

青色はプロテオグリカンの量が正常であることを示します。
一方、プロテオグリカンが減っていると、以下のように写ります。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

赤い部分はプロテオグリカンが減っていることを示しています。
この検査によって、ひざに痛みを感じる前から軟骨がすり減りやすくなっていることを知ることができるのです。
この検査は保険適用されているそうですが、どこの病院でも受けられるわけではないそうですから、事前に調べてから病院へ行くようにしましょう。

変形性ひざ関節症とわかったら

変形性ひざ関節症になってしまったら、肥満や筋力低下など病気の原因となることをなくしていくことが重要です。
池内氏によると「痛みがあっても、初期でも重症でも、改善には運動が必要」だそうです。その目的で運動をする際は、なるべくひざに負担をかけずに太ももの筋肉を鍛えるような運動をするのがポイントとなります。
具体的にはウォーキングや水中でのウォーキング、自転車こぎなどが最適です。(自転車こぎは、ジムにあるような固定式のものは負荷をかけられるのでより良いそうです。)
どうしても痛い場合は痛み止めの薬や装具を使って痛みを和らげて、そのうえで運動をするようにしましょう。
運動で良くなってしまう人も結構多いそうですから、運動を数ヶ月間実行して、それでもダメなら手術を検討するといいそうです。

痛みを和らげる運動

・脚上げ運動
仰向けの状態で片ひざを立ててからもう片方の足を真っすぐ伸ばし、つま先を立てた状態で脚上げを行います。
10〜20センチほど上げて5秒間静止したらゆっくりと下ろします。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋が鍛えられる運動です。

・横上げ運動
床側の足を曲げて、もう片方の足はまっすぐ伸ばすようにします。
脚上げ運動と同じように、10〜20センチほど上げて5秒間静止したらゆっくりと下ろします。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

太ももの外側の筋肉である外転筋を鍛えられます。
1日片足につき10回ずつ、できる人は20回ずつやると効果的だそうです。

・ボールはさみ運動
ボールを太ももの間でギュッと挟んで5秒間静止し、力を抜く運動です。

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チョイス@病気になったとき『解消!ひざの痛み』より

太ももの内側の内転筋を鍛えられます。1日10回行いましょう。

 

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まとめ

今回の特集を見て、早い段階で検査を受けてひざの状態をよく知ることが重要であることがよくわかりました。
どういう状態でも運動を行う必要があるということもポイントだったと思います。「大事をとって運動は控えよう」と考えてしまいがちですが、今回紹介されたような適切な方法で運動を習慣化するようにしましょう。


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