「尿路結石」は、尿の通り道にできた石が激痛を引き起こす病気です。
結石の多くはたった数ミリという大きさですが、その石が引き起こす痛みは「まるで陣痛のよう」と形容されることもあります。
最悪の場合には腎不全を引き起こす可能性もあるこの病気は毎年約15万人が新たに発症しており、その患者数は急増しているそうです。現在は男性の7人に1人が、女性の15人に1人が一生に一度は発症するという数になっており、40年間でおよそ3倍に増えていることから“隠れた国民病”とも呼ばれているそうです。
今回は、尿路結石について詳しく紹介していた『チョイス@病気になったとき』を参考に、尿路結石の概要や予防法についてまとめていきたいと思います。
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実際に尿路結石になってしまった男性のケース
設計事務所を営むFさん(55歳)は、20代中頃に体の異変が現れました。
夜寝ていたときに下腹部から背中にかけて激痛が走ったそうです。本人によれば「すごく痛くて地獄のような苦しみだった。背中が圧迫されるように痛くて、どーんとした嫌な痛み」だったそうですが、深夜だったこともあって朝まで我慢したそうです。
翌朝、病院でX線検査を受けると、尿管に石が見つかりました。
「尿路」というのは、腎臓から尿管、ぼうこう、尿道までを含めた“尿の通り道”のことをいいます。
チョイス@病気になったときより
腎臓で尿の成分が結晶化してできた結石が尿路のどこかにとどまっている状態を「尿路結石」といいます。(結石が腎臓にあれば「腎臓結石」、尿管にあれば「尿管結石」、ぼうこうにあれば「ぼうこう結石」、尿道にあれば「尿道結石」と、存在する場所で呼び名が変わることもあります。)
Fさんの場合は結石が尿管をつまらせていました。そのため尿が流れ出にくくなり、腎臓が腫れ上がって、痛みが出ていたのです。
この時は手術等を受けることなく、自然に石が出てくるのを待つ治療方法がとられました。痛みを座薬でおさえながら、石を出やすくするためにひたすら水を飲んで結石が出てくるのを待ちました。
Fさんはこの状態を2週間続けた結果、尿とともに結石を出すことが出来たそうです。
石は米粒くらい(2ミリほど)の大きさだったそうで、出す瞬間は「何か出た」という感覚程度だったそうです。
チョイス@病気になったときより
Fさんは「こんな小さな石があんなに痛いんだなとびっくりした」と話していました。
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尿路結石について
名古屋市立大学学長で泌尿器科医の郡健二郎氏によると、「結石は、日本人の結石患者の95%が腎臓でできる。腎臓の中で結石の核ができて、つららが大きくなって落ちるようにポロッと落ちるので、小さな石だと気づかない間に尿から出ている可能性もある」といいます。結石は一度に2,3個出ることもあるそうです。
激痛が出るのは、尿がつまって腎臓が腫れると、尿が洪水のように体内に漏れ出てしまうためです。腫れているときの腎臓内の尿は酸性が強いため、中性である体は痛みを感じるのです。
他にも、粘膜で結石が擦れて痛みが出る場合もあります。さらに、不安など精神的な要因で痛みが増幅してしまう人もいるそうです。
吐き気や冷や汗、血尿などの症状も見られ、膀胱に結石があるケースでは頻尿や残尿感などが引き起こされることもあります。
※尿路結石の痛みについて尿路結石によって起こる痛みを「疝痛発作(せんつうほっさ)」といいます。
間欠性(痛みが出たり治まったりを繰り返すこと)で、人によっては「出産の時よりも痛かった」と表現するほどの激痛になります。
金沢医科大学泌尿器科の鈴木孝治氏によると、突然の差し込むような激痛に冷汗が出てきて、顔面蒼白となってうずくまるような状態になってしまうそうです。体の動きによって痛みは増強し、安静時には軽減することもありますが、発作は数分間から2〜3時間も持続し、悪心や嘔吐、腹部膨満など消化器症状を訴える場合もあるそうです。このような痛みが出るのは、腎臓内の圧力が高まると体内で「プロスタグランジン」という物質(血管拡張や血圧上昇・降下、子宮や気管支の筋収縮、血小板の凝集あるいはその抑制などの作用がある、ホルモンに似た生理活性物質)の合成と放出が促進され、腎臓の血流量や尿量が増えることでさらに腎臓の内圧が上がることで引き起こされるそうですから、待っていても治るとは限らないようです。病院で鎮痛剤や鎮痙剤を用いた治療を受ける必要があります。一方で、結石があってもあまり痛みが出ないこともあります。
そのような結石は「サイレントストーン」と呼ばれ、知らない間に大きな病気が進行してしまうこともあります。(あまり痛みがない結石については後述します。)
尿路結石は、男女でなりやすい世代が変わります。
男性は30〜60代の働き盛りに、女性は閉経後の50〜70代に多くなります。閉経前は女性ホルモンが骨を守ってくれているために結石の成分であるカルシウムが出てこないのですが、閉経後は骨からカルシウムが溶けだしやすくなり、結石ができやすくなるのです。
石が出ると…
Fさんと尿路結石は、その後も30年にわたる長い付き合いになりました。1〜2年ごとに再発しているそうです。
尿路結石は再発率がとても高い病気で、5年以内の再発率が50〜60%にもなります。
Fさんは結石ができるたびに自然排出し続けてきましたが、今年の春に定期検診を受けた際に違うタイプの結石が見つかりました。
チョイス@病気になったときより
7ミリという大きな結石が腎臓の中に見つかったのです。
尿管は約5ミリなので、腎臓でできたそれ以上の大きさの結石は、自然排出することが難しくなります。
そこで、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)という方法で結石を砕くことになりました。
チョイス@病気になったときより
特殊な器械から出る衝撃波で、体内の結石だけを砕いていきます。砕かれた結石はバラバラに細かくなるので、尿管を通って自然排出されるようになります。
この治療について、Fさんによると「施術中には痛みというほど大げさなものはない。静電気がパチっと来る感じ」程度だったそうです。治療時間は約1時間で、その間に3000発の衝撃波が放たれます。翌朝には退院することができ、あとは日常生活の中ですべての石のかけらが排出されるのを待つだけです。
医師からは「水分をたくさん取るように言われた」そうで、全部排出されるのに2週間ほどかかったそうです。出るときにはかなりの痛みがあったと話していました。
その他の治療法
大きくなってしまった尿路結石には、他にも以下のような治療法があります。
チョイス@病気になったときより
ESWLは前述の通り、施術時に少し痛みがある程度で、入院もほとんど要りません。
しかし骨盤周辺に結石がある場合はこの方法を採るのが難しくなります。
TUL(経尿道的結石破砕術)は、ファイバーを挿入して、そのファイバーの先端から出るレーザーで石を砕く方法です。(破砕したあと、ファイバーの先についた取っ手のようなもので、とれるかけらはとってしまうそうですが、残ったものは自然に出てくるのを待ちます。)
結石が2センチほどのサイズまでなら対処できる確実な方法ですが、麻酔をかける必要があるので入院を要します。
もう少し大きい結石にはPNL(経皮的結石破砕術)という方法が採られます。
腎臓に穴をあけて石を割る方法です。
腎臓にできる巨大な結石は「サンゴ状結石」と呼ばれます。
チョイス@病気になったときより
これだけ大きくても痛みなどはないため、検査をしてたまたま見つかるのだそうです。
予算は以下のようになっています。
TUL…15〜18万円程度
PNL…25〜35万円程度
高額療養費制度が適用されて負担が軽くなる場合もあります。
痛みがない危険な尿路結石
耳鼻科医のNさん(46歳男性)は、20代の頃から尿路結石の再発と自然排出を繰り返していましたが、途中で治療をやめてしまったそうです。
「結石は詰まっているだけで落ちれば問題もない病気なので、我慢すれば治るかなと」考えてのことでしたが、5年前の正月にくつろいでいる際に吐き気を伴う腹痛に襲われました。そのときはしばらく我慢をすると治まったので、数日後にはそのことすらすっかり忘れていたそうです。
しかし、激痛から3ヶ月後、予想外の異変が起きました。
健康診断の血液検査で、腎機能を表す指標が80%から45%に急落しており、医師からは「たぶん石が詰まっているのでは」と指摘されたそうです。
調べてみると右の腎臓機能が正常の半分以下にまで落ちており、CT検査を受けると正常ならはっきりとは映らないはずの腎盂(じんう)という部分が、大きくはっきりと映っていました。
チョイス@病気になったときより
これは、腎盂が腫れる「水腎症」という病気であることを示しています。腎臓の一部が圧迫されて腎機能が低下していたのですが、その原因が尿管を塞ぐ結石でした。
このまま放置すると腎不全になる可能性もあるため、結石を衝撃波で砕きました。
その後、Nさんの腎機能は少しずつ回復しているそうです。Nさんは「結石は痛いだけ、そして自然に出るだけ、という認識がいけなかった。やはり定期的に医者に診てもらうというのは意味のあることだと思う」と話していました。
なぜ、一旦痛みがなくなったかということについて、郡氏によると「尿が漏れると痛みが出るので、腎臓は尿を作らないでおこうという防御反応が起こるため」だそうです。
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結石の予防法
対策としては、食生活を改善することが基本になります。
水分をたくさんとる
水分をしっかりと摂ると、尿が薄まって結石ができにくくなりますし、出来てしまった結石を排出する効果も期待できます。
目安は1日2リットル以上です。
Fさんは職場に水筒を持参して、仕事の合間にも意識して水を飲むようにしました。「現場にも持っていって飲むようにしている」と話していました。
夏場は脱水で尿が濃くなるので結石ができやすくなり、痛みなどの症状も出やすいという特徴がありますので、特に注意しましょう。
シュウ酸に注意
シュウ酸は、ほうれん草やキャベツ、レタスなどの葉物野菜、大根、ナス、さつまいも、ブロッコリー、たけのこ、バナナ、チョコレート、ナッツ類、お茶、コーヒー、ココアなど、苦味のあるものに含まれている物質です。
植物が虫に食われないように身を守るために保持している物質だそうですが、これが体内でカルシウムと結合するとシュウ酸カルシウムとなって結石になるのです。(郡氏によると、日本人の場合、8割強がシュウ酸カルシウムをもとにして結石が出来るそうです。)
しかし、シュウ酸を含むものを食べる時にはカルシウムを一緒に摂るようにすれば、その吸収を抑えることができます。いわば口や腸の中で結石を作ってしまうことで、それを便として排出することができるのです。
たとえば、食事の際に牛乳も一緒に飲むようにしたり、コーヒーにはミルクを入れたりなどをすれば予防になります。
さらに、シュウ酸は水に溶けやすい性質もあるので、茹でることでも減らせます。ほうれん草は3分茹でるだけで約半分になるそうです。
食後すぐに眠らない
結石は夜に作られます。
食後すぐに寝ると濃い尿になってしまうので、結石ができやすくなってしまいます。
食べたものが尿に出てくるまで3〜4時間ほどかかるので、食後は4時間くらいあけてから寝るようにしましょう。
尿路結石になりやすい人
以下のような特徴がある人は、尿路結石になりやすい状態にあると考えられます。
肥満
欧米化の食生活、とりわけコレステロールが結石の生成を誘発します。
シュウ酸とカルシウムを一緒に摂ってもそこにコレステロールがあると、コレステロールとカルシウムとくっついてしまうため、シュウ酸は便として出ずに体内で結石のもとになってしまいます。
さらに、コレステロールを食べるとオステオポンチンという物質ができます。水の中にシュウ酸とカルシウムを入れると溶けるのですが、そこにオステオポンチンがあるとセメントのように固めてしまうという作用があります。
動脈硬化、高血圧、糖尿病
これらの症状があると結石になりやすく、また、結石になるとこれらの病気になりやすくなります。
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まとめ
郡氏は「結石の痛みは生活習慣病を予防する警報。それをきっかけに食生活を変える必要がある」と指摘していました。痛みが出ているうちに生活習慣の改善をする必要があります。
そして、定期的に病院で診てもらうことや検査を受けることも心がけるようにしましょう。