いま、日本では胆のうがん・胆管がんの患者数が増加しています。
その死亡者数は高齢者が増えていることも影響して、30年で倍増しています。
ガッテン!より
これらのがんと深い関わりを持っているのが、今回特集していた「胆石」です。
最新の研究では胆石が命に関わることもわかってきていますから、知識を持っておくことが重要です。
今回は、胆石について詳しく紹介していた『ガッテン!』を中心に、情報をまとめていきたいと思います。
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胆石について
“ぜいたくな食生活が影響してできる”というイメージもある胆石ですが、人類は古の時代から胆石を抱えていました。
近年、アルプス山脈からミイラ化した5300年前の古代人の遺体が発見されたのですが、その遺体を解剖してみると、胆のうの中から3つの胆石が見つかりました。このときの解剖では胃の中からアイベックスという動物の肉が見つかっているのですが、専門家たちは「肉を食すような食習慣が胆石をつくる一因になる」と考えているそうです。
胆のうは袋のような形をしている5〜7センチほどの臓器で、その中に脂ものの食材を消化する際に必要になる「胆汁(たんじゅう)」という消化液がためられています。
脂を含んだ肉などが十二指腸に運ばれてきた際に胆のうが収縮し、胆汁を十二指腸に放出しているのですが、茶褐色でどろどろしているため固まりやすい性質があります。
これが固まると「胆石」なのです。
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胆石があっても痛みを感じない?
インドのジャイプールという大都市にある病院に勤めるカンカリア医師は、長年かけて胆石を集めています。治療や研究の目的で約2万人の患者から集めており、ギネス記録も保持しているそうです。
番組が取材に訪れた日の手術でも、胆石を摘出していました。
ガッテン!より
この患者の胆のうには18個の胆石が入っていたそうです。
そんなカンカリア氏は「胆石を持っていても痛くない人が多い」と話していました。
直径2センチ以上の胆石があった女性患者も、約17年間、自分が胆石を持っていることに気づいていなかったそうです。
カンカリア氏が担当した中でもっとも多くの胆石を抱えていた人は体内に11,816個の胆石があったそうですが、その患者もたまに腹痛がある程度だったそうです。
胆石が胆のうの中にあるうちは全く痛みが出ません。さらに、胆管を通って十二指腸に運ばれ腸の方へ出ていっても痛みは出ないので、胆石を抱える人の8割近くは痛みを感じないのです。
その一方で、胆石が原因で痛みが出る人もいます。
痛みが出るケースでは、大きめの胆石が胆のうの口を塞いでしまっています。口が塞がれると胆汁が十二指腸に出ていかなくなります。この際、異常を察知した体が胆のうから胆汁を出そうと一生懸命胆のうを収縮させるため、激痛が生じるのです。
胆石の本当の怖さ
しかし、千葉大学医学部附属病院の露口利夫氏は、「胆石の本当の怖さは痛みがあるかどうかではなく、別のところにある」と指摘していました。
それがわかる実例として、番組ではMさん(77歳女性)の例が紹介されていました。
Mさんは9年前のある朝、起床した際に右側の胸にチクチクとした痛みを突然感じました。その痛みは徐々に増していき、1ヶ月後には耐えきれないほどの痛みになったそうで、病院に行って精密検査を受けました。
その結果、胆のうに40個もの胆石が詰まっていることがわかりました。
直ちに行った手術は成功したのですが、術後に医師から「胆のうがん」があることを告げられたそうです。
胆のうやその周囲のガンは、見つかりにくいという特徴があります。
そのため、他の部位のガンよりも5年生存率が低いという統計が出ています。
ガッテン!より
Mさんの場合は幸い、広い範囲への転移もなかったため完治したのですが、執刀医は「発見が半年から1年遅れていれば手術できない状態になっていたのではないか。たまたま症状が出てきたということで、運が良かった」と話していました。
この実例について、露口氏は「胆石がある人の様子を毎年診てみても、それほどガンが出てくるわけではないので、過度に恐れることはない」と指摘した上で、「胆石と胆のうがんには何らかの因果関係があることは知られている」と解説していました。
胆石は、胆のうの中でいつも同じ場所にあるわけではありません。体の向きが変われば石の位置もずれるので、胆石の存在が長期化するほど、胆のうの中の粘膜に炎症が起きる可能性は高くなります。そうした慢性的な炎症から胆のう周辺にガンができると考えられているそうです。
長年胆石を持っている人の胆のうは、壁が厚くなってしまいます。
ガッテン!より
赤い部分が壁です。
露口氏は「症状がなくても、壁が厚くなってきたら精密検査をして手術も含めて検討するべき」と話していました。
アメリカでとられたデータによれば、胆石が3センチ以上になると胆のうがんのリスクが高くなり、胆石が大きいほど悪い影響が出やすいことがわかっているそうです。
胆石の予防
胆石ができやすい人には、以下のような特徴があります。
・ 食事を抜く
・ 運動不足
・ 家族が胆石もち
食べすぎは内臓脂肪型肥満につながり、胆汁中のコレステロールも非常に高くなるため、石ができやすくなるそうです。
胆石がある人の胆汁を試験管に入れて体温に近い37℃の環境に置く実験を行うと、日を追うごとに胆汁の中のコレステロールが大きく成長していきます。
胆石は、コレステロールの結晶が元になってできるのです。
運動不足を続けていてもコレステロールがたまっていくため、胆石につながります。露口氏によると、「胆石と一緒に脂肪肝が見つかることが非常に多い」といいます。
ダイエットなどの目的で「食事を抜く」ことが胆石につながるのは、食事が腸に入ってこない間は胆のうが使われず、中で胆汁が濃縮していってしまい、結晶ができやすくなってしまうためです。定期的に胆汁を出していくことが健全なので、食事を抜く急激なダイエットはいけません。
水分を摂らないことも、胆汁が濃くなるのでいけません。(すでに胆石ができている人も、水分をしっかりとれば痛みの発作が起こりにくくなるそうです。)
女性に関しては、妊娠の際のホルモンの影響で胆石ができる場合もあるそうで、早い人では40代くらいでできてしまう人もいるそうです。
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胆石の検査
胆石の検査は、腹部超音波検査(エコー検査)で行います。
ガッテン!より
このような画像を撮影して医師が目視で診る検査なので、痛みはまったくありません。
検査を受けるべき年齢について、露口氏は「女性は40代くらいから。男性は50歳位からで十分では」と話していました。
市区町村の健康診断や人間ドックなどでは、肝臓やすい臓、腎臓と併せてチェックされることが多いようですが、単独で検査を行う場合は5000円程度で受けることができます。なんらかの症状がある場合などは保険適用されるのでその1〜3割負担で済むことになります。
ちなみに、X線検査では胆石を見つけることはできません。
基本的に心臓や肺など胸の部分しか診ていないこともありますが、X線はコレステロールを通り抜ける性質があるため、胆石はうまく撮影できません。
胆のう周辺の異常を示す兆候
前述のように胆のう周辺の疾患は症状が出にくいので、自分で気づくことはなかなかできません
仮に痛みが出ても、その位置から「胃が痛いのかな?」と考えて、長い間放置してしまう方も多いようです。
Hさん(67歳男性)は昨年、胆管がんであることがわかりました。
ガッテン!より
HさんのMRI画像です。正常な部分は白く写りますが、胆管の先で途切れています。ここにがんがあるため、管が詰まっています。
Hさんには痛みなどの自覚症状はありませんでしたが、トイレで「便が真っ白になっていた」ことに気づいて病院へ行きました。ワイシャツの色のように真っ白だったそうです。
胆汁は便の色のもとになっていますが、胆管にがんがあって胆汁がせき止められると便に色がつかず、白っぽい便が出るのです。
逆に、せき止められた胆汁の影響で顔や目が黄色っぽくなる「黄疸」が出ることもあります。白目の外側から黄色くなっていたら要注意です。
胆汁が引き起こす可能性があること
脂質を分解するのに必要不可欠な胆汁ですが、ある条件下では体に不具合を起こす可能性もあります。
下痢を誘発する
胆汁は小腸の末端部で吸収され、胆汁として再利用されます。
しかし、小腸が感染症や炎症を繰り返したことで機能が落ちていたり、盲腸の手術などで過去に小腸を切っていたりなどする場合は、吸収されずに大腸まで余分に流れていってしまう場合があります。
すると下剤と同様の作用をもたらし、下痢を引き起こしてしまいます。
食後に必ずお腹を下すような方は、この可能性を疑ってみてください。
がんを誘発する
胆汁の成分である胆汁酸は、肝臓で分泌されています。それが胆のうに溜められ、濃縮されてから胆汁として放出されています。
それが腸管の中で脳内細菌によって「二次胆汁酸」に変換されるのですが、二次胆汁酸には「デオキシコール酸」や「リトコール酸」というものがあり、これらにはがんを誘発する性質があります。
保持している腸内細菌の種類や割合には個人差があるのですが、これらの酸に変換する腸内細菌を多く保持している人は、発がんの可能性が相対的に高まることになります。
ある調査で健康成人の糞便中の胆汁酸の組成を調べたところ、約半数の人の便中でこれらの酸の占める割合が80%以上になっていることが確認されたそうです。つまり、高脂肪食を摂取すると発がんリスクが高くなる人が半数以上であるということです。
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まとめ
露口氏は「胆石を持っている人も医師にしっかり診てもらえれば問題ない」と話していました。
毎日コンスタントに3食の食事をとり、検査を定期的に受けるなどして、大きな病気を未然に防ぐようにしましょう。